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十五年前の文章、シャム双生児

全体公開 2137文字
2017-05-14 15:48:21

BAROQUE 歪んだ妄想の大熱波の日なので。
こうしてみるとこう……うん。

Posted by @akirenge

【シャム双生児】

歪み続けている塔で、救いを求めている。
救い、胸が苦しくて死にそうになっている自分を助けてくれる唯一の方法。罪を犯して、それがどんな罪なのか
記憶になくて、真っ白だから、そんな自分と世界を癒す方法を教えてくれた人が言うには、最下層へ行くこと。
外も全てが歪んでいるように見える。歪み。いびつな世界。

傷ついた身体を癒すために、座り込んだ。
何度も何度も死んだお陰で知識も付いてきた。この場所は異形が来ない。
その間に休んでおこうと、持ち物の中から硝子で出来た羽根を取りだした。透き通っているから向こうを見渡せる
透明な羽根は赫い赫い空を飛ぶこと何て出来ない。
偽翼、偽りの翼。
天使に似せるために人間が背中に背負うもの。羽根何てあっても飛べないし、飛んでも何処に行くのだろう?
硝子偽翼を付けて、座り込んだ。
傷ついた身体は少しずつだけど癒えていく。手にあった傷も、額の傷も塞がっていく。
回復出来る骨も肉も持っていないから、この方法をとった。
硝子偽翼をつける理由は座り込んで傷を回復していると気力が減っていくからだ。気力が減れば体力も減る。
これをつけていれば、気力も回復するし、傷も癒えていくので一石二鳥だ。
脆い硝子の羽根は下に降りれば、粉々に砕けてしまうけれど。

傍らに剣を置いた。
天使銃も置いた。己の罪を救済することの出来る唯一の道具だ。
この時を待っていたかのように眠気が襲ってきた。眠りたくはなかったけれど、眠かった。
意識は沈んだ。敵が来ないのが幸いだった。来ていたら、八つ裂きになってまた、あの赫い空と歪んだ景色に戻されるだろう。
死んでも、また戻り、繰り返す。

それは、まるで、輪っかのような。


まだ子供の少年が二人、ベットで寝ていた。回りには二人の生命を繋いでいる機械。
同じ顔。同じ容姿をした二人だ。双子だった。そして二人は繋がっていた。少年二人は腰が繋がっている。
名前は……一人を戒めの音と書いて戒音。もう一人は灰色の音と書いて灰音と言った。
奇怪な産まれ方をした二人は、神様が奇跡をくれたのか、兄弟仲良くしなさいと言う意味なのか生きていた。
二人して生きることが出来るのは奇跡的なことなのだ。

戒音が眠っていると、灰音は起きた。
灰音が眠っていると、戒音は起きた。

シャム双生児、腰が繋がって生まれてきた子供だ。
戒音が起きると灰音は眠っている。戒音は灰音と話したかった。それは灰音だって同じ事だ。
それは出来ないことだ。神様は二人を生かしてくれている代わりにどちらかが起きている時は
どちらかが眠っているという風にしてしまったのだ。そうしなければ、二人は二人とも、生きていけない。
どちらかが居なくなってしまうことは嫌だ。二人は繋がっていた。お互いがお互いで二人で一つのようだった。
いつのことだったかは解らないが、戒音だったのか、灰音だったのか、どちらかが思い付いたのかは
今となっては解らないことだけれど、二人が話せる方法を思い付いた。
チェス盤とメモと筆記用具、これだけあればいい。

戒音が起きた時には灰音がチェスを動かした場所と二言三言のメモが置いてあり
灰音が起きた時には戒音がチェスを動かした場所と二言三言のメモが置いてあり
こうすればチェスが出来た。オセロだろうが何だろうが出来る。
嬉しかった。
遠くにいるような片割れと話すことが出来たのだから。

直接話したいと言う夢があった。
それを叶える前に─────────────────────。


にわかに慌ただしくなる場所。苦しくなっていく息。

「こうなったら、切断しかない」

「どっちを?」

……こっちだ」

このままでは二人とも死んでしまうから、それならば、どちらかを生き残らせる。手術で二人を切断してしまう。
そうすれば生きていける。

「やめて……やめてよ。僕たちを引き裂かないで!」

どちらが言ったのだろう?それでも、その言葉は届かなかった。
生き残ったのはどっち?生き残った方には腰に傷がある。切り離された痕。繋がっていた証。


目覚ましはドロップキック。それもとびきりの勢いを付けたものだ。

「こら!寝てるんじゃない!もぅ、死んだかと想ったじゃないか!」

指を指しているのは浮遊少女、アリス。声を出そうとしても出せない。呆然とアリスを見ている。

「おはよう。ほら、剣を持って」

ぽい、と剣を放り投げる。それを受け取る。

「え?夢を見ていたって?どんな夢?」

アリスは彼を見た。彼は首を傾げていた。大切な夢を見ていたような樹がするのに内容が出てこない。
出てきたのは頬を伝った一滴の涙。

「泣かないでよ。まあ、いつかは想い出すんじゃない?」

いつかは何時来るのだろう?

「行くの?」

アリスが聞くと彼は頷いた。

「行ってらっしゃい。また逢おうね」

逢えるかどうかは知らないが、解るのは、この苦しみを癒す方法は最下層にあると言うことだ。
きっと、夢についても、解るから。

最下層へ続く階段を下りた。

盛大な音を立てて粉々に砕け散る硝子の翼。

救いはまだやってこない。


【Fin】


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