@akirenge
【五月二十三日】
五月二十三日の朝、特務司書の少女はプライベートスペースから司書室に降りてくる。
伸びをしてから司書室の鍵を開けて、出ようとするとドアの向こうから気配がした。待ってみるとドアがノックされる。
「司書さん、起きてる?」
「起きてますよ。りゅーさん。ドアは開いてます」
応対する。ドアを開けると和やかな表情の芥川龍之介が居た。
「おはよう。司書さん」
「はい。おはようございます。どうしました?」
「これ、手紙だよ。司書さんに書いたんだ。今日は、手紙の日だから」
用件は何だろうとなる。いつもなら夕方に来るはずなのに今日は朝だ。芥川が出してきたのは手紙だ。
横に開く白い封筒に入っている。特務司書の少女は親指で封筒を押すようにした。中に入っているのは紙切れだけのようだ。
身内だろうがこうしてしまうのは職業病である。
「開けてみるね」
ペーパーナイフを出そうとすると、芥川にやんわりと手で制された。手に触れられている。
「司書さんの職業病は知ってるけど危険なものとか入っていないから、そのまま開けて欲しいな。声に出して読んで欲しいんだけど」
「声?」
「良かったら」
芥川がそういったので意を決して彼女は封筒を開けることにした。
中には便せんが一枚。縦書きだった。断る理由も特にないため、内容を読んでみることにする。
「司書さんへ、、五月二十三日が手紙の日だと聞いたから、手紙を書いてみたんだ。
司書さんは手紙を読み終わったら燃やしたりするみたいだけれど、職業病だね。
それならば貴方の心に残るような手紙を書こうと想ったんだ。今夜はずっと一緒に居た……」
その後が読めない。照れる。
まだ朝なのだが。
顔を上げると芥川の視線と合った。
「で、今日は手紙の日でもあるのだけれども」
手首を掴まれて、微笑まれて、口づけられた。軽く触れるだけの口づけの後で、芥川の唇で司書の唇が食まれる。
やや開いた唇から舌が入ってきた。
水音がする。
唇を離されると特務司書の少女は芥川にもたれかかった。
「……りゅー、さん……」
「キスの日でもあるんだ」
「……朝から……」
「昼や夜なら、いいの?」
首を傾げられる。
この人は、となっていく。
「仕事があるのでお昼も駄目です」
「夜は?」
大きく息を吐く。手紙はいつの間にか床に落ちていた。後で焼却しておかないといけない。今夜は、なんて。
明日も仕事なのに休日前ならまだいいにしろまだ休日は一寸遠いし、でも。
「――良いに決まってるじゃ無いですか」
特務司書の少女は照れながら、自分の”恋人”の首に腕を回す。
芥川は微笑むと、特務司書の少女を抱きしめた。
【Fin】