@akirenge
【バイト少将、ケーキ作った】
「良かったですよ。ネビさんのお陰で食中毒患者が出なくて」
カフェKITAZAWAにてネビ山ネビ夫の名でバイトをしている赤き竜の六柱、第五柱少将ネビロスはカウンター席でバイトの少女からまかないの大盛り焼きそばを受け取った。
現在の店内にいるのはネビロスとバイトの少女とマスターだけだ。マスターはグラスを磨く手を止めると硝子の水差しに氷を入れていた。
「レシピの判断をしてくれたのは貴方ですし」
「最初の判断をしてくれたのはネビ夫君だからね」
氷の入った水のグラスはバイトの少女が出してくれていたが追加分の水はマスターが出してくれていた。バイトの少女はマスターの姪っ子であり、
家族間の話し合いでここでバイトというか小遣い稼ぎというか社会勉強というかそういうのをしているらしい。色々あるようだ。
同時期には出された箸でネビロスは大盛り焼きそばに口を付ける。焼きそばのコツはと言うと具材か麺を先に炒めて別の皿に入れておいてから、また、麺か具材を作って、
炒めるらしい。
三人が話題にしていたのは先ほどの女性客二人のことだった。女子高生らしい二人がカフェKITAZAWAに来て、珈琲を飲んでいったのだ。
その時はマスターが外に出ていたしバイトの少女もまだ来ていなかったので、ネビロス一人だけだった。
それならばいつもと言うかありふれた客だったのだが、
「ネットのレシピは危険なんですね」
「良いのもあるけど判断するのは知識いるかな」
その二人は好きな相手にフォンダンショコラを作ろうとしていて、レシピを見ていた。ネビロスがカフェオレを運んだのだが二人が見て、話していたレシピが
目に入ったのだ。
フォンダンショコラはフランスのチョコレートケーキであり、中身がとろりとしているチョコレートケーキであることをネビロスは知っていた。
バイトの少女が説明してくれたことがあったのだ。美味しいのだが作り方によっては危険すぎるケーキだったと。
「アレで作られてたら下手をしたら相手が腹を壊すとは」
「生焼けの生地だったらそうなるからね」
フォンダンショコラは冷やして固めたガナッシュ生地をガトーショコラ生地の真ん中に入れて焼いたケーキである。チョコレートの合わせ技なのだが、
女子高生らしい二人が見ていたレシピは単なる生焼け生地のレシピだったのだ。ネビロスはその判断が出来た。
想わず、お客様、と話しかけてしまい、これをそのまま作ったら相手が腹痛を起こすと
言った。聞きかじった知識を伝えたところ女子高生二人は困っていて、かといってネビロスもフォンダンショコラのレシピなんて知らず、
手としてはネット検索をまた使って使えそうなレシピを探すことではあったのだが使えるレシピがどれかとなると判断力がいる。
同時期にマスターとバイトの少女が帰ってきてネビロスは事情を説明。バイトの少女が簡単に出来るフォンダンショコラのレシピを教えてくれた。
インターネットのレシピサイトではお手軽にレシピが手に入る反面、判断を間違えれば食中毒になっても仕方が無いものが出来るという。
「一番良いのは家庭科の教科書や本やそのメーカーがやってるサイトかな。メーカーのサイトはその品物使ってくれのアピールが煩いけど」
「情報を選ぶ能力は必要ですね。……ケーキ作りとか難しそうに見えますが」
大盛りの焼きそばを食べつつ、話をしている。家庭科の教科書と言っているがネビロスは学校なんて通ったことは無い。悪魔だし。
ここでバイトをして数ヶ月が経過しているがネビロスはケーキは作ったことはない。カフェKITAZAWAはケーキは手作りだが作っているのはマスターか、
バイトの少女だ。
「コツを覚えれば簡単だよ。そうだ。ネビさんもそろそろケーキとか作ってみる?」
「俺が?」
カフェKITAZAWAでバイトをはじめて見習いが取れてしばらくの時間が経過している。珈琲やケーキは配膳しているし、珈琲は淹れているが、
ケーキを作ったことはない。
「丁度良い。ネビ夫君に教えてあげなさい」
「マスター」
「出来ることが増えることが良いことだからね」
微笑みながらマスターが言う。バイトの少女に教えるように言っていた。分かった、と彼女は返し
「そうだね。ネビさんのケーキ目当てとかでお客さん増えるかも知れないし、実際、ネビさん目当てのお客増えてるからね」
(……左門達か?)
腐れ縁である迷惑ばかりを被っている召喚師が浮かぶ。
「もてもてだよね。ネビさん」
「……そうですね……」
笑顔で言われても嬉しくない。ネビロスは食事に集中することにした。そしてネビロスは知らない。彼目当ての客が来ているというのは左門達を抜かしても、
着実に増えているのだ。見た目もそうだが接客態度も良いのである。