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セリス×ユリア「変わるもの、変わらないもの」

全体公開 1787文字
2017-07-22 22:28:31

セリユリ第三弾。と思ったけど別に1、2弾と繋がってるわけじゃなかったり。
二人とも結ばれてない状態のセリユリ。

Posted by @alussfon

兄と妹。
母を同じくする、血を分けた兄妹。
その事実を知った時、ユリアへの印象も確かに変わったと思う。
だけど、それでも変わらないものが、確かにあった。


戦いの後、セリスはグランベルの聖王として復興に力を尽くしている。
彼と共に戦って来た仲間も、今はそれぞれの国で、それぞれの戦いをしていた。
ありきたりな表現だが、それはかつて経験した物とは比較にならないほど困難で、そして実りあるものとなるだろう。

「ふぅ・・・」

椅子に腰掛けたセリスが、大きく伸びをする。
グランベルの王となったセリスは、軍事、政治、国内の治安など、様々な事を把握せねばならない。
当然それを補佐する者もいるが、だからといって彼らに任せてセリスが何もしないというわけにはいかなかった。

「お疲れ様です、セリス様」

丁度いいタイミングで、カップを持ったユリアがセリスの元を訪れた。
ありがとう、と短く礼を述べて、セリスはカップの中に揺れる熱い紅茶に口をつける。
火傷をしそうな熱さだったが、疲れた体に染み渡るような心地よさも感じて、セリスはまた小さくため息をついた。

「ごめん、ユリアも忙しいのにね」

「いえ、セリス様に比べたら私なんて・・・」

セリスの言葉を、ユリアは申し訳なさそうに否定する。
肩書き上、ユリアはグランベルの皇女ではあるが、実際のところはセリスの執務を補佐する秘書のようなものとなっていた。
公私共に支え合う二人を、周囲は仲の良い兄妹と讃えていた。
悲劇の英雄シグルドと歴史に翻弄された皇帝アルヴィス、そして運命の聖女ディアドラ。
その子らが今手を取り合っているとなると、期待をしない方が無理な話だった。

しかし、その一方で周囲はある不安を抱いている。
二人とも伴侶を見つける気がまるでないという事である。
一人でも世継ぎを作って王家の血筋を安定させたいのはわかるが、毎日のように縁談を持ってこられては、流石のセリスも辟易していた。
ユリアはディアドラの願い、シグルドへの償いを理由に、それらを全て断っている。
一方でセリスは、多忙を理由にするしかできなかった。
勿論、誰かとの結婚について考えなかったわけではない。
だが、一度抱いた想いを切り替えられるほど、セリスは器用ではなかった。

「・・・セリス様?」

不意に声をかけられて、セリスはハッと我に帰る。
空のカップを持ったまま考え込んでしまったようで、ユリアに心配されてしまった。
顔を上げた時、ユリアの顔が目の前にあって驚き、その胸の高鳴りを隠すのには苦労した。

「ごめん、少しぼうっとしていて・・・」

「セリス様・・・お疲れでしたら今日は休まれた方が・・・」

大丈夫、とセリスは返すが、ユリアの心配そうな表情が晴れることはなかった。

「休む、か・・・」

ふと、セリスに一つの考えが浮かんだ。
頭に疑問符を浮かべるユリアに、セリスは明るい顔で語りかける。

「そういえば、ミレトスで買い物をしようっていう約束がまだだったね」

突然の提案にユリアは一瞬だけ戸惑ったが、すぐにセリスの言葉の意味を思い出した。
グランベルの南部に位置する都市ミレトス。
貿易都市として栄えていたが、かつての戦いではロプト教団によって支配され、その華やかさは失われていた。
セリス達解放軍によって都市は蘇ったが、その後ユリアがロプト教団の大司教マンフロイによって誘拐され、かつて交わした約束を果たすことはできずじまいだったのだ。

「セリス様・・・そんなに前の事を、覚えていてくれたのですね・・・」

「忘れないよ。だって・・・」

一度言葉を区切ったセリスが、それを続けるべきかどうか思案する。
照れくさいような気もした。だが、この言葉は伝えたいと思った。

「・・・はじめて、ユリアの笑顔を見た日だったから」

その言葉にユリアは小さく驚き、そしてくすくすと笑った。
その笑顔に、セリスもつられて笑う。
お互い随分と久しぶりなような気がして、しばらく二人で笑いあっていた。


これから先、何が起こるか、どう変わっていくのかが自分にだってわからない。
だけど、これだけは言える。
一度抱いた愛は、たとえ結ばれなくても、報われなくても、消えることはない。
そして願う。
この日々が変わらずに在り続けてくれることを。


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