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鏡よ鏡

@sin_niya_b
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2017-08-02 23:05:51



 布で鏡面を隠したまま、その鏡を戦鎚で叩き割る。悲鳴のように甲高い音をたてて割れた鏡の破片は地面へ落ちる前に空中で溶けるように消えた。
「……これで何枚目だ」
「九枚目……ですかね」
 ……クレイン・オールドマン神父とその助手である。中央区は襲撃の復興すらままならぬまま、今回の騒ぎに振り回されている。
「オールドマン神父、貴方はこのような雑事より他の……例えば、『救済』であるとかをなさったほうがよろしいのでは?」
「こちらの方が緊急性が高いだろう。鏡から生まれるカゲは大抵において性質が反転している、徳の高い聖職者ほど万が一鏡に映れば……」
「神父!」
 足早に歩きながら会話していた途中で、不意に助手が鋭い声をあげた。視線の先を追うと、きらりと何かが光ったようだった。
「映されました!」
「糞ッ」
 悪態を吐いてから駆け出すクレイン。近づくにつれ見えてきた鏡には既に何かの像が結ばれつつある。距離を詰め勢い良く戦鎚を振り下ろし、
「……惜しかったな」
 鏡が割れる音は、しなかった。
 振り下ろされた戦鎚を、まったく同じ作りの戦鎚が受け止めていた。それを握っているのは、……クレインと同じ顔をした男である。そして間髪いれず男の足がクレインを蹴り飛ばした。
「悪いが大人しく消されてやるわけにはいかなくてな」
 そのまま立ち去りかけた男は、ふと足を止めて振り返る。クレインと同じ顔で、まったく違う笑みで、唇を舐める。掠れた声がわざとらしく熱をおびて、クレインへ絡み付くように囁いた。
「『俺』が欲しくて欲しくて仕方ない癖に我慢してるものを代わりに享受してきてやらないとな?」
 怪訝そうに眉をひそめたクレインは、一瞬間を空けた後青ざめた。
「お前、」
 男は身を翻す。クレインは恐怖と吐き気と痛みに震える体に鞭打ち立ち上がると、その後を追った。


  ▼  ▼  ▼


クレイン・オールドマン〔カゲ〕
「今だけは俺を『神父』と呼ばないでくれ」
「愛し合うことは罪だろうか?」

 見た目はオリジナルと全く変わらない。強いて言うなら表情がやや明るいが、「今日のあいつ機嫌いいな」ですませられるような範囲内。
 反転しているのは性格。悪い意味で社交的かつ奔放で、老若男女問わず口説きにかかる。それ以外はおおむね善良。
 現在は中央区を逃亡中。オリジナルから逃げ回りつつナンパのチャンスも見逃さない。


クレイン・オールドマン〔オリジナル〕
「今ここに俺が来なかったか」
「ほんともうまじで死んでくれ……」

 血眼でカゲを探している。見付けたら問答無用で即座に殺すつもり。


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新矢 晋@企画用
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