@akirenge
【ハロウィン前に】
仕事が終わらないんだよと半泣きのような声で彼女が言うものだから、徳田秋声は気晴らしになればと商店街まで食べ物を買い出しに行くことにした。
このところ文豪達も増えてきたのでいつのまにかたべものがなくなってしまうということはよくある。
「秋声さん、お買い物?」
「食べ物を買いに」
「ボクも行く!」
「良いけど、おやつとか奢らないからね。このところ、予算を圧迫しているんだし」
「……えー……」
新美南吉が名乗り出る。秋声は受けつつも釘は刺しておいた。
買いに行くたびに買い食いをし続けていると、分館のおやつ代が目減りしていく。
「……どうした?」
「買い物だよ。正宗」
「秋声さんがお買い物に行くからボクも手伝うって行ったらおやつ、奢ってくれないって」
正宗白鳥が来た。手短に用件を伝える。
「俺も行こう。奢りは良い」
「それなら色々と買おうかな」
予算を確かめる。こうして三人は買い物に行くことにした。
「はろうぃんのお知らせ……?」
商店街に着くと、張り紙が貼ってあった。商店街でハロウィンのイベントをするらしい。
「去年もやったんだけど、今年もやるんだよ。若さんは」
八百屋によるとおばちゃんが話しかけてきた。秋声達に良くしてくれるおばちゃんだ。
「去年は、越してきたばかりで」
秋声は微苦笑を浮かべる。若さんというのは秋声のことだ。
彼は特務司書の少女の実家に引き取られた家が没落した元書生という設定を使っている。これは織田作之助が前に作った設定で生前の自分の生い立ちも絡ませていた。
「楽しいイベントだよ。嬢様も参加してくれれば」
「話しておきます」
彼女が好むからとリンゴや梨を買い、おまけの果物を貰い秋声は八百屋を去る。
「……越してきた?」
「実際はあの子が来て、僕達が転生したのは十月三十一日の夜だ。その編、ごまかしだよ」
十月三十一日はハロウィンどころでは無いと言うか彼女も色々と片付いてから、日付などを聞いて、ああ、今夜はハロウィンかなんて言っていたのだ。
「ハロウィンって?」
「仮装してお菓子をくれなきゃ悪戯するぞって子供達が歩き回ったり……あの子が言うには羽目を外せない日本人が羽目を外すことにした異国のイベントだって」
「皮肉が効いているな」
「ハロウィン、したい!」
「え?」
「出来るでしょう。ハロウィン! やりたい!」
新美が言う。いきなりの言葉だった。秋声としてはかつての、自分が転生した頃のことを想い出しそうになっていたので不意を突かれた。
「……アイツに聞けばどうだ?」
「聞いてみる。やりたい」
新美にしてはこだわっていた。
「……お前が暗い顔をするから」
「してたかな?」
「ああ」
「和菓子屋さんもハロウィンのお菓子出すかな」
「……出すのかな?」
「行ってきけばどうだ」
「聞いてみる!」
商店街にはいくつもの和菓子屋もある。
「もう、一年になりそうだからね」
自分が転生して侵蝕者と戦うことになってそろそろ一年だ。
侵蝕者の調査も進んでいるとは言え、敵も強大になってきている。
「だから、何かにつけて祝うんだろう」
「秋声さーん、正宗さん、カボチャのおかしだしてくれるって」
「君……」
言う新美だが和菓子屋に入った以上は買わなければならないだろう。この和菓子屋は窯出しのシュークリームが美味しい。
パイ生地と通常があるがどちらも好きだ。
「新美の分は出してやる」
「それは自分の分は自分で出せってことじゃないかな」
「菓子代は貰っているだろう」
正宗はすぐに行ってしまう。
買わなければならないだろう。この和菓子屋は窯出しのシュークリームが美味しい。パイ生地と通常があるがどちらも好きだ。
「新美の分は出してやる」
「それは自分の分は自分で出せってことじゃないかな」
「菓子代は貰っているだろう」
正宗はすぐに行ってしまう。
「おやつね、いっぱい買うの」
「食べきれる分だけにしておけ」
「賢ちゃんと直ちゃんにもわける」
「なら分ける分も買え」
――だから君、新美君に甘いよね。正宗。
想ったが言わない。しっかり心の底に入れておく。
「司書さん、ハロウィン参加してくれるかな」
新美が、言う。
特務司書の少女に楽しんで欲しいというように、言っていた。
「分館も飾って、ここのも参加しよう。僕からも、話すから」
「約束だよ!」
羽目を外すということにしているのは日本のハロウィンならば、
騒いでおくべきだ。これから、大変になるのなら。
「これだけか」
「正宗さんのも、あるよ」
(新美君、正宗の分もって正宗が出……あ、正宗の分は自分で払うってなっているけどいいって正宗が遠慮……やっぱり君本当に新美君に甘いよね!)
ハロウィン前、前から想っていることが確信となったが、秋声は心の超奥底にその言葉をしまうことにした。
【Fin】