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【感想】『劇場版黒子のバスケ LAST GAME』やっぱり黒バスは絶望じゃ終わらない

全体公開 63 5587文字
2017-10-28 21:30:26

円盤発売から一か月すぎちゃったけどまあ気にしない。この投稿には本編と特典の原案ネームのネタバレが含まれているぞい

Posted by @NLchu

 『劇場版黒子のバスケ LAST GAME』。これは「週刊少年ジャンプ」での連載が完結した後に、「少年ジャンプNEXT!!」(現・「少年ジャンプGIGA」)で連載されていた原作の後日談『EXTRA GAME』の劇場アニメ化だ。それだけではなく、原作者・藤巻忠俊先生が原案・監修として深く関わっており、『黒子のバスケ』の集大成といえる。そして、恐らくは「最後のお祭り」となるだろう。

 肝心の内容もシリーズの締めに相応しく、素晴らしい映画だったのだが、まずは原作『EXTRA GAME』への個人的な印象から語っていきたい。

 率直に言ってしまうと、本編の補完やファンサービスなどの見どころは十二分にあるのだが、ほぼ「黒子&火神&キセキの世代VSゴールド&シルバー」を描くことだけに突き進み過ぎて、「こいつらは何のために登場したのか」を考えると多分話の都合だろうという結論に辿り着いてしまうキャラが多かった印象であった。
 まず実質"真のラスボス"だが、「何があったらこうなるんだよコイツら」と思うレベルで異様に最悪な人格の持ち主であり、いかにも主人公に倒されるための単純な悪役然としたゴールドとシルバー(まあ、ゴールドに何があったのかは今回の円盤特典のネームで明らかになったわけだが)。
 控えとして選出されるも結局出場しない日向と高尾と若松、女子ながら試合展開にがっつり絡んでいた本編と違い、試合では解説するか驚くだけの桃井とリコ(尤も、カゲトラさんは最初から「リコたんは試合までの練習メニュー作成とオレの補佐、桃井ちゃんはチームサポートと情報収集」「単純な実力だけでなくチームバランスをとる意味も含めた人選」と言っているので、試合中に実績を出してもらうためだけに呼んだわけではなかったのだろう)。
 ジャバウォックも他三人のメンバーは「こいつらもそこそこ実力者」「こいつらもそこそこ嫌な奴」ぐらいの描写しかなく、ほぼオマケだったり
 中でも最も強引に感じたのが、台詞がなくバスケの実力も人物像も赤司との関係も描写されずに笠松らと同じチームに入って負けた樋口正太くんなのだが、原作における彼は別の投稿で語り尽くしたので割愛。

【樋口正太くんという存在とは?】http://privatter.net/p/2266201

 まあ、藤巻先生は当時の雑誌のインタビューやイラスト集で度々EXTRA GAMEについて「勧善懲悪がテーマ」と語っており、4年描き続けた漫画の最後くらい自分の描きたい物(と冨樫先生のリクエスト)を描きたかったのなら仕方ない気がする。

 あとこれは細かいが、試合中継を見ているキャラの中に花宮たちがいるのだから、灰崎や荻原がいてもと思ったが、やはり公式ではキセキがメインの番外的エピソードであの二人を扱うのは難しいのだろうか(なんとなくそんな印象がある)。

 それくらいにしといていい加減『LAST GAME』の感想に入ろう。

 バスケ描写に関しては、テレビシリーズと劇場版総集編を経てきた製作陣による「アニメーションでいかにカッコよくバスケを表現できるか」という模索が試合パート全てに渡って感じられ、とにかく金と技術と努力の結晶と言っていい。そういった意味でも集大成である。
 縦横無尽に駆け回る選手をカメラが追っているような描き方に、アニバスのお家芸・やたらキラッキラ舞う汗と風圧のようなもの(伝われ)も健在。もちろん試合のクライマックスで歌が流れ出すお約束も守るぞ!
 最初のStrkyとジャバウォックの試合がより詳しく描かれたのも好印象で、樋口さんの存在感が増した気もする。ただ、ねぶやんの「本当に選手に復帰したんだな」というセリフが追加されたとはいえ、マネージャー時代の樋口さんの出番が完全に消えたアニメしか知らない人にはやはり不親切だった印象は拭えないなんで私樋口さんの描写をジャッジする人になってんの?

 先程書いた「本編の補完やファンサービス」という原作のいいところは余すことなく表現されており、黒子とは勿論のこと火神・黄瀬とも力を合わせて戦う青峰、笠松先輩の言葉を胸にチームのために立てなくなるまで戦った黄瀬、先輩に教わったことを活かしたり初めて本気で戦える相手に喜んだりの紫原、高尾をしっかりフォローした上での緑間と赤司の グリーンレボリューション空中装填式3Pシュート、赤司の別人格の復活、そして消滅最後の黒子のパスを受けたダブル光のダンク。
 特に終盤で黒子が本気の怒りを見せるシーンなんて、原作でも激おこだったのに、とてつもねえマジギレ具合の顔となっている。イケメン///(黒子テツヤちゃんだいすきクラブ並みの感想)
あと黄瀬くんの「お前如きオレ一人で十分だっつってんだよ」の言い方がセクシー。(そして浮き彫りになるシルバーさんのほぼ「サル」か「カス」しかない罵倒ボキャの少なさ。)

原作から試合の舞台が屋外コートから屋内に変更され、更にキセキのチームメイトも中継を見ているのではなく観客席に来ているのだが、今回は出番の少ない彼らの推しメンの活躍に大興奮する俺らみたいになってる姿を見られるのも嬉しい。その上、原作には登場しなかった黛さんも見に来るとこなんて素晴らしい。
もう笠松先輩が「今吉たちも同じことを言ってたよ」と言う時に樋口さんの顔がちゃんと映ってるだけで1億点なのに、原作にはなかった黛さんの登場で5億点、試合パートの映像美と声優陣の名演で100億点、ラストシーンなんて最早無量大数レベルである。

 ここまで評価点を書いてきたが、よい作品だから余計に「こうしてくれたらもっと嬉しかったぜ!」などとワガママを言いたくもなる。火神の渡米にあたっては木吉を除いた誠凛とキセキとアレックスしか関わっていないので、「また父親と暮らす」とかはまだしも、「タツヤにももう話した」「落ち着いたら木吉先輩の見舞いに行く」ぐらいは言ってもよかったんじゃないかとか。 が、ここで書くのは 原作通りなんだけど赤司がもう一つの人格を犠牲にしてパワーアップをしてから「ダメだとれない!」ってピンチになるまでが早すぎること以外だと、ゴールド関連ぐらいにしておこう。
 改めて原作を読み直した後に本作を見直すと、原案の時点では過去が明かされる予定で、改心の兆しを見せる案もあったとは思えないほど、ゴールドの人となりが伺える描写は削られている。
 日本の子供達を絶望させるために家族で試合を見に行くように宣伝したり(それがなくても十分外道ぶりは伝わるのだが)、カゲトラさんが元エリート選手だと推測するところや、負けを認めないシルバーを諌めて「勝負は結果が全てだ」と言い切る潔さを見せるところなど(彼の過去を知った後だと味わい深い)。
 嫌な言い方をしてしまえば、この映画の中では「日本のバスケ部になじめず失望していた火神大我が、相棒やライバルたちと出会って成長し、彼らとの思い出を胸に夢を追うためアメリカへ渡る物語」の、締めくくりに相応しい勝負を用意した当て馬でしかなかった印象さえあった。
 原案ネームまで読めば、寧ろ火神と対になるキャラクターであったことがわかるのだけど、過去の話を割愛することが決まった時点で詳細な描写は薄めていくことになったのかなあ。
 個人的には、前述したように黒バスの真のラスボスである彼らが「単純に嫌な悪役」であることはどことなく腑に落ちず、原案ネームでの補完は非常に有難かったので、ゴールドの過去は円盤特典よりも後年手に入りやすい関連書籍あたりに収録して欲しかった気がする。今はネットがあるが、情報がすぐ埋もれるし真偽も疑われやすい。ノベライズ版ラスゲで拾ってくれてもよかったんやで佐和子先生(当初は出る予定だったらしい夜木くんと朝日奈くんの出番も)。
 ただ、イラスト集での「(ジャバウォックの秘密は)あるけどいらないかな」という言葉からも、藤巻先生はゴールドの過去を設定しつつ、「単純に嫌な悪役」で終わらせたい気持ちが大きかったのではないかと思われる。ファンの目に見える形で発表するということで、最大限譲歩した形が円盤特典だったのだろう。

 しかし、敢えて一番残念だった点として挙げさせてもらうなら、ネタバレを全く見ずに映画館に行けたにも関わらず、最大の肝である「火神が誠凛を去って渡米する」というオリジナルストーリーが完全に予想通りだったことだろうか

 この劇場版、公開前から「アレンジ程度ではない、衝撃的なオリジナルストーリーを入れる」という藤巻先生のコメントが発表されていた。そこが一番期待が大きかったし、劇場で初めて「え〜!?こんな展開だなんて〜!!」と思いたかったので、公開日から見に行くまで私は絶対にネットで他の黒バスファンの書き込みを見なかった。
 しかしテレビで「アメリカから来ました、火神大我です!」から始まり、涙を浮かべて拳を突き出す黒子で終わるCMが流れた瞬間、私はオリジナルストーリーの内容を完全に察してしまった。「いやいや、まさかそんなまさかな」と思いながら劇場に入ったが、パーフェクトそのまさかだったのだ。
その展開の是非よりも、ネタバレを徹底的に避けたにも関わらず劇場で初めて驚くことが叶わなかった虚しさに自分は打ちひしがれていた。
 尤も、あのCMには「火神が誠凛を去って渡米する」ことがわかるカット・セリフは一切含まれていない。あれで予想できてしまった私がおかしいのだろうか?(※連載当時から少なくないファンの間で囁かれていた展開予想ではあった)

 が、そんな私の虚しさをひっくり返し、というか私に掌をひっくり返させたのがあのラストだ。

 握手をしてあっさり別れたかのように見えた黒子と火神。しかし、火神は改めて黒子の手がバスケ選手としては小さいと気づき(つまり、アメリカでプロを目指す自分と再び同じ舞台に立つことは恐らく叶わない)、だがその手に何度も助けられてきたことを思い出す。
 そして火神は搭乗口への列から出て駆け出す(ここでいい感じのBGMが流れ始める)。

 黒子を見つけて本心を語りだす火神。
「オレは向こうで何度も壁にぶちあたるけどもし、お前ならって考えるとどんな壁でもああっくそ、何言ってんだオレ(かわいい)とにかくお前のおかげなんだ!今のオレはお前がいたからなんだ!礼を言わなきゃなんねーのはオレの方だっ!ありがとうな黒子!!」
となんかめっちゃ綺麗な涙を流す火神に、涙を拭って黒子は振り返る。「壁にぶちあたるなんて当たり前じゃないですか」と敢えて厳しい言葉をかけて。
「それでも火神君なら必ず乗り越えると信じてますから!これからもずっとボクはキミの影です」
「ああ!」
「さよなら火神君」
……行ってくる!」

~♪


………うん。
……なんだこの神映画は

黒バスではメインキャラがボロッボロ泣くのだけれど、火神は準主人公ながらギャグ以外で泣いたことがなかったのだが、そんな彼がもうボロッボロ泣くのだ。
対して、主人公だけあって(?)本編の重要シーンで幾度も泣いてきた黒子が、ここでは涙は見せても泣く姿は見せないのである。
ボロッボロ泣く火神に対し、黒子は泣いてる間ずっと火神にも観客にも顔を見せず、涙を拭ってから笑顔で送り出すことを選ぶのがまた感動的だ。
二人が互いに拳を向けるシーンでスタッフロールに入っていくのは最の高だし、もうこれ数で評価つけるなら無量大数だろこの映画という気分にしかならない。

にも関わらず、スタッフロールが終わると更にポイントを上げにくる。

「これでもうあいつとはやることはなくなっちゃったね~、別にいいけど」
「そうでもないだろう」
「え?」
「オレは行くぜ、アメリカ」
「は!?火神っちに会いにッスか!?」
「んなわけねーだろバカ、NBAでバスケやるに決まってんだろ!」
「んなっ!?いつッスかそれ!?」
「まだわかんねーけど近々絶対行く!」
「てかミドチン何言ってんの~?」
「それはコッチのセリフなのだよ。
オレ達はこれからもずっと、バスケをやっていくのだろう?」
「緑間の言うとおりだ。
火神はプレイする場所が変わっただけだ。オレ達がバスケを続けていれば、戦えるさ。また必ずな」
(笑顔で誠凛に合流する黒子)


劇場版黒子のバスケ LAST GAME  完


えぇ……?ネ申では……???

主要人物に辛い展開を与えつつ希望を見せて締める黒バス節は全開であり、黒子と火神と関わることで変わっていった彼らが、バスケを自分たちを繋ぐものとして語るのは、実に“ラストゲーム”に相応しいラストだった。

本当に好きな作品がこのような形で完結を迎えたのは、率直に言うと自分の半生の中で最も幸せな出来事の一つである。私は「黒子のバスケ」に出会えたことを、きっと忘れないだろう。


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