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其の表情は

全体公開 3083文字
2017-10-31 02:50:59

ワールドトリガーで王子夢らしきものというか王子の性格が王子
コレを書いて気付いたことは彼はとりまるにもあだ名を付けていそうだが徒名が解らなくて
一人称系三人称が進めづらかったということです

Posted by @akirenge

【其の表情は】

「リコリス」

ボーダー本部の廊下にて王子一彰は唐沢リコをそう呼んだ。
王子を無視して行こうとしていたリコは足を止めて振り返る。黒い瞳が王子の緑色の瞳を睨んでいた。

「それでボクを呼ぶな」

「リコリー」

――解ってやってるよね」

「やってるけど」

リコは大きくため息をついた。唐沢リコ、ボーダー本部の営業部部長である唐沢克己の姪っ子で、海外暮らしをしていて、家庭の事情で
唐沢が面倒を見ることになったのだがいくつかの出来事があり、玉狛支部所属になったりそこで暮らしたりとしている。
ボーダー本部で暮らしている者だって居るのでその辺りは驚かない。

「ボクは、リコリスと呼ばれるのは嫌いなんだよ」

知っている。
王子には同年代や年下をあだ名で呼ぶ癖がある、王子の三つ下である彼女にもリコリスというあだ名を付けた。リコから派生させたのだ。
大声で初めて呼んだときの彼女の表情は忘れられない。驚きと嫌悪があった。

「どうして嫌いなのかって聞いたことが無いんだ。リコリスって彼岸花のことだけど、嫌いなの」

「彼岸花自体は嫌いじゃないけれどさ。……王子……徒名のセンス、なくない?」

「ぼくの徒名のセンスは個性的だってカシオにも言われてるんだけど」

「褒めてないんだって。それ」

「今は暇? 暇なら、個人ランク戦でもどう?」

カシオこと樫尾由多嘉は王子が隊長を務めている王子隊のアタッカーであり、リコとも良く個人ランク戦で勝負をしていた。
玉狛支部の面々は滅多にといって良いほど本部には来ないがリコは別で、彼女はよく本部を訪れている。

「ウチの隊の面子が揃うまでは時間がかかりそうだから別に良いよ」

「粟原隊か、リコリーも広報活動をすれば良いんじゃないかな」

「嫌だ。ボクが粟原隊に入ったのは戦力のためだし」

粟原隊はリコが所属をしている隊だ。本部所属であり、玉狛支部のリコが入れているのは玉狛支部の木崎隊が特殊な部隊であるからとか
事情がいくつかあると聞いている。B級の上位にも食い込めるガールズチームであり、また広報担当部隊の一つでもある。
A級の嵐山隊も広報部隊だが、こちらはアイドルグループのようなものとして作られている。が、戦闘力もあるのだ。
時間がかかると言っていたので広報活動をしているのだと判断する。

「リコリーが入ってから強くなったしね。粟原隊は、今度もまた対決をするのが楽しみだよ」

……その時になったら、君は倒すとして……

「その前にぼくが倒すかも。まずは個人ランク戦かな」

ランク戦は順位が固まっていたりすると同シーズンでも同じ相手と何度も戦うことになってしまう。ステージは毎回変わるが相手はそう変わらないと
言うこともあるのだ。

「王子、いい加減、ボクをリコリスと呼ぶのは辞めろ。リコリーはまだいい」

「どうしてリコリスって呼ばれたくないのか。ぼくは知らないんだけど、教えてくれたら」

「呼ばれることに嫌悪があるんだ」

「其の理由は」

……嫌悪だって」

それだと、解らない。
だが、王子としてはリコの顔が自分を毛嫌いするようなものになっているのをみて、心が嬉しくなってくる。それを王子隊の面々に話したら、
全員が呆れたりとか自分が性格が悪いといった顔をしていたが、王子としてはリコの嫌がる顔がとても好きなのだ。
個人ランク戦のブースに行くまでの道のりを二人で歩く。リコは足早だったが王子が追いついている状態だ。
途中、王子の耳に着信音が聞こえた。
リコが足を止めて、多機能情報端末を取り出す。先に行ってて、とリコが言い、京介、と応対する。

(彼か)

烏丸京介、玉狛支部所属であり、リコと良く行動をしているA級隊員だ。本部内で彼のファンはとても多い。
リコは行けと言っていたが、王子は待つことにした。

「バイト……明日……防衛のシフトなら変わるよ。人が居ないなら仕方が無いし、人付き合いは大事だっておじさんも言っていたし。……司令室で話通してくるね。
無理はしないで。また、あとでね」

会話の内容からして向こうのバイトのシフトが変わったため、防衛任務のシフトを交代して欲しいというもののようだ。リコはかなり防衛任務を入れている。
B級隊員は出来高払いなので防衛任務を増やせば、給料も上がるが、それを言うならA級の方がもっとそうだ。
固定給に出来高払いなのである。

「防衛任務、増やすんだ」

「ホールのバイト、人数不足なんだってさ。京介の家も大変みたいだし、……防衛任務のこと、司令室で話してこないと。混合部隊。誰と誰かに寄るし。
手続きをしてくるから、王子、君は……

リコの方は軽く受けている。彼の助けになれるのならそうするのだろう。

「リコリス」

「は?」

言いかけた言葉を遮る。王子は笑い、

「ぼくも着いていくよ」

「だから、ボクを、リコリスって呼ぶな!」

「良いじゃないか。呼びたかったんだから」

リコは無言のままで王子を睨み付けた後で方向転換。
司令室の方で手続きを済ませることにする。彼は混合部隊に配属されるので、混合部隊の場合だと誰と誰と組むかで変わってくる。把握をしておきたいのだろうし、
まずは手続きからだ。

「君は、人の嫌がることが好きだね」

「リコリーだからだよ」

あっさり言えばリコはため息と怒りを呑み込むような表情をしてから、王子を振り払うようして、急ぐ。王子は追いつくように足早となった。



エルシア・D・ヴィターハウゼン・リコリス。
これが唐沢リコの本名だ。長いのだが略称としてはヴィターハウゼン・リコリスであり、この世界ならばリコリス・ヴィターハウゼンとなるようだが、
自分が居た世界では名字から名前に流れる。
彼女ははこの世界の出身ではない。別の世界出身だ。海賊をしていたのだが事故でこちらに来てしまった。
リコは愛称であり、向こうでもリコリスと名乗ることは滅多になかったし、自分のややこしい事情を知っているのは玉狛支部の面々やボーダー上層部や一部のボーダー隊員だ。
王子は知らない。
リコリスというのはリコの本名であることを。
そして、本当にごく一部にしか呼ばれたくない名であることをだ。
まともに呼ぶのは名目上のおじである唐沢克己ぐらいである。

(説明も出来ないし)

王子に自分の事情を話す気は無い。リコリスが本名とは言いたくないのだ。この世界では唐沢リコで通してしまっている。

「終わったら個別ランク戦だね」

「今までの分を全てぶつけるよ」

「ぶつけてよ。ぼくもぶつけるから」

リコは王子が苦手というか余り話したくはないのだ。彼があだ名を付けることが趣味だと知ったのはかなりの後だが、自分の本名を徒名にしてくるとは想わなかったのだ。
何か幸せそうなことがあったようだがリコには理解が出来ない。
したくもない。

――王子は性格が悪いよね。作戦は堅実なのに」

「そうかな。ぼくは君が言うような堅実を守っているだけだよ」

……堅実?」

「堅実」

同じようなやりとりを繰り返しながら行けば、司令室の前に来る。

「失礼します」

どの辺が堅実なのかとなりながら、リコはまず、用事をすませてしまうことにした。
そちらを優先した彼女は、王子が朗らかに話す言葉を、聞けなかった。

「だってさ、リコリス。君はそう呼べば確実にぼくにしか向けない嫌な顔を向けてくれるよね」


【Fin】


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