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警備員手記①『付加価値の存在』

かにバンダリかまぼこ
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2017-12-06 03:01:14

西京Profect 汝はXXなりや? ブレーメンが付加価値を使えるようになるまでのお話。

初めて家族から距離を置かれていると感じたのは俺が六歳の誕生日を迎えてから数日が経った夜のことだ。その日は足音など搔き消されてしまう程の雨が降り雷が落ち荒れた夜だった。

どうしても眠れずに母に少し甘えてもいいだろうと思いリビングに至るドアを開けようとしたところでそれは聞こえてきた。

「ブレーメンは六歳になってもまだ魔法が碌に扱えないとは、ノルマン家もいよいよ終わりか……」
「大丈夫ですわ。フレミーやアルスは既に貴方の得意な火炎系統の魔法を使えるようになってきているではありませんか。きっと、ブレーメンだってもう少しすれば使えるようになるはずですわ」

ノルマン家は貴族でもなければ特別裕福な家なわけでもない。しかし、魔力が代々そこそこに高く魔法の扱いに関して言ってしまえば自信家が多い。その中で長男として生まれた俺も期待を持たれていたわけだがどうしたことか六歳になっても一切の魔法が使えなかった。

使えないというより、どちらかと言えば魔力の流れ自体は感じることができるのだがそれを行使することができないという具合である。妹や弟が魔法を使えるようになってきている中、俺だけ魔法を使えないという事実に少しばかり焦りはあったが父も母もそれに対して厳しく言及することはしてこなかったがやはり、気にしていたということだ。

「しかしなぁ……。アレは他の子供と違い本当に平々凡々な才能しかないみたいだからな……」
「……。否定はできませんわね」
「だろう?アレはインヴァレリーで魔法について学びたいと言っていたみたいだが、途中で帰ってくるのが易々と想像できてしまうな」

俺はその時点で耐えきれなくなりドアを開けてしまった。
逃げ出したくても、逃げてしまえばきっと悔しくなりさらに辛くなるだけだと思い、開けてしまった。父も母も驚き、顔面が蒼白になり明らかに「やってしまった……」といった表情をしていた。

「ブレーメン。お前、今の話を聞いていたのか……?」
「はい。父さん、母さん。」
「違うのよ、違うのよブレーメン。私やグーラは貴方の将来を考えて……」
「いいんです。僕は他の子達より出来ていないのはわかっていますから」
「そんな……!」

もう何も聞きたくなかった。聞いてしまえばさらにこの人たちを疑ってしまいそうで怖くて、薄暗くドロドロとした感情がこみ上げてくる。

「生まれてきて、ごめんなさい……」

親に対して一番言ってはいけない事を言ってしまい、俺はその場から逃げ出した。

嫌なことがあれば直ぐに書庫に行く癖がついてしまっていて今回も例に漏れず家の離れにある書庫へと駆け込んだ。本を読んでいればその世界へと入ることができ、それは幼い俺にとっての唯一の現実逃避の手段であった。

歩きなれた書庫を進みいつもは童話や小説がある所までくれば止まるが今回はそこを通りすぎ魔法教本のある棚まで歩いていく。

『絶対に見返してやる。絶対に魔法を使えるようにしてやる。絶対にフレミーやアルスには負けない』

未だに腹の虫を抑えきれないまま書庫を練り歩きやがて一冊の本を手に取る。
―――付加魔法に関する注意と使用

付加魔法。
聞きなれない魔法で少し気になり手に取ってみた。
それが俺が付加価値を使い始めるきっかけとなった出来事である。

曰く、付加魔法とは自らが対象に対して何かしらの追加効果を与える魔法の事である。
曰く、あまりにも絶大な効果(死を与えるだとか死者を生き返らすだとか)は自らを消滅させる。

使用の仕方は単純明快で、魔力を自分が効果を付加したい物に流すだけである。
その際に自分がどのような効果を付加したいのかは自分で決めることはできない。
その物体の持つ特性によって付加される効果は決まる。
魔力制御の次第によっては効果の強さは変わる。

俺はその本を何度も何度も読み返した。
最初は家族を見返してやりたくて夜中に隠れて練習を始めたが段々と見返すよりも自分が完璧にこの魔法を使えるようになることを目的として日夜問わずに練習や研究に気付けば没頭していた。
あの夜から確実に家族から、特に父と母からは距離を置かれ食事以外では顔を合わせることはなくなっていたがもうそんなことはどうでもよくなっていた。
日々家族の目につかない自室や書庫にて練習を続け、初めての付加に成功したのは十二歳になった時のことだった。


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かにバンダリかまぼこ @karin_eme
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