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嘘を暴く鏡

豆腐屋ふうか
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2017-12-08 18:23:33

もうね!!!!!最後やりたかっただけだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 『嘘を暴く鏡』、そんな多くのおとぎ話に出てくるような道具が現実に存在した。
 それはマクガフィンであり、人々に危害を加える前に回収するため連日調査が進められていた。
 調査を進めていく中で郊外の打ち捨てられた廃墟の中でそれらしいものが目撃されたという情報を得た財団は調査員を数名廃墟に送り込んだのだ。
「たくさんの小部屋、ベッド、ガラスの瓶が詰まった棚。……こりゃ病院だな」
「そう、ですね」
 ニールの隣を歩いていた青年は辛気臭い場所だな、と廃墟を見回して溜息を吐く。
 かなり昔に使われなくなったのだろう、壁はヒビだらけで、腐った木の床には穴がそこかしこに開いていた。
「落ちるなよ?」
「大丈夫です」
 青年にそう答え、ニールは鞄から杖を取り出して〈変身魔術〉の術式を構成する。するとニールの姿は淡い金色の毛並みをした猫に変わった。
「ボクにはコレがありますから……ぅわっ!?」
「成程、これなら持ち歩けるな」
 猫の姿になったニールを小脇に抱え、青年は軋む床を踏んで慎重に歩を進める。
「いいい、いくらエドマンド君でも怒りますよ! 持ち歩くだなんて、ボクはハンドバッグか何かですか!」
「どちらかというと財布かな」
「財布」
「失くしたら困るってな♪」
 けらけらと笑いながら言うエドマンドとは対照にニールは言葉に詰まってしまう。
「っ……い、今は仕事中です、慎んで下さいっ」
「わかったわかった、この話はまた今度な~」
 もう少し気の利いた返事ができればいいのだが、と思いつつぶっきらぼうに返してしまった。それでもエドマンドはにこやかにニールに笑いかける。

 それらしい鏡を探して1階を捜索するも、あるのは普通の鏡のみでマクガフィンは一向に見つからない。
「んー、この辺りはハズレだなー、報告するかぁ」
「ならその間にボクは二階を探してきます」
 するりとエドマンドの腕から抜け出し、ニールは階段の方に向かって走り出した。
「ニール? 1人で行くのは……って早いな!」
「危ないと思ったら戻りますからー!」

 二階を歩きながら、ニールは鏡を探す。真実の姿を映す鏡なんてできれば見たくはない。いや、見せたくないといった方が正しいかもしれない。
「嘘を暴く、か」
 ニールには人に知られたくない過去があった。その鏡が秘密すらも暴いてしまう代物だとしたら。そう思うと寒気がした。
「だれかが二階に上がってくる前に見つけない……と」
 ある部屋の前を通り過ぎようとしたニールの動きが止まる。

 猫の姿をしているはずの彼の姿を『人間の姿として』映している姿見がそこにあった。

「これが、マクガフィン?」
 姿見はニールの質問には答えない。ただ、『人間の姿の』ニールを映し出していた。
「変身を見破る鏡……?それとも……」
 術式を解いて人間の姿に戻り、鏡に手を触れる。
『ボクは嘘つきだ』
「!?」
 突然聞こえてきた声にニールは思わず鏡から手を離した。
『沢山の人を騙してきた』
「鏡から、声が……!?」
『友人、幼馴染、果てには恋人まで騙して』
 鏡の中のニールが涙を流す。
『ボクは誰も愛せない、なのに口では大切にしてるなんて、大好きだなんて嘘を並べて』
「っ……やめろっ……」
『1人になりたくないから嘘を吐く。1人になるのが怖いから。でもこんな自分を知られたら嫌われてしまうから、また嘘を吐いて』
 歪んでいるね、と鏡の中でニールは笑う。それと対照的にニールは青ざめていく。
「やめ、ろ……!」
『ボクは誰も信じてなんていないんだ、外面良く取り繕ってないとみんな離れていってしまうって、そう思ってる』
「違う……違う、ボク、は」
 耳を塞いで蹲るニールを追い詰めるようにさらに声が降りかかる。
「―――!」
 ドアの方から声が聞こえた。と、同時に飛んできた大きな布が姿見をすっぽりと覆い隠す。
「ニール!」
「あ、う、えど、さ」
 顔を上げるとエドマンドがそこにいた。
「立てるか?」
 差し出された右手を両手でぎゅっと掴むと、走ってきたせいか普段の彼よりも少し熱くなっていた。
「エドマンド君、あの、今の」
「俺は何も見てない」
 そう優しい声で言うと、エドマンドはニールの頭を優しく撫でた。

 その後マクガフィンを無事輸送担当の職員に引き渡し、『嘘を暴く鏡』の調査は終わりを迎え、調査員たちは本部に帰るために各々箒やバイクに跨る中、顔色の悪いニールを1人で帰らせるのはまずいと言い出したエドマンドは地図を見ながら駅を目指していた。
「怪我がなくて良かったよ」
「……ハイ、あの、ありがとうございます」
「あの鏡のせいで病院の経営がうまくいかなくなったんだってな」
「それは、気の毒でしたね」
「汽車の時間合うといいな」
「……そうですね」
「ニール?」
「はい……」
 何を言っても暗い顔をしたままのニールに、エドマンドも流石に話を繋げなくなり、双方黙ってしまう。
「あの」
 沈黙に耐えかねて声を掛けようとしたニールの肩にそっと腕が回される。
「俺は居なくなったりしないよ。ずっと隣に居る」
 恥ずかしそうに頬を染めながら今までにない程に優しい声音でエドマンドは囁いた。
「だ、だからそんな暗い顔するなよ?」
「っ……はい」
 ニールが俯いていた顔を上げると、エドマンドは安堵の溜息を吐いた。

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BC財団 調査員 エドマンド・キャンベルさん
お借りしました!
不都合があればパラレルとして扱って下さい。


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