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猫被りと憎まれ口

豆腐屋ふうか
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2017-12-12 19:15:04

スパイに成り代わられif
とりあえずスライディング土下座
色々と捏造しかしてない

 ニール・ハミルトンは毎日のように日記を読んでいた。捨てずに残っているものは全て。読み返す必要があったからだ。
「完璧に演じなければ……」
 ニールの青い瞳がゆらりと揺らぎ、一瞬だけ真紅に染まる。
「私は、いや、ボクは……」
 一度言葉を切り、決意のこもった表情を浮かべる。普段の『ニール・ハミルトン』からは想像もつかないような表情だった。
「ニール・ハミルトンだ」

 シェリダー・クリフォリアは違和感を感じていた。紅茶のレモンやコーヒーのミルクのような、無くても困らないが無いと物足りない物、それが失われてしまったような、そんな感覚に支配されていた。

 オブザーバーから『天照に派遣中の職員の中にトメニアのスパイが居る』という通達があった。職員たちに動揺が走る中、シェリダーは冷静だった。
 違和感の正体に気がついたからだ。おそらくは自分の関係者の中の誰かがそのスパイとやらと入れ替わったのだろう、そう考えると合点が行くからだ。

 通達があってもニールは心の底では冷静だった。ただ、『ニール・ハミルトン』を演じる上では動揺している振りをすべきだと、動揺している演技をした。

 そんな二人に決定的な出来事が起こった。

 ホテルの廊下で二人が出会い頭に衝突したのだ。

 ニールは直ぐに衝突した人間と『ニール・ハミルトン』の日記の記述を照らし合わせる。
 眉間に寄った皺、気難しい雰囲気、そして何よりも特徴的な結い方をした長髪。彼は『ニール・ハミルトン』が唯一苦手としている相手であるとすぐに分かった。
「げ」
「『げ』とはご挨拶だな、ニール・ハミルトン」
 日記の中で彼についての記述はあまり多くはなかった。しかし少ない記述の中でもありありと『彼とはウマが合わない』ということが伝わってきた。
 それだけでも演技はできる。
「お怪我はありませんか、シェリダー・クリフォリア」
「調査員の風上にも置けんな、周囲に気を配れ」
「……そうですね、以後気をつけます」

 違和感があった。あのニール・ハミルトンが自分の前で言い訳をしなかった事に。
 自分以外の人間に対しては強く出ない癖にシェリダーに対しては人並み、いやそれ以上に反発する彼にしては珍しい事だった。
「……やけに素直だな。猫を被る相手を間違えているんじゃないか?」
「猫被りだって……?」
 ニールがシェリダーを睨みつける。
 が、少し待ってもシェリダーの想定した言葉は出てこなかった。
「……時間の無駄だな」
 そう吐き捨て、シェリダーはニールを置いてその場を去る。

 見た目こそニール・ハミルトンその人だったが、彼はニール・ハミルトンであれば知り得た事柄──シェリダーと憎まれ口を叩きあっていたことだ──を知らなかった。
「ハミルトン……お前は一体何者だ?」
 背後を振り返り、そう呟いた。

 まずいことになった。あの言葉に何か意図があったのは明白だった。
「シェリダー・クリフォリア……ッ」
 おそらくは自分が本物でない事に気付かれた。スパイとして告発されるのも時間の問題だろう。
 ニール・ハミルトンの出自や人となりについてあらゆる物を調べ尽くした筈だ、それなのに知らない事があるなど信じられなかった。
「クソ、ここまでは上手くいっていたのに……あの研究員、一体何を知っているというんだ……」
 とにかく、告発される前に口を封じるしかないとニールは荷物の底からナイフを取り出した。

 ニールはシェリダーが一人きりになる時を狙い声を掛ける。どうせ殺す相手なのだ、何も取り繕う必要は無い。
「クリフォリア、少し良いですか」
「話があるなら聞こう……だが武器は置け」
 向こうも何か感じていたのか、先手を打たれる。
「武器……なんの事ですか」
「あらかた告発を恐れての口封じだろう?」
「……ボクが何を恐れるというんです? 告発? 馬鹿馬鹿しい」
 ニールに背を向けたまま、シェリダーは深く溜息を吐く。
「……貴様の演技はほぼ完璧だった。恐らくは大勢だまくらかせて居るのだろうな」
「……自分の目は誤魔化せないとでも?」
「違うな、貴様は一つだけ知らないことがあった。それだけだ」
 知らなかった、と聞いてニールは奥歯を噛み締める。何故だ、全て調べたはずだ。そんな感情が見て取れた。
「全くあの猫被りには呆れ果てる。まさかスパイまで騙そうとはな」
「何……!?」
「恐らくは俺を嫌っている……いや、苦手としているという記述だけだったのだろうな、奴の残した俺の情報は」
 シェリダーは振り返り、刺すような視線をニール、いや、『ニール・ハミルトンに化けたスパイ』に向ける。
「あの時貴様が言うべきだった言葉は『黙れ、この拗らせコミュ障野郎』だ」
「そんな記述どこにも……っ」
「無かっただろうな」
 吐き捨てるように言い、シェリダーはスパイに一歩近づき懐から拳銃を取り出しスパイの額に押し付ける。
「……っ」
「貴様がハミルトンでないのならただの敵だ、安心して死ね」
「……私を殺せばこの少年も死ぬ」
 シェリダーの眉間の皺が少し深くなる。
「乏しいな。ハミルトンが死ぬからなんだと言うんだ」
「仲間じゃないのか……?」
「足を引っ張る仲間ならば切り捨てる。相手が悪かったな」
 引き金に指を掛ける。
「外すことを震えて祈れ」
 無慈悲に、無感情に、引き金が引かれた。

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BC財団 研究員 シェリダー・クリフォリアさん
お借り致しました!不都合があればパラレルとして扱って下さい
というかもう捏造多すぎてパラレルやろこれ…


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豆腐屋ふうか @fuka_tofu
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