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君が大事だから

豆腐屋ふうか
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2017-12-16 23:08:59

BLあり注意!
喧嘩してほしかった

「――――――――」
 ボクがその言葉を放つと目の前に座っていた恋人はむっとした表情になる。
「……今日は帰る」
 彼のあんな顔を見たのは初めてだった。本気で怒っている。そう確信できる。
 彼は乱暴に立ち上がり、テーブルに5ポンド札を叩きつけて喫茶店を出て行ってしまった。

 深く溜息を吐き、テーブルに突っ伏す。どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
「君に生きていてほしいって、そう思うことは悪いことですか……?」
 答えは返ってこない。
 この5ポンドはあとで返そう。そう考えて5ポンド札を鞄に仕舞う。

 喫茶店からの帰り道、包帯を巻かれた腕を見つめていた。マクガフィン調査の時にできた傷だ。敵対したマクガフィンによってかなり大きく切り裂かれたのだが幸い迅速な処置が行われたため目立つ傷は残らないと言われた。のだが、この傷の原因が『彼を庇ったこと』であるのが問題だった。
 どうして庇ったりした、と何度も言われたし、自分を大事にしろ、とも言われた。
 どうしてと言われても彼に怪我をしてほしくないだけだし、自分を大事になんてできていたらあんなことはしていない。あまりにお互いが譲らないものだからここ数日かなり険悪な雰囲気だった。
 きっと顔を合わせるたびにピリピリした空気になるストレスが溜まっていたのだろう。だからあんなことを言ってしまったんだ。

――――ボクは君がいなくなったら生きていけないから。君はボク1人くらいいなくなっても大丈夫でしょう?

 今思うと酷い事を言ってしまった。と、思う。それに、せめてもう少し言い方を考えるべきだった。
「ウルムに……相談……」
 どうすれば仲直りできるか誰かに相談したい。そう考えると真っ先に幼馴染の顔が浮かんでくる。いや、ダメだ。幼馴染に要らない心配をかけるわけにはいかないし、そもそも彼もこういう考え方自体を嫌いそうだ。
「となると、ロイさん……ああ、だめだ」
 親友と恋人が同居人であることを忘れるところだった。相談に駆け込んだところで鉢合わせて気まずくなることは火を見るよりも明らかだった。
 ボクは溜息を一つ吐き、もう一人思いついた人物のところに行くことにした。

「で、俺のとこに来たって?」
「ハイ」
 仕事の相棒であるアンサンセさんは休憩室に現れたボクの顔を見てやれやれと溜息を吐く。
「こういうの苦手なんだよ」
「そこを何とか、なんとか……」
「ったくもう……にしても仲直りねぇ……」
 昼食のサンドイッチを齧りながら目の前の彼は困ったように唸る。
「俺も相談に乗りたい気持ちは山々だけどさ、流石に話を聞く限りはもう謝れとしか言えないんだよな」
「ですよねー……」
「これ以上こじれる前に行った方がいいぜ、エドマンドのとこ」
「でも、どんな顔して会いに行けばいいか――痛ぁっ!」
 デコピンされた。
「このまま放置してみろ、一生後悔するぞ?」
「……うう」
 何故後悔するかとは言われなかったがこの一言はかなり効いた。
「一生、ですか」
「俺も一生しんどい思いをする。主に胃が」
 アンサンセさんが遠い目をする。ああ、そういえばこの人も彼の友人だっけ。それも古い友人で――――そう考えたところで休憩室のドアが開く。
 嫌な予感に思わず呪文を唱え、猫になってアンサンセさんの背中に身を隠した。あまりにも慌てていたため鞄を落としたままにしてしまったのだが。
「アンサンセ、あいつ来てないか」
 予感はもちろん当たっていたようで、入ってきたのは先程まで話に上がっていたエドマンド君だった。
(オイ、謝んなくていいのかよ?)
(じじじ、条件反射で……なんとかしてください~~っ)
(無理言うなよ……)
 エドマンド君は小声で話すボクらと床に落としてしまった鞄を交互に見て、アンサンセさん(とボク)が座っているソファーの方につかつかと歩いてくる。
 多分、いや確実に、すごく怒っている。
「居るんだな?」
「いや、その、まだ此処には」
 アンサンセさんが何とかごまかそうとしてくれるがエドマンド君は足元に落ちていた鞄を拾い上げてアンサンセさんに突きつける。
「い、る、ん、だ、な?」
「いる、すごくいる!! 俺の後ろに!」
 エドマンド君の迫力に気圧されたか、酷くあっさりと売られてしまった。自ら変身を解くこともできない狭い場所に突っ込んだボクはあっけなく捕まってしまう。
「借りてく」
 不機嫌そうにそう言って、彼は鞄とボクを持ったまま部屋を出て行った。

 エドマンド君はボクを連れてしばらく歩く。この姿で小脇に抱えられるのは何度目だろうか、そんな暢気なことを考えていないと沈黙に押しつぶされてしまいそうだった。
「ニール」
「ひゃいっ!」
 突然声を掛けられ思わずびくりとする。
「なんであんなこと言ったの」
 悲しそうな、怒っているような、そんな声で。
「俺を何だと思ってるの」
 一度も見たことのない表情をして。
「……本当に、居なくなっても大丈夫なんて思ってないよな?」
 初めて見る彼の泣きそうな顔に、ああ、ボクはとんでもないことをしでかしたんだなと、そんな気がして。
「ごめん、なさ、い」
 絞り出すように言葉を紡ぐと、その言葉につられるように目からはボロボロと涙が零れる。泣きたいのは向こうの方だなんてわかっているのに、涙が溢れて止まらなかった。
「俺もニールが居なくなったら嫌だよ」
 そう言ったきり、彼はボクの家に着くまでまた黙ってしまった。

―――――――――――――――――――――――

BC財団 調査員 エドマンド・キャンベルさん
BC財団 研究員 アンサンセ・デービッドさん

名前だけ
BC財団 研究員 ウルム=フォーダムさん
BC財団 警備員 ロイ・エンフィールドさん

お借りいたしました!不都合があればパラレルとして扱ってください。


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豆腐屋ふうか @fuka_tofu
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