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恋とはなんてものかしら!

原稿レゴ🐳(7/12)
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2017-12-23 19:00:22

「恋とはどんなものかしら?」の続き。パラレルとは言わせない!!!!!


「恋とはなんてものかしら!」

——恋とは人を変えるものだ。
誰かがそんなこと言っていたな、とウルム=フォーダムは先程終了したマクガフィンの解析資料を持って報告しに廊下を1人で歩く。
最近「恋」と名付けざるを得なかった感情についてはまだ誰にも話してないし、バレていない自覚だってある。この複雑怪奇な感情をウルムは自分で整理はできていないが誰かに伝える気も、彼にはない。
ウルムは解析で寝不足の目をこすり、報告が終わったら部屋で寝ようとあくびを一つこぼしながら廊下をコツコツという足音とともに歩く。窓の外は暖かい日が差して、のどかだというのに、なんだか財団の建物の入り口が、騒がしい気がして、ひょいと窓から顔を覗かせた。

「……あの集まり方は、誰か調査でケガでもしたのカナ……?」

窓から下を見下ろしながら、人集りを静かに見ていた。今日は何のマクガフィンの調査だといっていただろう。そんな危険な調査があっただろうか、メンバーは誰だっけ、なんて正しく外側から眺める体制だったが、人集りから聞こえた声に、ウルムはハッと傍観の姿勢を崩された。

「ローマンさん!しっかりしてください!」

声の主は知らない。多分女性調査員だ。それはウルムにとってどうでもいいのだ。
怪我をしたのは、彼なんだろうか。面倒見が良くて、自分を平凡だとよくいっている彼は人をかばって負傷することは確かに多い。嫌な予感がして、ウルムは資料も持ったままに、人だかりではなく、医務室に走った。負傷したのであれば、彼が運ばれるのはここだからだ。
医務室に着くと、そこも既に忙しない状態になっていて、医療班でもないウルムは門前払いだった。でも、床に散った赤と、彼の緩やかなウェーブがかかったヴァニラ色の髪は、ちらりと見えた。嫌な予感がする。こういう時の自分の予感は当たるのを、ウルムは一番自分でわかっていた。

医務室の前もバタバタと人がごった返しているのを、少し離れた角に座り込みながら眺めていると、不意に上から聞きなれた声がかかった。

「ウルム……? 何してるんですか、こんなところで……顔色も、悪いですけど。」
「……ニール……。ねえ、今回は、何があって……ロマンクンがケガしたの……?」

幼馴染も様子を見にきたのかもしれない。その途中で床に座り込んでいるウルムを見て声をかけたのだろう。いつもは自信と余裕を持つウルムの憔悴した様子にニールも驚いていた。
座り込んだまま見上げたウルムの様子を見て、あまり危険だと言われていなかったマクガフィンが調査の途中で地域住民を巻き込んで暴走したこと、新人の調査員がその渦中に飛び込んでしまったこと、それを庇ったローマンがマクガフィンの暴発を受けて傷を負って、傷の具合と出血が酷く、現在危うい状態だと医者に言われていると、少しずつ説明してくれた。
時たま彼が大怪我をするときはいつもそうだ。自分のためじゃなく、人をかばって怪我をする。ウルム本人には確実にできないことで、なんでそんなことをするのかと興味を持ったことがローマンを気にし始めたきっかけでもあった気がする。
だからといって彼が怪我をした時に冷静でいられるほどの精神を持ってもいないのだと、その状況に陥ってから知った。誰かが怪我をしたからと言って、こんなに不安に駆られたことがあったか、胸がざわつくことはあったかと感情の理由もわからずに、頭を抱えた。

「……教えてくれてアリガト、ニール……。ボク解析結果報告しに行かなきゃいけないの思い出したカラ、行くネ。」

これ以上ここにいたら優しい幼馴染は自分の心配もするだろうと、握りしめてしまったためシワのできた解析資料の紙の存在を思い出したこともあり、壁を支えに立ち上がる。引き止めようとしたニールを制止して、ウルムはまた一人で廊下を歩いて、報告に向かった。





今日はシトシトと冷たい雨が降っている。怪我をしたローマンが運び込まれてから、既に3日経ったが、彼は目を覚ましていない。窓の外で屋根を打つ雨の音を聞きながら、ベッドに広げた資料を眺めていた。M-2965、「北風」M-2966、「太陽」童話のなど分かりやすいものに例えられるのはよくあることだが、どうやらこのマクガフィンは二つでセットだったようだ。3日前に収容されたこのマクガフィンは、現在研究員による解析が進んでいる。ウルムもまた、その解析に携わっている一人だ。そしてこれが、ローマンが三日間ベッドで意識を沈めている、原因。
人目を盗んで研究室から抜け出せたらそっとローマンの病室を覗きに来ているが、彼を見舞いに来る人は多い。財団にいる年数と、世話焼きな人柄だろう。 今は誰もいなかったのをいいことに、持ち出した解析資料を広げながらベッドの隣の椅子に座る。瞳を閉じた彼は、意外に睫毛が長いな、なんて思った。
シトシト、パラパラ
静かな部屋に響く音は雨音と、ウルムがペンを走らせる音、それに時計の音くらいだった。どのくらいウルムが資料を眺めながらペンを走らせていたかはわからないが、身動ぎをして、布が擦れ合うような音がした。
まさか、とウルムは顔を上げる。姿を隠していたエメラルドの瞳を3日ぶりに姿を見えていた。壁にかかった時計を見上げるローマンを見て、意識が戻ってよかった、と同時に無理をしたことへの怒りや、多くの感情が募る。

「三日。三日と十時間だよ。」

自分でも驚くくらい、淡々とした声だった。ああ、いつものつけているアクセントも忘れてしまったと、言葉を吐き捨ててからウルムは思った。
声に少し驚いたように、エメラルドの瞳がこちらを向いた。そしてゆっくりと身を起こすローマンの身体はまだ痛々しく包帯だらけだった。

「……ありがとう。随分、寝坊しちゃったな……。」

三日間声を出さなかった声帯は少し擦れて、声を出しづらそうだった。胸の中で蠢くたくさんの感情を整理しきれずにウルムは深いため息をついて、「本当にネ」とだけまた吐き捨てると、小さくローマンが何か言いたげにして謝るのも聞こえた。
別に、謝まって欲しいわけでもないのだ。ただ次に発する言葉が思いつかずに、沈黙が部屋を支配する。
パラパラ、シトシト、カチコチ……。
手持ち無沙汰にもう一度資料に目を通しても、何も頭に入ってこない。こんなことは、初めてだ。
ウルムはもう一度、深く長いため息をついて、ベッドに上半身を突っ伏した。ローマンが驚いている気配も感じた。

「……助からないかもって言われてた。」

突っ伏したままにポロリと言葉が口からこぼれた。お互いに、表情は見えない。でも多分ローマンは聞いてくれる体勢なんだろう。

「……勘弁してよ、馬鹿じゃないの……。なんで、そんな人をかばって死にかけてるのさ……。」

溢れ始めた言葉は止まらなかった。自分でも何を言っているのかわからないし、相手を困らせるだけだ。

「……確かに、派手にやっちゃってるなぁ。」

ローマンは自分の包帯だらけの身体を見やりながら気の抜けたことを言っている。
畜生、僕は、こんなに余裕も訳もわからなくなっているのに。鼻の奥が、つんとした。泣きそうになっているのか、とどこかで冷静に分析している自分もいた。
「馬鹿」ともう一度言ったら謝りながら、ぎこちなく頭を撫でられた。ああ、まずい。本格的に泣きそうだ。言葉は意思に反して栓を外したかのように溢れていく。

「……居なく、ならないでよ。……君が居なくなるのは、嫌なんだ……。自分でも、驚くくらいに。」

上げた顔は、きっと酷い表情をしている。僕の顔を見た緑の瞳が伏せたから。それでも思考も、そのままに溢れる言葉も、止まらなかった。もう一度ごめんと謝ったローマンの手を握る。その手が暖かいことに、少し安堵するとともに、更に泣きそうになった。

「なんで、なんでだよ……こんなの、知らないし、分からないよ。居なくならないでよ……こんなに不安になるなんて、思わなかったんだ……。」

両手を重ねて握ったローマンの手がウルムの手を握り返す。一層表情を泣きそうに、悲痛に歪めたウルムはまたベッドに顔を伏した。また数秒の沈黙が部屋を包む。きっとほんの1、2秒だが、長い時間のようだった。
そしてその沈黙を破ったのは、ウルムの言葉だった。

「…………僕、君のことが好きなんだよ……。」

溢れた言葉は、本心だった。伝えられないままにローマンが死んでしまったらどうしようかと、三日間詰まったままの本心だった。
顔を伏していても、相手が驚いているのがわかる。何度目かの沈黙が二人を包む。次沈黙を破るのは、ローマンの方だった。

「……え、っと……俺、のこ、とが?」

困惑したというより、ウルムの言葉をうまく理解し切れていないような声だった。伏せた顔を上げた勢いのままに、猫は噛み付くように言った。

「そうだよ! これだけ余裕がなくなるくらい、僕は君のことが好きなんだよ!!」

勢いに任せてもう一度言ってから、その勢いに押されたローマンを見て、冷たい水をひっかけられたように頭が冷えた。

——ああ、そうだ。だってこれは、普通じゃない。

いつか引いた辞書の文言を思い出した。「特定の異性に強く惹かれること」そんなことを忘れていたのかと、ウルムは冷えた頭によぎる自分の思考に小さく頭を振った。
冷えた頭は、口から勝手に言葉をこぼすことをやめてくれたようだ。うまく笑えているかはわからないが、いつもの笑みを口元に貼り付け、少し眉を下げる。

「……ああ、起きたばかりに、変なこと言って、騒がしくして、ゴメンネ。忘れて?」

きっと繕えている。これから先どうしようかは考えていないが、今まで通りとは行かないだろう。彼の前から、今だけでも姿を消せばいい。次に訪れる沈黙に、きっと自分は耐えられないし、優しい彼だからきっと両断するなんてことはないと分かっているが、とにかくローマンが次に発する言葉を聞くのが怖かった。

「……待っ、て。」

部屋から立ち去ろうとするウルムの手が、明らかに引き止めるように抵抗を受けた。包帯を巻いた腕に、こちらを見つめるエメラルドに、足は、もう動かなかった。
力が抜けた腰を、もう一度ベッドの横の椅子に据える。ずるずると項垂れて、手を握られたままに「なんで今引き止めちゃうの」と思わず口内で呟いた。

「……なんで、だろう。分からない、けど……。……いかないで、ウルム……。」

掴まれた手が、なお強く握られた。こちらを見つめていたエメラルドは、言葉とともにうつむいて隠れた。

「……君にそんなこと言われたら、僕は立ち去れやしないよ……。」

項垂れたままローマンの手を握り返す。また「我儘でごめん」とローマンが謝るのが聞こえた。謝って欲しいわけではない。でも彼が引き止めた意図が理解しきれずに混乱した頭を整理しきれていなかった。

「……いいよ、僕は、君に答えを求めているわけじゃないし……困らせたいわけでもないんだ……。だから、どうか悩まないで。」

項垂れた顔を上げ、無理やりに笑みを貼り付けた。きっと苦い表情になっているのだろうが、ローマンも未だうつむいているのできっと、見られていないだろう。

「……うん、困っては、いないよ。……でも、」

小さく言葉を紡ぎ出したローマンが、顔を上げる。次の言葉を聞くのが手が震えそうなほど怖いというのに、こちらを見つめる双眸に、身体が動かせなかった。

「……嬉しかった。」

言葉の意味を理解するのに、時間がかかって、思わず鸚鵡返しすると、ローマンは小さく頷いた。

「……君は、また……期待を持たせるようなこと、……言わないで……!」

せっかく一度冷えた頭が、また煮立つように熱かった。複雑な感情が溢れすぎて、自分の口からどんな言葉が溢れているのかわからないが、自分の頭が都合のいい勘違いをしようとするのが自分で気持ち悪かった。

「……ごめんね、……でも、嬉しかった、んだ。」

おそらく整理できてないのはお互い様だと、自分を見つめるエメラルドを見て悟った。それでも、つい「ずるい」と口からこぼれた。

「……嬉しかった、なんて、ずるい……そんなの、都合のいい勘違い……しそうになる……!」

視線は反らせなかった。自分の表情が歪むのも感じた。こぼれた言葉を聞いたローマンが、ぎこちなく微笑む。

「ごめんね、ずるい大人で……。でも、本当だから。」

頭も、顔も熱い。思考がもう散漫としている。いつもの余裕なんてとっくに消し飛んでしまって、前髪を搔き上げながら頭を抱える。落ち着こうとしても、思案は止まってくれなかった。

「……本当に、君はずるい……。でも、都合がいいように捉えようとする、自分の頭も、本当……どうしようもない……。」

狼狽えて、再び項垂れた頭上から、数秒の沈黙の後、小さな言葉が降りかかった。

「…………いいよ。勘違い、していいよ。」

握られた手は、離されていない。確かな体温と、握られてた力が伝わってくる。ローマンの理解するまでに1度時計の秒針が動く音がカチリと響いた。

「……なっ……に言ってんのロマンくん……!? だって、僕恋愛的に、君のことが好きだって……、こんなの、「普通」じゃないじゃないか……! 冗談じゃ、済まないよ……!?」

「うん、分かってて、言ったんだよ。……それに冗談でこんなこと、俺は言わないよ。」

ローマン・アディントンはこんなところで冗談を言う男ではない。ウルムもそれは分かっている。
顔は熱いし、鼻はツンとするし、視界が歪んだ。ずるい、整理が追いつかないと溢れる言葉をぶつけたら、「整理ができるまで待ってるから、ゆっくりでいいよ。」といつもとは違う優しい瞳で言われる。熱くて脳が溶けそうだった。
吸った息が、冷たく感じる。外は相変わらずシトシトと雨が降っているし、気温自体も低いのかもしれない。流石に病室は空調が効いているので、気温が低いわけはないので、ただウルムの顔が熱くなっているからだろう。

「……勘違い、ついでに言うけど、もし僕が付き合ってほしい……とか、言ったら、どうするの……?」

ローマンの双眸を少し見上げるように、赤い顔のまま伺った。彼は優しい瞳のままに、少しだけ微笑んだ。

「君が、本当の本当に「俺」がいいって言うなら、……俺は「喜んで」って答えるよ。」

声までも、柔らかい声だった。しかしどこまでも人に気を使う彼らしい答えだと思った。それが、少しだけ気に入らなくて、ウルムは丸まっていた背を伸ばした。

「……馬鹿! 僕が好きなのはロマン君なんだから、ロマン君じゃないと意味がないんだよ……!!」

少し乗り出すように言ったウルムの言葉を聞いて、ローマンはふわりと微笑んだ。柔らかい雰囲気の男ではあるが、初めて見る柔らかい笑みだった。

「……そっか、ありがと。好きだなんて、初めて言われた。」

ふわりと頬を染めて微笑むローマンに、さっきまでの発言が照れくさくなって、お礼を言いがらウルムも照れ隠しにまだほんのりと赤い顔を綻ばせた。

「……それはなんだか意外、だネ?」

彼の言葉は素直に意外だった。今まで財団内で恋人を作っていた印象はあったし、どちらかといえば彼から告白した、と言う様子ではなかった。もともと彼は背も高いし、世話焼きで優しいから女性人気が低いことはないだろうと思っていたのだが。

「……でも、それはそれで、嬉しい、カモ。」

少しうつむいて隠した表情は綻んでいた。いつものウルムの表情より、幼い印象があるがおそらくいつもが突っぱねているのだろう。

「嬉しい? ……ってて、」

首を傾げたローマンが、腹部の包帯の上を抑える。顔色も悪い。
起きてから長話をしたし、無理をさせてしまった。

「大丈夫かい……? ゴメンネ、騒がしくしたし、無理をさせてしまった。今、先生を呼んでくるネ。」

ウルムはそう言って今度こそベッドの横の椅子を立って部屋を出て行こうとすると、もう一度袖が引っ張られた。

「ウルムも、戻ってきて、くれる?」

珍しく見上げる側になったローマンが小さく言う。

「キミが望むなら、ボクも戻ってくるヨ。」

そう言って安心したように袖から離れた手を少し名残惜しく思いながら、ウルムは病室から出た。
廊下は沈黙と外の雨の音が響いている。その中に、珍しく急いだヒールが床を叩く音が、響いていた。






恋とは人を変えるものかしら!





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豆腐屋ふうかさん宅 ニール・ハミルトンくん
さらねずみさん宅 ローマン・アディントンさん
お借りしました。


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