ここにいるのに、居ない

@fuka_tofu
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2017-12-30 02:49:48

幽霊になっちゃったぜ!

 扉が閉まった。

 痛みも苦しみも無く、ただ目の前が真っ暗になる。

 それからふっと体が軽くなる。

 視界が開けていく。足元には箱が。

 箱には『私はスパイではありません』の文字。

 仲間に無駄な一手を打たせてしまったことへの罪悪感と、もう誰にも投票しなくてもいいという安堵が混じり合い、複雑な気分だ。

 壁に手を触れようとすると何の抵抗もなく壁に手が埋まる。いや、すり抜けているのか。

 これ幸いと誰かが扉を開ける前に扉をすり抜けて外に出る。

──君の悲しむ顔は出来れば見たくない。

 この姿も悪くないかも、なんて事を考えながらふわふわと移動する。ぶつからないとわかってはいるものの人とすれ違うと自然と体が避けてしまう。

 あてもなく彷徨っていると、見慣れたシルエットが2つ。
 まだ幼い子供のような見た目の癖毛の女性と、整った顔立ちのふくよかな男性だった。2人ともあまり顔色は良くない。この2日間で一緒に働いてきた仲間に起こった事を考えて怯えているのだろうか。
『エリファレット君、メリーさん、ボクはここに──』
 ふくよかな男性の背中をポンと叩こうとするがその手はするりと彼をすり抜ける。
『まあ、そうだよね……。悲しいなあ。大丈夫だよって伝えたいのに』
 悲しくても、涙は出ない。声を掛けても届かない。触れたくても触れられない。

『死ぬのって、こんなにも孤独なのか』

 それから、また彷徨う。
『透明人間にでもなったみたいだ』
 誰にも見てもらえない。誰にも声を聞いてもらえない。誰にも触れられない。
『ボクはここにいるのにな』
 誰にも届かない声でぽつりと呟く。まるで世界に1人だけ取り残されたような、そんな気がする。
『見えないから仕方ないんだけどさ』
 それでも寂しくなってしまう。どれだけ名前を呼んでも気付かれることはないというのに、何度も何度も声を掛けてしまう。

『ねえウルム、ウルム? こっちを見て下さい。話したい事沢山あるんですよ。怒ったりしてないから、お願いだから。……お願い、ボクを見て……』
 幼馴染の背中に必死で声をかける。勿論彼は振り向く事はない。背中に手を伸ばそうとも、無情にもその手は彼の背中をすり抜ける。

『ロイさん、何でそんな辛そうな顔してるんですか。ボクはここに居ますから。あんな箱がボクなわけないじゃないですか。ねぇ、ロイさん』
 悔しそうに審判の部屋を睨んでいた親友の目の前に立って呼びかけても、声が届く事はない。

『アンサンセ、さん』
 相棒すら、自分を認識してくれない。

 幽霊はひどく孤独で、寂しい。

『帰りたい、なぁ』

 多分、いやきっと、元に戻る方法はある。確証は無くても、そう信じるしか無い。

 折れそうな心を何とか支え、前を向いた。

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BC財団 研究員 メリー・メリーさん
BC財団 調査員 エリファレット・マンスフィールド・モーガンさん
BC財団 研究員 ウルム=フォーダムさん
BC財団 警備員 ロイ・エンフィールドさん
BC財団 研究員 アンサンセ・デービッドさん
お借りいたしました!不都合があればパラレルとして扱ってください。


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