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悪魔集中掃討作戦 クレイン02

新矢 晋@企画用
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2018-01-20 11:19:34

ヨハネくん( @bbqch )、アンセルムさん( @Kuchi_nashi_ )と!




 フロレンツィア南東。突如として形成されつつある悪魔のコロニー付近に、聖職者の先行部隊の姿があった。
「そろそろ警戒区域だ、注意を怠るな……」
 リーダー格らしき聖職者がそう促したが、ふとその足が止まる。ふわりと甘い花に似た香りがその鼻先を掠めた。
「……帰ろう」
 ぽつりと呟き踵を返したその男を周囲の聖職者が制止しようとしたが、その聖職者たちも次々にぼんやりと目を曇らせ踵を返し始める。
 くすくすと誰かが笑う声がした。


「精神を操る?」
「どうもそうらしい。先行部隊が完全に戦意を失って使い物にならなくなった」
 キャンプ地でその情報を得たクレインは、怪訝そうに眉を寄せながら相手を見た。クレインとはそれなりに長い付き合いのその男は肩を竦め、大儀そうに溜め息を吐く。
「浄化部隊が邪気祓いにあたっているが、復帰までは少し時間がかかりそうだ。……第二部隊はまだ動かないのか?」
「あいつが来たらな」
 手持ち無沙汰げに襟元をつまんで弄りながら答えたクレインは、ふと何かに気付いたように黙り込み遠くを見やる。そして少しの間を空けたあと、相手に目配せをした。
「来たみたいだ。行ってくる」
 ……クレインがキャンプ地の外れへ向かうと、ちょうど一人の青年が馬から降りたところだった。長い銀髪が乱れているのを片手で撫で付けてから振り返った青年は、クレインの姿を見て少し困ったように眉を下げた。
 ヨハネ・フライシャー。北地区に所属する神父である。クレインとの付き合いは長く、クレインは彼のことを弟のように思いつつも同志として信頼しており、今回の作戦において誘いの手紙を出していたのだ。
「先輩、遅くなりました。すみません」
「いや、北からわざわざ来させてこちらこそすまない。今回はアスールが別動隊だから、気心の知れた人手が足りなくてな」
 クレインはそれからどこか警戒するような、怯えるのにも似た様子で周囲に目を配る。
「……それで、天使様は……」
「ここにいるぞ」
 不意に響いた声。クレインが勢い良く上げた視線の先にはうつくしい生き物がいた。
 艶やかな長い髪。豪奢な衣装。優雅に空中へ腰掛けているその男の眼差しからは生き物らしい濁りが感じられない。鷹揚に微笑まれて我に返ったクレインは慌てて跪く。
「初めてお目にかかります、アンセルム様。私はクレイン・オールドマンと申します。この度は我らにご助力頂けるとのこと、そのお慈悲に感謝致します」
「うむ、そこまで畏まらずとも良い。顔を上げろ」
 聖アンセルム、希望の天使。輝く容姿は単に美しいというよりも、どこかおそれを感じさせるものであった。
「絶望せず、希望を失わず進む者こそ我の愛し子だ。助けを与えるのは当然のこと」
「痛み入ります」
 クレインは頭を垂れ祈りの言葉を捧げると、アンセルムの足元へ口付けた。


 ――見ろ、第二部隊だ。
 ――あの規模の部隊で加護つきが二人だぞ……。
 ひそひそと囁き交わしていた聖職者は、ヨハネの頭上でふわりと羽ばたいたアンセルムを見て口をつぐんだ。
 ヨハネもクレインも当然アンセルムもまったく周囲のざわめきを気にする風もなく、他の隊員と共に淡々と打ち合わせを始める。第二遊撃部隊はその名の通り遊撃を主な役割としており、動きはほとんど隊長であるクレインに一任されている。今回は元からの隊員だけではなく緊急召集された聖職者も何人か配属されていたが、今のところはこれといって問題は起こっていないようだった。
「……北部からの接触で先行部隊が壊滅している、別の方角から様子を見てみよう」
 そう提案したクレインに異を唱える者はおらず、彼らはまずはコロニー西部へ向かうこととなった。ただ、クレイン他数名はその付近にある丘へと向かう。その「目」で確認できることがないか試しに行くのだ。
 丘を登る道すがら、クレインはヨハネを呼び寄せると今回の作戦についての指示を一言二言した。それから少し黙り込み、アンセルムから距離を取るようにして――内緒話をするように――ヨハネに顔を近付け囁いた。
「細かいことはお前の裁量に任せるが……一点だけ。今回は絶対に倒れるな。無茶は大いに結構だが、命を担保にするのはやめておけ」
 そのクレインの台詞に、ヨハネは怪訝そうに眉を寄せた。……クレイン・オールドマンという男は身内を大事にする人間ではあるが、戦士の生き死にに口出しするほど過保護ではない。いまいち納得出来ていない様子のヨハネに更に重ねて言い聞かせる声は低く穏やかだが、どこか気鬱げである。
「今のお前は皆に『加護つき』として意識されている。お前が落ちれば、『天使の加護があっても悪魔には勝てないのか』となって士気にかかわる」
「それは先輩も同じでは」
 ヨハネの指摘に、クレインは朱色に染まった目を瞬かせてから困ったように笑った。
「勿論俺も気を付ける。返さないといけないものもあるしな」
 返さないといけないものについてヨハネが訊ねる前に、一行は丘の頂上へと到達した。姿勢を低くし、なるべく遮蔽をとって身を隠しながら眼下を見下ろす。
「……なんだあれは」
 低く呟いたクレインの視線の先、コロニー周辺には紙にインクを滴らせたような紫がかった黒色の染みがいくつも発生していた。まだ距離はあるが、クレインの――天使の――目は、その染みがどこか禍々しい霧を発生させていることを視認しており、それが恐らくは沼のようなものであろうことも確認出来た。
「悪魔の仕業でしょうか」
「恐らくは。……本来なら偵察部隊に任せるべきだが時間も人手も足りない、行くぞ」
「はい」
 一行は慎重にコロニーへ向かって進み始めた……。


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新矢 晋@企画用 @sin_niya_b
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