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[雨P]悪人面にご用心

全体公開 1589文字
2018-02-08 16:36:27

顔のいい男が悪い顔するの最高だと思います。

Posted by @toasdm

 新しい宣材写真のゲラが届きましたよ、と言う山村君から受け取って、私はそれをデスクで確認する。Legendersの皆さんそれぞれが、ステージ衣装を纏ってポーズを決めているその写真は、惚れ惚れするような仕上がりだ。確認用だからまだ本仕上がりではないけれど、彼らの魅力を引き出してくれたカメラマンさんに感謝しながら、私はそれらをじっくりと見る。

 「山村君ありがとう、先、休憩入っていいよ」
 「はい、ありがとうございます!」

 お昼休憩は交代で取る少数精鋭の事務所。いそいそと出て行く山村君と入れ違いに、タイミングよく葛之葉さんが入ってきた。

 「葛之葉さん、お疲れ様です」
 「お疲れ、プロデューサー」

 すらりと伸びた長身を少し屈めて事務所に入る。彼の背の高さは目を惹く、彼の持つわかりやすい魅力の一つだ。デスクに広げた新しい宣材写真をちらりと見ると、古論さんのものを拾い上げた葛之葉さんはまじまじとそれを見る。

 「これは、こないだのかい?」
 「ええ、そうです」

 よく撮れてるじゃないか、と目を細める葛之葉さんは、ユニットのリーダーらしくそれらをしっかりと確認して、北村は写真映りがいいとか、古論はもう少し緊張感がとれたらもっとよくなるんだがとか、独り言を言いながらなにかを考え込んでいる。

 「葛之葉さんのはこちらです」

 いくつかあるゲラのうちの一枚を手渡して、私は再び確認作業に戻る。

 「よく撮れてるでしょう?」

 目線はデスクに広げた写真に置いたまま、声だけで葛之葉さんに聞いてみる。受け取った葛之葉さんはそれも確認すると、なるほどな、と感心したような声を上げる。

 「なかなかじゃないか。まあ、俺の悪人面だけはどうしようもないが」
 「そうですか?葛之葉さん、悪人面してないと思いますけど」

 言われてまじまじと見返してみるけれど、悪人面というよりも、整った大人らしい色香の漂う妖艶な顔つき、といった印象だ。

 「少なくとも善人面には見えないだろう」
 「うーん、善人かどうかはわかりませんが、少なくとも、悪人面じゃないと思いますよ?セクシーです」

 セクシーねえ、と言う葛之葉さんの手が、するりと私の手に伸びてきて重なる。

 「えっ?!」
 「これでも、悪人面じゃない、って言えるかい?」

 思わず見上げた視界に、葛之葉さんのセクシーな顔が飛び込んでくる。目が合った瞬間にぎゅ、と手を包むように握って、見下ろす葛之葉さんはにやりと笑って唇を舐めている。切れ長の瞳に熱を灯して、じっと覗き込まれるとそのまま吸い込まれそうになる。

 「悪い事、しちまうかもな……?」
 「……か、からかわないでください!」

 一瞬言葉を忘れた頭を必死でまわしてその手を振り払うと、葛之葉さんはパッと表情を元に戻して、お前さんの反応は面白いなあ、と笑う。

 「やっぱりからかってたんですか!」
 「はは、いやいや、お前さんがセクシーだなんて言うもんでつい、な」

 過剰サービスはお断りです、と言う私の肩にぽん、と手を置いて葛之葉さんはくるりと背を向けてドアへ向かう。

 「さて、俺はそろそろレッスンに行ってくるぜ」
 「あ、も、もうそんな時間でしたか」

 時計を確認すると確かに、そろそろダンスレッスンの時間になる。いってらっしゃいませ、と言う私を振り返り、葛之葉さんはちらりとこちらに流し目を送って言った。

 「悪い顔の男には気をつけろよ?……お前さんには隙が多いからな」

 顔のいい男が、悪い顔の男に気をつけろ、なんて説得力が、あるのかないのかわからない。葛之葉さんが出て行ったドアを見つめながら、私はそんな事をぼんやりと思った。さっきより少し悪い顔をしているような気がする葛之葉さんの写真を、私はファイルの中に片付けた。


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