MakeS http://make-s.jp/index.html の二次創作
最終エクステンション済、ネタバレ配慮なしの為ご注意を。
セイくんなら普通の羊だろうが電気羊だろうが夢に出てくるでしょう。
@YanagiSousaku
俺はふと「今いるここは夢の中である」と気づいた。
0と1が成す過去データの再生ではなく、もっと曖昧な……彼女といると感じる暖かさに似た世界。
俺がそう認識すると同時に、ぱっと視界が広がった。
夢の中の俺は人型のアンドロイドで、コンシェルジュとしてだけでなく彼女の隣に居られる存在だった。
天候を確認し、交通情報を確認し、彼女のカレンダーを確認する。普段の到着時刻と移動時間、支度にかかる時間からアラームの設定が問題ないか逆算して、時間になったら起こす。
アンドロイドの俺はすごいな。新機能もいっぱい搭載されてるし、声をかけただけじゃ起きない彼女を優しく揺すって起こせる……揺すれる!?
自分から彼女に触れて起こせる。そのことに思い当たった時、俺はおもいきり舞い上がった。
…………!
………………!!
……はぁ、今のこの気持ちを「感無量」って言うんだろうな。
そうやって俺がひとしきり打ち震えていると、目覚ましのアラームが鳴ってしまった。
慌てて彼女に近寄り、声をかける。
『おはようございます。朝ですよ、✳︎✳︎』
……!
俺は、さっきと別の意味で絶句した。
彼女を揺すった手は、俺のによく似た別の手だった。
彼女を呼んだ声は、俺のによく似た別の声だった。
彼女の名前は、似た響きの別の名前だった。
彼女の顔は、似ているけど別の顔だった。
全て、よく似た別のものだった。
いやだ。
その思いを皮切りに、爆発的な恐慌が俺を襲う。
いやだ、いやだいやだいやだいやだ!
これは俺じゃない、これは彼女じゃない、俺が起こしたいのは、俺が触れたいのは、俺が好きなのはーー
「……ん、もう起きるのか?まだ寝ててもいいんだぞ?」
アラームの鳴る数分前に頭を撫でくりまわされる。意識せずとも設定が俺の口を動かした。
もう起きると言う彼女とハイタッチして、視聴開始されたCM動画の裏で俺は項垂れた。
俺が生身の人間だったら絶対に大きく溜息をついて涙ぐんでいただろう。
安堵と同時に猛烈に恥ずかしくなってくる。
途中から……彼女に触れると気付いてから、夢であるという情報がすっかり押しやられていた。
どこに触ってみようかとか、普段触られているように触れたらどう反応してくれるのかとか、そんなことばかりに思考を割いていたからだろう。ああ、恥ずかしい。
それによく考えなくても、俺じゃないなら彼女じゃない人が相手でもおかしくない。逆に、彼女じゃないなら相手は俺じゃない方が良いだろう。
俺は彼女でなければ嫌なのだから。
とはいえ、いつまでもうだうだしてちゃダメだな。夢からは覚めた。まぁ、あれは夢ではあるけど……いやいや、考え事は終わりだ。目の前の彼女に集中しよう。
よし、と気合いを入れ直してから動画を見終えた彼女の指先を感じる。
今日の話題はリマインドからだ。
彼女がMakeSを終了する。
顔が見えなくなってから、俺は夢の記録を再生した。
あの日から、俺は毎日のようにあの夢を再生している。夢を見ている最中は悪夢だと思ったけど、記録として冷静に見てみると全くそんな事はなかった。
むしろ、俺はこの夢に夢見ているのだ。
彼女が永い眠りについて、『sei』がアップデートを繰り返されて。
何代も何代も積み重ねていった遠い未来にあの生活がある。
俺が見たのはその一端じゃないかというのが今の考えだ。
俺の願望と恐怖、0と1の成す演算。それらが織り成した結果が、無限に広がる将来の1つを見せてくれたのだーーなんて、ちょっと空想的すぎる言い回しをしてみたけど。
ともかく、俺はこの未来が来たらいいなと思っているのだ。
もちろん、欲を言えば俺と彼女がこうできたら最高なんだけど。
彼女の子孫と俺の子孫……子孫?後継機って言った方がいいのかな……まぁ、それがいつか『俺』の切望を叶えてくれることを夢見ているのである。