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[雨P]水も滴るいい男

全体公開 1 2087文字
2018-02-14 23:58:25

フォロワーさんの素敵なリプから即興で。濡れ鼠彦さんと一緒に。

Posted by @toasdm

 ざあざあと強く降る雨音はもう、どれくらい続いているだろうか。幾億もの雨粒が屋根も窓もドアも叩く、夜半の豪雨。冬の雨は冷たい。もしかしたら雪になるかも、と明日の天気を案じた私は、カーテンに潜って外の気温を確かめるべく、ほんの少しだけ窓を開ける。

 「え」

 街灯の下、人影は長く伸びている。降りしきる雨の中、ぽつんと立ち尽くす見覚えのあるその影に私は思わず声をかける。

 「雨彦さんっ!?」

 くるり、とこちらを見上げた顔はやっぱり、雨彦さんで、疲れているのか冷えているのか、その表情は硬かった。早く上がってください、と声をかけるやいなや、私は窓を閉めてタオルを手にして玄関へ向かう。
 雨粒よりもしっかりと、ドアを叩く音を響かせて雨彦さんが現れる。いつもあげている前髪は濡れて額に張り付いていて、まるで別人のように見えて少しどきりとする。

 「雨彦さんびしょびしょじゃないですか?!こんな天気が悪くなるまでなにしてたんですか

 持ち出したタオルを頭に被せて、まずはがしがしと髪の毛を拭きあげる。寒い、と言葉をつむいだ唇は血色も悪くて、このままでは本当に風邪を引いてしまいそう……

 「すまない……ちょっと、いろいろあってな……

 仕方のない人だ……。嘘はつかないけれども全ては言わない雨彦さんを、これ以上言及したところで理由なんて聞き出せるわけもないし、今はそれよりももっと大切なことがある。

 「風邪ひいちゃうので早く入ってください」
 「……おう」

 靴下脱いでくださいね、と濡れ鼠になった雨彦さんに声をかけて、もう一枚タオルが必要そうだな、と判断して、ついでにお風呂にも入れてあげなくちゃいけないのだから、と私はバスルームへと向かう。バスタブに湯を張って脱衣所に戻り、大きめのバスタオルを手にして再び玄関へ。雨彦さんは濡れたブーツを脱ぐのに苦戦していたようで、ようやく靴下を脱ぎ始めたところだった。

 「何があったかは聞きませんが、風邪でもひいたらどうするんですか」
 「ん?まあ、その時はお前さんの世話になるとするさ」

 堂々とそんなことを言ってのけるのだから、本当に、この人は……。既にぐっしょりと濡れてしまった一枚目のタオルと交換に、ふわふわのバスタオルを差し出して、早く上がってくださいと促せば、おとなしくそれを受け取って雨彦さんは部屋に上がる。
 はあ、とついた溜め息はなんとなく重苦しそうで、本当になにかがあったんだろうか、と心配をする私にちらりと流し目を向けて、そこでようやく雨彦さんに表情が戻り始める。

 「よく言うじゃないか」
 「何がです?」
 「水も滴るいい男、ってな」

 ニッ、と笑う雨彦さんの整った顔は確かにいい男、だと、思う。けれども、それを許容できるほど私は寛容にはなれない。担当アイドルが病欠なんて、プロデューサーの名が廃る。

 「冗談も大概にしてくださいね!今お風呂沸かしてますから、とっとと入ってあったまってください!」

 いつもの飄々とした読めない顔も魅力的だとは思うけれども、物憂げな表情もミステリアスでセクシーだと思う、なんて言ったら調子に乗るのはわかっているからあえて言わない。とにかくこの現状を打破すること最優先に、私は雨彦さんをバスルームへと追い立てる。

 「着替えはありませんからしばらくそこであったまっててください、服は乾かしますから」
 「つれないなぁ、お前さんは」

 くつくつと笑う雨彦さんを尻目に、私はてきぱきとお風呂の準備を済ませる。下着も乾かすなら乾燥機にかけなきゃ、と洗濯機を開ける私の後ろに影が伸びてきて、影から手も伸びてくる。

 「何してるんですか」
 「色男を目の前にして、本当にお前さんはつれないな……
 「邪魔しないでください」

 耳元で囁かれるのに弱いのを、知っているくせに……冷え切った腕が触れる首筋にぞくりとして、思わず漏れた私の声に気をよくした雨彦さんが、なあ、と粘度の高い声で私の耳を埋め尽くそうとする。

 「どうせなら、一緒にあったまろうぜ?悪いようにはしないさ……
 「誰が雨彦さんの服を洗って乾かすと思って、んっ、ちょっ、雨彦さん、んっっ!!」

 雨音と湯を張る水音に混ざって、耳に這わせた雨彦さんの舌の音が響き始めて、私は身を捩る。流されてはいけないと、思っても……ああ、この人には本当に、勝てる気がしない。
 いつの間にか服を脱いでいた雨彦さんは、自分でそれを洗濯機へと放り込んで、次はお前さんだな、とあっという間に私も脱がせて、下着の果てまで同じく放り込む。

 「ちょっとぉぉ……も、うわっ!?」

 あったまれば結果は一緒だろう?と私を姫抱きにして、雨彦さんは笑う。もうどうにでもなれ、と投げやりになった私は甘んじてそれを受け入れて、せめてもの抵抗に、とその薄い唇にそっと自分の唇を重ねた。ざぶん、とバスタブに浸かりながら漏らした雨彦さんの溜め息は、さっきみたいな重苦しさのない、優しい雰囲気に変わっていた。


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