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[想P]素直になったら

全体公開 2193文字
2018-02-18 23:49:30

想楽君が免許持ってるかどうかはわかりませんが、持ってないと仮定したお話。想楽君の魅力って、子供じゃないけど大人でもない、っていう部分だと思ってます。

Posted by @toasdm

 歯痒い事ばっかりだなー。もどかしい気持ちを抱えて眺める電車の窓の外、高速道路の渋滞にざまあ見ろ、と心の中で舌を出してみたところで僕はあの渋滞の一部にはまだなれない。年齢的には運転免許を取ることはできるけれども、田舎暮らしをしているっていうわけじゃないからねー。実家に居たときならいざ知らず、今は別に焦って取らなくてもいいかなーと取らずにいた免許があれば、もっとスマートに素早くプロデューサーさんを迎えに行けたのかもしれないのに。
 まあ、あの渋滞に巻き込まれちゃうくらいだったら、電車の方が早いからいいんだけど。負け惜しみのすっぱいブドウはこの際無視しちゃおう。スマートフォンを取り出して時間を確認する。まだ終電までは余裕があるしプロデューサーさんのおうちはちゃんと覚えてる。でも……

 「やっぱり車かなぁ……

 ぽつりと漏れちゃうほんとの気持ちを隠したところで、なんにもならないのはわかっているからね。今日みたいに、酔っ払ったプロデューサーさんを迎えに行く為だけでも、運転できるようになる価値はあると思うんだよねー。お迎え来てー、と連絡のあった最寄り駅のホームに掲げられていた自動車学校の看板をスマートフォンで撮影して、なんとなく満足して僕は改札を出た。

 「あー、想ー楽ぁ、さんっ!」

 やっと来てくれたぁ、と僕に抱きついてくるプロデューサーさんは、ザ・酔っ払いーって感じのできあがりっぷりで、お酒臭い言葉を撒き散らしながら僕の首にぶら下がる。重たいけど嬉しいけど、でもやっぱり重たい。

 「あーもーこれは立派な酔っ払いさんだねー……

 よしよし、って頭を撫でてみたら、へにゃーって音でもしそうなくらいにとろっとろの表情になって、僕を見上げるプロデューサーさんが嬉しそうに言う。

 「想楽さん、好きですー……ふふ」
 「うーん、あんまり嬉しくないなー、酔っ払ってる時に言われてもねー……

 嘘だけど。ほんとは結構嬉しいんだけど。だってさ、酔っ払ってるっていうことは、頭で何かあれこれ考えてる建前じゃなくて、本音ってことなんじゃないかな、って思うからね。人影もまばらな駅で、酔っ払って僕にぶら下がってこんな風に甘えてくるのが、実は本心なんじゃないのかな、って思ったらさ。やっぱりちょっと、嬉しいや。

 「車じゃなくてごめんねー、でもちゃんと、おうちまで送っていくからねー」

 撫でていた頭をぽんぽんして離して、おてて繋ごうねーって子供をあやすみたいに言いながら差し出した僕の手を、はーいと嬉しそうに握って歩き出すプロデューサーさんは、こうやってみると僕より年下に見えるからおもしろいなあ。普段は仕事の鬼!って感じのきりっとしたかっこいい女性なのに、お酒入って上機嫌になると僕より年下みたいに甘えてくる。これが僕だけに向けられたものだったらいいな、なんて都合のいい事を考えながら、最寄り駅までの電車に乗る。
 そこそこ混雑している電車の中は残念ながら座れる場所もなくて、しょうがないからプロデューサーさんをドアの近くにもたれかからせて、ついでだからぎゅっと抱きしめてみた。どうせ誰も気に留めないだろうし、プロデューサーさんも嬉しそうだからね。

 「ねー、プロデューサーさんってもしかして、甘えん坊さんなのー?」
 「んーー……

 半分くらい寝かかってるのかな、うとうとして目を瞑って、僕の肩に頭を預けてきたプロデューサーさんは、しばらく考えてから、わかんない、と笑った。

 「こんな風に誰かに甘えることって、しなかったから、わかんないな……
 「んー?それって、僕が初めて、ってことー?」
 「あーー……ふふふ、そうかもうん、想楽さんが、初めて。おかしいよね、私の方がお姉さんなのに」

 お姉さん、って言い方に、今なんでちょっとときめいちゃったんだろう。年の差なんて気にしたことなかったけど、そういえばプロデューサーさんって、僕よりお姉さんなんだよね。

 「ねーお姉さん、僕の車、乗ってくー?」
 「あはははは、口説かれてるー」

 上機嫌なプロデューサーさんは嬉しそうに僕を見上げて、でも免許持ってないでしょーと笑う。やっぱり誰も見てないからいいかな、と思って、僕はほっぺたに軽くキスをしてから抱きしめて、耳元で言う。

 「取ろっかなー、とは、思ってるよー……こういう時にプロデューサーさんを迎えにいけないのは、やっぱりちょっと、歯痒いしねー」

 口をついて出てきた言葉の素直さに、僕自身がびっくりしてる。それはプロデューサーさんも同じみたいで、きょとんとしてる。僕はもう一回、今度はおでこにキスをして抱きしめてほんとの気持ちを打ち明けてみる。

 「免許取ったらさー、ドライブデートとか、してみたいなー……

 いいなぁ、楽しみにしてる、ってうっとりするプロデューサーさんが本当に嬉しそうで、なんだかやる気が出てきちゃったみたい。ふわふわした気持ちのまま僕は、さっき撮った自動車学校の看板を思い出した。

 今度のおやすみの日にでも、行ってみようかな。腕の中でにこにこしているプロデューサーさんを抱きしめながら、素直になるのも悪くないなーと思って、僕は窓の外の流れる景色をぼんやりと見ていた。渋滞は少し、緩和されてるみたいだった。


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