X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです
Xフォロワー限定公開・リスト限定公開の停止について

[雨P]助手席は特等席

全体公開 1545文字
2018-02-19 12:51:28

葛之葉雨彦ソロライブステージに行きたいです!!
雨彦さんとドライブデートのお話。

Posted by @toasdm

 どうせ街中じゃ目立って落ち着かないだろう、と雨彦が提案した休日の過ごし方に二つ返事で飛びついた彼女は、シートベルトを締めながらにやける口元を隠そうともせずに話しかけた。

 「今日はどこ行くんですか?」
 「ん?そうだな、特にこれといってあてはないが……

 言いながらカーステレオを操作して、雨彦は曲を再生してシフトレバーを操作する。耳によく馴染んだ聞き覚えしかないイントロに、え?と思わず隣を見上げた彼女にウィンクをして、雨彦はかしこまって言う。

 「ようこそ、葛之葉雨彦ソロライブステージへ……今日は一日いっぱい付き合ってもらうぜ?」

 軽快なリズムに合わせてアクセルを踏みハンドルを切り、雨彦は全身で歌い上げる。ユニットの代表曲、新曲、ソロ曲、事務所アイドル総出演の曲。自分のパート以外では極力寄せようとしているのか、途中いくつもの声色を使い分けて歌う雨彦は、狭い車内をあっという間にライブ会場へと変貌させた。手を叩いて喜ぶ助手席の彼女は、サインライトを持ってくるべきだったとかチケット代いくらだろうとか、心底楽しんでいる様子で、その姿に雨彦は満足げな笑みを浮かべて車を走らせ続けた。

 「ではここで三十分間の休憩に入りまーす、ってな」

 立ち寄った見知らぬ街のコンビニの駐車場に車をつけると、雨彦はふぅ、と溜め息をついて車から降りる。彼女もそれについて歩き、コーヒーといくつかの菓子類を購入して二人は車へと戻った。何せ目立つ外見的特徴のある雨彦のことだから、誰に見咎められるかわかったものではない。車の中なら幾分人目も避けられる、と雨彦は申し訳なさそうに買ったばかりのコーヒーを彼女に差し出して言う。

 「すまないな、お前さんとゆっくり落ち着いてデートができればいいんだが……
 「いえ、葛之葉雨彦ソロライブステージを特等席で観賞できるのって、私だけですから」

 お前さんは可愛いことを言うな、と嬉しそうな彼女の頭をくしゃりと撫でて、雨彦はコーヒーに口をつける。最近のコンビニはこだわってるな、と感心したように言うのが面白くてついつい笑ってしまう彼女は、雨彦の横顔に胸を高鳴らせた。この人は、本当に綺麗な顔をしている。何を考えているのかよくわからない飄々としたいつもの顔ももちろん好きだが、こうして自分と二人きりの時に、たまに見せてくれるリラックスしたような素の顔が、彼女はとても好きだ。自分しか知らない、という特権のようなものももちろんあるが、なによりも、穏やかで優しい雨彦らしさが一番ストレートに感じられるその横顔に、彼女はずっと恋をしている。
 そんなに見つめられると穴が開いちまうぜ、とからかうように彼女と目線を合わせて、雨彦はそっと彼女の手を取り、甲に唇を寄せる。優しく触れたその柔らかな温もりに頬を染め、彼女は話題を逸らすように話し始める。

 「でも、本当にあてはないんですね」
 「退屈したかい?」
 「いえ、雨彦さんと一緒なら何をしていても楽しいですし、二人きりってなかなかないから嬉しいですよ?」
 「はは、そうかい……まあ、俺も一緒だ」

 満足げな笑顔が二人分、車内に満ちていく。次のデートはどこにしようか、と話しているこの時間が二人にとってかけがえのないものになっている、その日常が温かくて嬉しい。一緒なら何をしていても楽しい、という二人の気持ちを乗せて、車は再びあてもなく走り出す。

 「さァて、葛之葉雨彦ソロライブステージ第二幕だ、リクエストなら受け付けるぜ?」
 「ふふふ、もう、なんでもいいです!」

 投げやりではないおまかせに、雨彦は本当に嬉しそうに歌い始める。カーステレオからはずっと、耳に馴染んだ歌ばかりが響いていた。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.