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[れじぇ]ふぁんたじー宇宙戦争りぃずなぁ

全体公開 2 5776文字
2018-03-05 20:55:45

リーズナーイベがとってもとってもアレだったのでつい。
続きはちまちま書いていくかもしれません。相変わらずロボはよくわかりません。

Posted by @toasdm

 アラートの音に叩き起こされるのはいつものことだが、今日はそれよりもずっと、違う何かを感じて寒気がする。思考を挟まず勝手に動く手と足は、アラートの点滅する赤と黒の世界を瞼越しに感じつつ、パイロットジャケットに袖を通してブーツを履いている。頭が目覚めるより先に体が目覚めているのだ。硬いベッドから跳ね起きて素早く着替え、ジッパーを上げきってつま先を床にトントンと打ちつけ、ルームハッチのボタンを拳でガン!と叩いて開けるまで、凡そ十秒。シュ、と軽い音を立てて開いたハッチの隙間に身を滑り込ませた雨彦は、艦内後部のドックまで一気に駆け抜ける。嫌な予感は消えるどころか、益々強くなっていく。何もなけりゃいいんだがな、と徐々に目覚める思考の隅で冷や汗をかきながら銜えていたグローブをはめて、袖口のボタンを閉じていく。駆ける雨彦の前方、ドックのハッチが目に入る。装備ブースで待機していたのは同チームの北村想楽だ。

 「北村!」
 「雨彦さん遅ーい」

 HMDモニタを搭載した特殊シールドのヘルメットを投げ寄越し、自分もバイザーを下げながら装備を整えている想楽に悪態をつきながらも雨彦はそれをキャッチする。

 「生憎と年寄りなもんでね」
 「メカニックさんがリフトオフ準備に入るまでって言ってるでしょー」

 暢気な口調で大丈夫か、と他のパイロットにはよく言われるが、雨彦は知っている。想楽が持っている操縦に関する技術とセンスはまさに、天賦の才と言って過言ではない。操縦経験のない機体であってもマニュアルなしに乗りこなし、機体の損傷こそあれども本人が医務室に担ぎこまれるような大事故に巻き込まれるようなこともない。キチキチと機械音を立ててヘルメットとパイロットジャケットを接続すると、雨彦はバイザーを下げてそういや、と言う。

 「そういや北村、古論はどうした」
 「クリスさんはもう乗ってるよー」

 僕もお先にねー、と鉄階段からひらりとドックの床に飛び降り、想楽はムーサの元へと駆け寄っていく。なるほど、古論らしいと苦笑しながら雨彦もそれに続く。三人の機体はそれぞれ離れたハンガーに格納されている。

 「葛之葉さん、いけますよ!」
 「すまないな」

 搭乗ワイヤーのステップに足をかけながらメカニックに手を上げると、ウィンチを巻き上げる音を立てて雨彦の体がコックピットまで運ばれる。軽業師のようにひらりと身を翻した雨彦はシートに着くと、通信モニタをONにする。左に想楽、右にクリス。それぞれのモニタを展開してチームメンバーに声をかける。コックピットが閉じられると、雨彦のヘルメットはモニタと計器、ボタンの淡く輝く光に照らされる。雨彦はヘルメットのセンサーマイクのスイッチを入れて点呼を取った。

 「北村、古論、聞こえるか」
 「感度良好だよー」
 「こちらも問題ありませんよ」

 ハンガーごとリフトに乗せられた振動と重力の傾きに、ふぅ、と短く息を吐きながら雨彦は拭い去りきれない嫌な予感を思い出す。

 「どうしたのですか?雨彦」
 「ん?ああ、いや……なんでもないさ」
 「そういうのやめてよねー」
 「今回の出撃はスクランブルです。何が起こるかわかりませんからね」

 スクランブル――緊急出撃か、と雨彦は昔を思い出して憂鬱な気分になる。背中を預けあった戦友の記憶に、知らずと胸を押さえて俯く雨彦の様子に、クリスは心配そうに声をかけた。

 「……雨彦、大丈夫ですよ」
 「ああそうだな」
 「大丈夫だってー、僕もクリスさんも殺したって死なないタイプだからねー」

 雨彦さんは化けて出そうだよねー、と茶化す想楽も、そろそろですね、と操縦桿を握り締めてスタンバイ体勢に入るクリスも、二人とも雨彦の過去について詳しくは知らない。ただ、雨彦が時折みせる苦しげな表情と職務上の危険度から推測するだけだ。話してくれなくてもいい、ただ自分たちにできることは、雨彦の前で自らの命を散らさないことだけだ。チーム編成から日の浅い彼らが目覚しいほどの戦果を挙げている理由は恐らく、そういった、入り込みすぎない気遣いが基礎になったゆるやかな信頼があるせいだろう。すまないな、と心の中でその気遣いを汲み取って、雨彦も操縦桿に手をかける。

 「……状況開始といくかい?」
 「ええ、いつでも!」
 「こっちもいいよー」

 よし、と引き結んだ唇に笑みを浮かべる雨彦の憂いは、もうすっかり晴れている。スゥ、と息を吸い込んで一度目を閉じ、司令室からの合図を待つ。

 「ブリッジからLegenders各員へ。スクランブル、B3地点に偵察機5と未確認の新型1」
 「新型……?」

 嫌な予感の原因はこれか、と雨彦は目を開けてモニタに転送されてきた荒い映像を確認して、思わず息を呑む。

 「っ!?」
 「雨彦さんどうしたのー?」

 まさか、と背筋を伝う汗の冷たさに、雨彦の鼓動は急激に早くなる。まさか、そんなわけがない――あいつは、あの機体ごとあいつはもう、10年も前に……

 「新型ですか……元々は陸戦用のようですが」

 私と同類でしょうか、と機体情報の分析を始めたクリスに、雨彦はモニタ越しに指示を出す。

 「古論、腰部シールドブースターを調べてみろ」
 「腰部のああ、この――

 リフトがカタパルトにセットされた振動に、三人の体がそれぞれガクンとシートの中で揺さぶられる。クリスが小さく声を上げて、雨彦と同じくまさか、と呟く。まさか。

 「デっ、データ、転送しますっ」
 「えー、なになにー?」
 「……は、はは…………

 カタパルトにセットされた機体からリフトが離れるのとほぼ同時に、三人は送られてきた詳細データを食い入るように見つめて、まさか、と声を漏らす。

 「じょ、冗談でしょー?こんなのって……
 「記録にはありませんが、これは間違いなく、我々の軍の機体です」
 「なくて当然さ、そいつは十年前の戦争に合わせて開発が進められたが、設計図が引かれた段階で戦争が終わっちまった"お蔵入り"だからな」

 苦々しい記憶の残滓に表情を歪め、揺り戻された過去に雨彦の意識が放り込まれる。クソ、と小さく呻くような声を上げ、雨彦は自身の太腿をパイロットスーツ越しに殴りつける。震えるんじゃない、情けないぜ、と。ガクン、と完全にリフトが外され、三体の機体がそれぞれ待機状態に入る。

 「話は後だ、まずは歓迎パーティを開いてやらないとな」
 「あまり気は進みませんが致し方ありませんね」
 「乗ってるのはこっちの人じゃないんでしょー?だったら気にしなくていいんじゃないかなー」
 「ま、そりゃそうか……ブリッジ、Legenders出撃準備完了だ、いつでも指示をくれ」

 三人の表情が一気に引き締まり、空気のない宇宙空間をぴりりと震わせる。駆動音を響かせて射出準備を終えたカタパルト上で、三人は最終出撃指示を待つ。

 「スクランブル、Legenders。一番から三番まで。進路上の機体は退避してください。射出は10カウント後です」

 10、9、8……オペレータのカウントダウンに合わせて、雨彦は号令をかける。

 「北村、古論、葛之葉の順に出る。Legenders、出撃!」
 「はーい」
 「了解いたしました!」

 カウントゼロでカタパルトが次々と機体を射出する。

 「ムーサ・フライトタイプ、出るよー!」

 小回りの利く想楽の機体が黄色い光の帯を纏って真っ暗な宇宙に躍り出る。

 「ディープ改、参ります!」

 元海洋陸戦専用の安定感とワイヤーによる格闘戦術の重装型、クリスの機体は紺碧の筋を走らせながら撃ち出される。

 「……黒鋼、出る!」

 雪の結晶のように繊細なフレーム装甲、白銀のきらめきを散りばめた雨彦の機体が流星のように黒を裂き、敵機影の背後まで一気に加速する。狙うは新型だ。

 「じゃーお先に失礼するねー」
 「北村、何をしている!」
 「5人くらいなら大丈夫だよー」

 馬鹿野郎!と叫びながら雨彦の黒鋼は打ち出された勢いのまま、新型の方へと向かう。私に任せてください!と通信モニタの向こうで親指を立てたクリスが、バルカンを起動させた敵偵察機の一機に向かってアンカーワイヤーを射出する。

 「失礼いたします、あなたには反動になっていただきますね!」

 グンっ、とワイヤーを絡ませた機体を軸にして射出角度を変更し、一気にワイヤーを巻き取りながら操縦桿を目一杯倒すと、ディープ改は宇宙空間で重力を操作するように俊敏に軌道を変更する。せいっ!と偵察機を黒鋼に向かって投げ飛ばしてアンカーワイヤーを解放すると、クリスは叫ぶ。

 「後は雨彦にお任せいたします!」
 「無茶苦茶だなお前さんは!」

 狙い済ましたかのように黒鋼の目の前を通過する偵察機を、黒鋼の両腕装甲から展開するエネルギーシールドの【淵】が掠めて一刀両断した雨彦は後部モニタも追加して戦況を確認した。五機の偵察機の内、一機はクリスが投げ飛ばし雨彦が斬り捨てた。残る四機の前に躍り出た想楽のムーサが後部スラスターとバーニアを吹かして端の一機に急接近していく。まずいな、と冷や汗をかく雨彦の黒鋼は、真紅に揺らめく陽炎のような新型との距離を詰めながら指示を出す。

 「古論!こっちはいい、お前さんは北村のフォローへ向かえ、北村!」
 「了解です!」
 「なーにー?」
 「センター二番機、特殊AIだ気をつけろ」
 「えー」

 僕あれ苦手ー、と文句を垂れながら高度を上げ、ビームサーベルを構えたムーサは一機に斬りかかる。ムーサの接近に気付いた標的が軌道を変えようと機体をロールさせるが、それより速く背後に回りこんだ想楽はサーベルを一気に振り下ろす。

 「遅いなーもうー」

 バヂバヂバヂ、と火花を散らして偵察機の両膝関節が砕け飛ぶ。トドメだよーと胸部装甲ごとメインシステムを貫いて、そのままヘッドユニットまで斬り上げると、サッと身軽に離脱したムーサの背後で偵察機が爆発する。

 「北村!!避けろ!!!!」

 味方機の破壊を察知したセンター二番機の特殊AIが、ムーサに向かって突進するように最大出力で接近する。全体の生存率を向上させることで戦力と戦線の維持を目的としたタイプの特殊AIは、単機での戦闘力はそこまででもないのだが、集団となるとやっかいだ。黒鋼のコックピット内で舌打ちをした雨彦は、だから言っただろう!と想楽に叫ぶ。

 「うわーこっち来ないでよねーまだチャージ終わってないんだよー」

 サーベルロッドをチャージポッドに格納したムーサがセンター二番機の追撃をひらりとかわしたその先に、通信制御で連携をとった残りの二機が機銃を向けてムーサに狙いを定めて接近する。二機で狙い撃ちとかやめてよねー、とスラスターを巧みに操作して、バババババババ、とばら撒かれる銃撃をかわしながらだんだんと、ムーサは追い詰められていく。想楽のHMDシールドの右上に、サーベルロッドの残りチャージ時間が表示される。……あと32秒。避けきれるかなー、と全方位モニタを展開しながら想楽はムーサのモードを完全マニュアライズに変更した。

 「ムーサ・フライトタイプ、フルマニュアルだよー」

 移動時のフルオートマティック、戦闘時のセミオートマティックから姿勢制御をフルコントロールできるようにしたフルマニュアルモードは、ムーサの最大の武器だ。今のところ想楽以外にフルマニュアルモードで戦場に赴くものは居ないが、正確で細かい操作が必要になるフルマニュアルモードはその実、想楽のコントロールを得る事で機体性能を100%以上に引き出している。まるで自分の手足のように自在に機体を操って、想楽はムーサと一体になって宇宙を縦横無尽に駆けていく。
 とはいえ、チャージが完了するまでの30秒をずっと逃げ続けるには尋常ではない集中力が必要になるし、一瞬でも気を抜けば制御を失った機体はあっという間に中距離砲撃の餌食になってしまう。ひらり、ひらりと銃撃をかわすムーサの背後に、特殊AIのセンター二番機が回り込んだ瞬間に、想楽は、しまった、と声をあげる。

 「油断しないでください」

 背後のセンター二番機の足元に、遠くからディープ改のアンカーワイヤーが絡みついてぐるりと回転したかと思うと、ディープ改を中心軸にして一気に後方に投げ飛ばしながらクリスは叫ぶ。

 「ねっ!」
 「わーん、クリスさん助かったよー」

 ピ、とチャージカウントダウンのシグナルが緑色に光ったと同時に、想楽はムーサをセミオートに戻して二機同時に斬りかかる。雨彦、いけますか!とアンカーワイヤーを解放したディープ改を回転させて、クリスは新型と対峙する黒鋼を拡大する。

 「これは無理そうですねよ、っと!」

 ガション、と鈍い音を立てながらライフルユニットを脚部からパージしたディープ改は、ライフルとショルダーユニットと接続してラインを確保する。ヴン、とHMDシールドに転送されたスコープ映像を覗き込み、クリスは投げ飛ばしたセンター二番機に照準を合わせる。

 「ロック・オン、ホーミングライフル【魚雷くん】、参ります!」

 手元の射出ボタンを3つ同時に操作して、ライフルのモードをホーミングに設定したクリスは、ディープ改の背後で二機同時に撃墜した想楽にやんわりと苦言を呈される。

 「ねー、その名前なんとかならないのー?」
 「名前……【魚雷くん】のことですか?」

 ホーミング性能と銃弾特性について長々と語り出そうとするクリスに、雨彦はいい加減にしないか、と苦笑しながらつっこみを入れる。和気藹々と戦況は好転してきてはいるが、不気味にゆらめく敵新型の前で、雨彦は手のひらに汗をかいている。目視確認できる距離に迫るそれは、まさに、10年前あいつと共に失われた試作型と同じ……血潮のような赤だけが、雨彦の記憶とは違うその機体には、誰も搭乗してはいなかった。


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