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[雨P♀]安定の葛之葉さん

全体公開 2207文字
2018-03-06 12:45:53

Legenders休日ばったりデート第一弾。
葛之葉さんに、頼みごとをされるお話。さぷらーいず。

Posted by @toasdm

 「お前さん、ちょいと時間作れるかい?」

 休日に一人ぶらぶらと買い物をしていた私に声をかけてきたのは、担当アイドルの葛之葉さん。こんなところで奇遇だな、と爽やかに笑う彼は私に頼みごとをしたいと言う。しばらく迷っていたんだがな、と本当に困ったような顔をしているので詳しく話を聞いてみれば、女性に贈るプレゼントを買いたいのだという。

 「すまないな、さすがに男一人でこの手の店は、どうにも気が引けちまうんだ」

 こんな俺でも気にすることくらいあるんだぜ、と恥ずかしそうに笑う雨彦さんは、流行の雑貨店の前で私の手を取る。何の意図があるのかと思って聞いてみたところ、カモフラージュをカモフラージュするためだ、なんてわかりにくい事を言う。

 「カモフラージュの為に女を連れている、なんて思われるのも癪だからな」

 まわりくどいような気もするけれど、悪い気はしない。繋いだ手は大きくて温かくて、なんとなく安心してしまう。特別、異性として意識をしたことはないけれど、こうやって見上げてみると葛之葉さんは男性として、とても魅力的な人だと思う。
 すらりと伸びた手足と背の高さ、スッと切れ長のクールな瞳、鼻筋も通っていて顔付きは日本人らしい。どこか浮世離れした飄々とした性格と低く落ち着いた優しい声、大人らしく頼りがいのある受け答えは、何を相談してもしっかりと受け止めてくれるんじゃないだろうか、という安心感がある。安定の葛之葉さん、という単語が自分の中でぴったりとハマってしまって、私はこっそり一人で笑う。

 「何を笑ってるんだ」
 「いえ、ふふなんでもないですよ」

 お前さん、何か失礼なことを考えているんじゃないか?と笑うその表情もよくみればどこか若々しくて、葛之葉さんの年齢を知らない人がみたらきっと、この人いくつなんだろう?と混乱してしまうんじゃないかと思う。私の意見を大いに取り入れたプレゼント選びは、ラッピングにまで及んだ。

 「どういったプレゼントなんですか?お誕生日とか」
 「いや、普段世話になってる奴にちょっとしたプレゼント、ってところだ」
 「ああ、だからマグカップなんですね」
 「そうだな、これなら普段使いもしてもらいやすいだろうっていうお前さんの意見を参考にさせてもらった」

 助かるぜ、とウインクをしながらどのラッピングが適切なんだと聞いてくる葛之葉さんに、私ならこれが嬉しいです、と答えると店員さんにそのまま伝える。華やかな雑貨店を後にして、私と葛之葉さんは近くのカフェで一息いれることにした。

 「お前さんがいなかったらいつまでも決まらないところだった、助かったぜ」
 「いえいえ、私でお役に立てるんでしたらいくらでも」

 世話になった礼だ、好きなものを頼みなと言う葛之葉さんのお言葉に甘えてケーキと紅茶のセットを注文した私が、マロングラッセの乗ったモンブランを食べていると、目の前の葛之葉さんが頬杖をついてにこやかにこちらを見ている。少し食べづらい。

 「あの、召し上がりますか?」
 「いや?遠慮しないで食ったらいい」

 見つめられると食べづらいんだけどな、とはなんとなく言い出しにくくて、葛之葉さんの視線をやり過ごしながら私はケーキを平らげる。ほろほろと甘さの解ける口の中いっぱいの幸せをかみ締めて、カフェを後にして駅へと向かう。もう陽は随分と傾き始めている。

 「今日は半日、付き合わせちまって悪かったな」
 「いえ、デートみたいで楽しかったですよ」

 おっと、と面食らったような顔をした葛之葉さんの顔は気のせいか、少し赤いように見えたけれども、きっと夕焼けのせいだと思う。そうでも思わなければ、自分のデート発言とか手を繋いで買い物だとか、今まで意識していなかった事を急に意識し始めてしまった恥ずかしさに、こっちも赤くなってしまいそうだと感じたから。
 駅に向かって歩いているうちに、私はなぜか、帰りたくないな、と思ってしまっていた。楽しかった、本当に。デートみたいで、ドキドキもした。葛之葉さんをそういう感じで見たことはなかったけれども、でもやっぱり、意識すると胸は高鳴る。
 少しモヤモヤしながら到着してしまった駅の改札前で、そういや、と何かを思い出したような葛之葉さんが、さっき買ったプレゼントを私に差し出してくれる。

 「付き合わせちまった礼だ、もらってやってくれないか」
 「え、でもこれって……

 いつもならきっと、ニヤニヤしながらおどけて言うような事を、真剣に見つめて言われると、何かを勘違いしてしまいそうになる。

 「言っただろう?普段世話になってる奴にちょっとしたプレゼント、ってな」

 お前さん好みのはずだぜ、と差し出してきたプレゼントは確かに、ラッピングに至るまで私の好きでできている。ずっと見ていたからそんなことは知っている。でもそうじゃなく。どうしようもない胸のドキドキで硬直している私の頭を、葛之葉さんはポンポン優しく叩いて笑う。

 「いつもありがとうな、プロデューサー」

 また付き合ってくれよ、と私にそれを押し付けた葛之葉さんは、いつもと同じ安定の葛之葉さんに戻っているのになぜだろう、私の方はちっとも気持ちが安定しない。安定しない気持ちのまま私は、じゃあなと手を振って駅を出て行く葛之葉さんを見送った。


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