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ケダモノのネタバレ感想

全体公開 13 6927文字
2018-03-16 00:56:34

スカウトケダモノのネタバレ感想(ヴァラビ返礼祭のネタバレもちょろっと)
嵐中心に思ったことをつらつらと

Posted by @hasumi_mg

①今回のスカウトに出てくる人たちの話
 Knightsからは凛月で、陸上部からは斑。嵐を囲む人の中でこの二人が選ばれたのは、二人が嵐の性別に関する問題や彼にとって触れて欲しくない部分に、結構感受して気にかけている部分が日頃からあるからなのかな、と。
「あの子、普通にナッちゃんの地雷を踏み抜いちゃうかも?」「悪い子よりも良い子のほうが、正論や綺麗事のほうが……時として誰かを傷つける。な~んか危ういなぁ、かなり本気で心配になってきたんだけど」
「今さら言っても後の祭りだけどなあ、俺はあんな仕事は引き受けないほうが良かったと思うぞお? 男らしさを強調する仕事かあ……。そんなの嫌だったんじゃないかなあ、嵐さん」
 こういうセリフがあるように、この二人は嵐の中にある「女性」の部分に目を向けて、気遣っているように思える。
 凛月は元々中性的なところがあるから、Knightsの中なら一番そういったことを察するのに適任。
 斑は一年のころの嵐から見ていて、過去イベで「昔の嵐さんは着たいものを着ていた、遠慮する子じゃなかった」と言っていたように、二年間で男性として成長していく自身の身体と向き合いながら、女性の心と折り合いをつけていく嵐をずっと見てきた。

 流星隊からは鉄虎。男のなかの男を目指す彼は、上記の二人の真逆の存在。嵐の心と身体の葛藤なんて、斑に助言されるまで気が付かないレベル。彼からすると嵐は「初めて接する性別の人間」という括りになるのではないか。素直でズケズケな物言いが嵐をイライラさせているが全く気付かない。今までさんざん性別のことで嫌味を言われたり馬鹿にされたりしてきた嵐は、根本的にこういうタイプの人間に対しては心を開かないのだと思う。だって普通に考えて自分に「男の中の男」になりたいなんて言ってくるなんて、馬鹿にされてると思うでしょ。何も言わなくても察するのが凛月や斑だとするなら、まさに鉄虎は真逆。言わないと分かんないタイプ。

②鉄虎の純粋さに気づき、己のあやまちを後悔する嵐のシーン
「アタシみたいに性別の問題で心の根っこのところをぐらぐら揺さぶられてるんじゃなくて
子供らしい他愛のない動機で「男らしく」なりたいなんて言い出したんじゃないかって
悩みの質と深刻さが違う……そのくせ、あたしの触れてほしくないところにずけずけ踏み込んできてさ。むかついて、腹いせに意地悪したっていうのに」
「これじゃあ、アタシはおとぎ話のいじわるな女王さまみたい」
 嵐のこういう性格悪いところ、本当に大好き。愛してる。人間くさいところ出してくれるの最高。
 いつもはお人形みたいに澄ましてるし、昔から芸能界の荒波に揉まれてきたせいで、他人から求められる自分を演じていることが多いような気がするけど。そういう子の人間くさいところ、しかも負の感情ってたまらなく良いよね。司には優しいのは、もしかしたら司は嵐の地雷をうまいこと踏んでいないからなのかもしれない?結構辛辣なこと言ってるけど……
 自分自身とは折り合いをつけている最中なのかもしれないけど、他人からその根を揺さぶられると案外弱いものだから。嵐がまだ「馬鹿にされた!」って憤慨して腹いせに仕返ししてやろうなんて気持ちが残っているとしたら、それはとても大切な感情だと思う。彼がこれからも成長して変わっていく過程でも大切にしていって欲しいし、辛いだろうけど失わないで欲しい。性格悪いからより輝くってところ絶対ある。

「これまでアタシを傷つけてきた、世間のみんなと同じよ。面白半分にもてあそんで、おもちゃにして、ばかにして去っていくだけの……
「頼ってくれたのに、信じて、頭を下げて教えを請うてくれたのに……
「アタシは『男らしさ』を求められて拗ねて、八つ当たりしちゃった」
 で、ちゃんと反省する嵐もまた素敵。
「性格悪いわね、アタシ」って自分で思ってる子こそ、本当の優しさを持った強い子だと思うから。自己嫌悪は悪いことばかりじゃない。むしろきちんと反省出来る嵐は性格悪いと言いつつ、自分でそれが悪いことだって素直に認めているから、結果心がきれいな子なんだな……と。

③女装した鉄虎(実際は見間違え)が不良に絡まれているのを助けるシーン
「不良に絡まれてるの? 何だこいつ、女装なんかしやがって……みたいな感じに?」
「からかわれて、馬鹿にされて、小突き回されてる?」
「そんなの、絶対に駄目! 鉄虎クンには馬鹿にされる理由なんかひとつもないいだから!」
 これ、嵐が以前に同じ目にあっていたとしか思えない。その記憶が蘇って、つい鉄虎だと勘違いして助けに入ったのではないだろうか。幼いころ、自分が同じように周りにからかわれて、馬鹿にされてきて。
 その時は無力で何も出来なかったかもしれない。自分の頭と感情の整理が出来なかったかもしれない。どうして自分ばっかりって思ったかもしれない。だけど、もし今、その場に自分と同じような立場で泣いている子がいるならば、自分が助けることが出来る。「男性」である自分と向き合っていく努力をしてきた自分ならば、あの頃の、震えているだけの自分を救うことが出来る。
 そのひとつの覚悟、決心のシーンだったのでは? と思う。

④嵐について
「今さら男らしいとかかっこいいとか言われても、逆に気持ち悪いとかクソオカマとか言われても傷ついたりしないわ。誰に何を言われても、アタシはアタシがいちばん大好き」
「うらやましい。アタシは望んでも、どれだけ努力しても、なかなか理想の「美女」にはなれないから。でもね、だからって悲観してないし、もうすねたりもしないわ。アタシはアタシが一番大好き。自分を愛せるやつこそが、男でも女でも魅力的だと思わない?」
 嵐はいつも、幾度となく、自分で自分に言い聞かせるみたいに「アタシはアタシが大好き」と言い続ける。
 彼の心境の移り変わりは、決して無傷じゃなかったはず。たくさん悩んで傷ついて、自分が変わっていくことで、自分を受け入れていこうとした嵐が私はとにかく大好きです。本当に嫌になることがたくさんあったと思う。若いのに人生に絶望したこともあるはず。ひどいことを言われたことも、嫌な目線を向けられたことも、小さな子供のころからたくさんあるはず。モデルやってるから余計に。
 人に頼れない、誰にも分かってもらえない嵐が、自分を守るための唯一の方法として「自分で自分を愛する」ことを選んで生きてきたなら、それはとても尊いことだと思う。本当に心から強いひとじゃないと出来ない。嵐はそれを呪文のように言い聞かせて、強く気高く生きてきたはずだから。
 もしも嵐が本当に昔はどーーーしようもないくらいに他人のことが嫌いで、「誰にも本当の自分を分かってもらえないし」って拗ねてて、他者をシャットアウトして生きてきたのだとしたら(事実、一年の頃の嵐は他人に興味がなく自分の利益にしか目がない子だった、しかも性格がめちゃくちゃ悪い※泉談)、嵐が一度鉄虎にいじわるしたとしても、それを「悪いことだった」って反省出来ている二年生の春。……めちゃくちゃ成長してるじゃん!? ってなるわけですよ。それが出来るようになるために、彼は自分で自分を愛し続けたのかな、と思うと、愛おしくて仕方がなくなる。頑張ったねって抱きしめたくなる。一人だけの力じゃないと思う。周りの助けや影響も少なからずあるけど、何より嵐の意思が強くないと、彼は今のように周りから見て「心の優しい子」にはなれなかったんじゃないかな。
 自分よりも他人の気持ちを優先する気持ちがあったからこそ、女の子が不良に絡まれていたら助けるわけだし、自分の大切な居場所であるKnightsの人気に貢献するために不本意ながら写真集を撮ったりしている。誰かのために頑張るということが、ちゃんと芽生えてるんだな、と思いました。生まれてこのかた嵐が他人の言われなのない言動で傷ついてきて、一度は失ってしまった思いやりの心が、だんだんとよみがえってきているのかな、と。そうだったら嬉しい。
 だから、結果として高二で写真集が出せて、しかも爆発的な売り上げをしているわけで。男性的な要素を前面に押し出したものが売れてしまったせいで、また悩んではいるけれど。嵐ならきっと乗り越えられると思う。自分で自分を愛せるひとが一番強いってことだね。自分を愛せる人は、ほかの人にも本当の意味で優しく出来るから、きっと大丈夫だよ。

 それから今回感動したのが、彼の周りにいてくれるひとたちの存在。
 嵐はオフでは女の子の自分、オンでは他人に求められる「男」の自分を出すことでうまく生き抜きしながら仕事をしている面があるけれど、彼がこの学院でアイドルとモデルを両立できているのは周りのひとの理解があってこそ。夢ノ咲のみんなの嵐に対する扱いの優しさに涙……だよね。愛されてるね、嵐。
 凛月みたいに適度に女の子扱いして気をつかってる子もいるし、泉のようにクソオカマと言ってくる子もいる。
 そのどちらにも囲まれて、嵐はのびのび自由にやれているんだなと思った。夢ノ咲に入学して、Knightsに入って良かったね。

 大人っぽくなった鉄虎が最後に言うセリフに私は泣いた。
「女々しい部分を無理して削ろうとせずに、優しさみたいな強さに変えて……。包み込んで、でっかくなるッス」
 卒業シーズン。三年生がいなくなってしまうけど、嵐の内側から輝く美しいところは、ちゃんと一年生に引き継がれていっているよ、というのを示唆しているようで……泣ける。
 斑もKnightsの先輩もいなくなっちゃうけど、嵐の難しい繊細な部分を理解して、傍にいてくれる子はこれからも続いていくんだよなあ、と。嵐ともっとも真逆タイプの人間じゃないですか、鉄虎くん。素直で、男の中の男になりたいなんて。そんな彼と嵐が分かり合えたというのは、すさまじい歩み寄りだし、たぶん今まで鉄虎くんみたいな子と仲良くなるって、無理だったんじゃないかなあ。嵐は自分の地雷に身勝手に踏み込むいけ好かない子と友達になろうなんて、昔は思わなかっただろうな。相容れなかったらそこでお仕舞い。これ以上踏み込んでも自分がもっと傷つくだけ。だからプンスカ怒って敵対して、何ならちょっと嫌がらせでもしてって、それで終わってた関係だったかもしれない。それがちゃんとお互いを尊重しあえて放課後デートまでする関係になるって、とんでもない成長だと思うんですよ。苦手だと思っていた人も意外と分かりあえるもんなんだなー、と思いながら、嵐がまたひとつ、他人に優しい素敵な先輩になっていって欲しいな、と思いました。
 夢ノ咲のみんな最高。周りから愛されていて、自分で自分を強く愛せる鳴上嵐が、もっともっと大好きになりました。
 本当に素敵なお話をありがとうございました……。公式に感謝しかない。

⑤その他
 ケダモノって何のことだろう? とずっと考えていた。
「吠えかかって威嚇するだけで事態が収まるなら、そのほうが絶対に良いわ、だから動物も、基本的にそうするのよねェ?」
 というセリフがあるように、今回はやたらと暴力的な言い回しが多いように感じた。
 宗に殴りかかりに行く嵐もそうだけど、嵐は内側に結構バイオレンス的なモノを秘めているように感じる。わりと何かあるとチャゲアスみたいに今から殴りに行っちゃう嵐最高ですわ。
 女の子らしく可愛く振舞っている嵐にも、やっぱり育っていく過程で男性的な部分はきっとあって(それが周りから押し付けられたものなのか、自ら望んで手にしたものかはともかく)、大切なひとのことを思っていてもたってもいられなくなると、そういった暴力的な部分が前に出てきちゃうのかな、とも思う。殴れば解決するわけじゃなく、「殴りたい!」っていう衝動の話。そして無意識化で出現するその獣のような本能を「ケダモノ」と表現しているのではないだろうか。だけどそれだって嵐の一部だし、何なら彼が今まで人を信用しないために押し込めていた、人に対する「優しさ」の部分であるともとれる。本当に大切な彼の個性だと思う。大事にしていって欲しい。

 副題「世界の中心で」について。
 世界の中心で、というのはつまり、「性別」の中心でっていうことなんじゃないかなーと。
「もしも嵐さんが助けを求めるなら、俺はいつでも全力で手を差し伸べる」
「逆に男らしさを求められるのが嫌なら、嵐さんにそれを強制するあらゆるものを叩き潰す」
 斑の申し出を、どちらも受け取らなかった嵐。
 嵐はまだまだ男と女の境界線にいて、葛藤しながら模索している最中なんだと思う。
 そして私は、その明確なゴールというものは無いのかな、って思う。「世界の中心」に居続ける存在としてこの世に生まれた嵐だからこそ、誰かの役に立つことや、彼にしか出来ない使命がきっとあるのだと。
 だから今日も彼は「世界の中心」にいるんじゃないのかな。流れに身を任せるように、自分を愛し続けながら。

 カードのセリフ「アイドルはみんなの思いに気づいて愛さなくっちゃね♪」について。
 これ……とても深いのでは? となった。
 みんなの思いに気づく=他人から求められているものに気づく
 愛する=他人から求められる自分になる
 ということだとするならば、アイドルというのはとても献身的な職業だな……
 アイドルというか、「仕事」というものの本質を理解している嵐だからこそのセリフだなー、と。

⑥せななる的目線
 泉は嵐がキッズモデル時代からの知り合い。
 だから嵐が傷つきながらも、性別の折り合いをつけてきたことを誰よりも傍で見てきたはず。
 こんな写真集を出して、不本意な騒がれ方しちゃったら、嵐はとても傷つくかもしれない。
 その事実を誰よりも分かってるはず。
 これを撮るって話になったとき、斑は反対するだろうし(嵐が傷つくと分かっているから)、凛月も「(え、地雷じゃんそれ……)」って内心はらはらしてそうだけど、泉だけは一言「なるくんなら出来るでしょ?」と言っていると良い。

 なんだかんだ嵐も泉もメンタルが強い。強すぎるくらい強い。キズモやってたせいで過酷な環境への順応能力が半端なく高い。泉の出来ることは嵐も出来るが泉のマイルール。「なるくんなら出来るでしょ?」って簡単に言ってほしい。
 彼の地雷を気にして他の誰もそんなこと言わないんだけど、泉だけにはそう言ってほしい願望がある。
 泉がそう言うから嵐も「じゃあ出る、出てやるわよ」ってなると思うし、好戦的で調子こいたほうが二人は高めあえることを知っているから。お互いが潰れないために、お互いをさらにうえに突き詰めていく戦法。芸能界で身も心もズタズタにされないように、意識しないで二人がそれをしてきた関係がとても萌える。

「あの泉ちゃんすら褒めてくれたもの、珍しく素直に『がんばったじゃん』ってさ」
 そんな泉が言う、写真集を見た後の「がんばったじゃん」の一言ですよ。
 嵐が自分と折り合いをつけて、自分が男性として求められるのなら、それにこたえるというプロ意識。
 その大変さを泉はちゃんと分かっていると思う。ずっと傍で見てきたわけでしょ、嵐が傷ついていることも、頑張って成長していく姿も、格好悪いところも、性格悪くてネチネチしてることも全部。昔とキャラチェンジまでして、自分のなかで葛藤していることを知っているのは泉しかいないんだよ。そんな彼から出た「頑張ったじゃん」って、深いなあ……と思うわけです。普段、嵐に対して褒めたりとかしないから余計に。泉が素直に「頑張ったじゃん」って言ってくれるだけで、嵐は嬉しいんじゃないかなあと思う。
 もうすぐ卒業しちゃうし、これから先、嵐を傍で見てやれなくなる。そんな彼が卒業前に最後に残したプレゼントがこの写真集だとしたら、泉は絶対にホっと安心するだろうな。こいつ、もう一人前になったなって。
 迷いなく、躊躇なく、こんな男らしい顔出来るようになったんだなって。優しいやつになったんだなって。
 嵐だってずっと傍で見守っていてくれた泉に見せたいって思うはず。自分が内面も外見も成長して、あがいて成長した証だから。

 嵐にこの写真集を撮らせるなんて、彼の希望にそぐわないことをさせているのは、どう考えても嵐を売りに出したい大人たちの欲望なわけだが、泉は、嵐がそれに染まることを嫌だと思わない節があるような気がしてならない。ゆうくんは必死で遠ざけたのに。
 それだけ彼のことを仕事の面で信頼しているということだし、一緒に大人の欲望に染まっていくことに一種の安堵というか、快感を持っていて欲しいなと。

 自分でいくら自分を愛したとしても、「がんばったじゃん」……泉のその一言が、それよりも大きくてあたたかい力があると知るのは、もっと大人になってからかなあ。


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