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[みのP♀]小さなブーケ

全体公開 2 2702文字
2018-03-22 02:11:04

みのりさん、お誕生日おめでとうございます。素敵な花束を贈り合う、みのりさんとPさんのお話です。

Posted by @toasdm

 完璧なはずだった。うまく隠していたつもりだった。薄いピンクのトルコキキョウ、白いフリージア、黄色いチューリップは一本だけ真ん中に。スノーフレークの白と緑がそれらをきれいにまとめたブーケを抱えて、みのりさんはにっこりと、花がほころぶように微笑んだ。

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「プロデューサー、お疲れ様!」

 よし、と心の中で気合を入れた私は、いつものように話しかけてくれたみのりさんに笑顔で返して、作戦を開始する。――ミッション、F。みのりさんの好きなお花を調査せよ。

「お疲れ様です、みのりさん!あの、実は折り入って相談がありまして……
「ん?うん、俺で役に立てるんだったら、いくらでも」

 第一段階、突破。私は心の中で小さくガッツポーズをキメた。きっとみのりさんならそう言ってくれると信じていたけれど、ここでノッてくれなければ私の作戦は失敗に終わってしまう。レッスンを終えたばかりで額に汗を浮かせたみのりさんにタオルと飲み物を渡してから、私はターゲットのみのりさんを休憩室へと誘導する。別に誰かに聞かれても問題のない相談ではあるけれども、勘のいい子が察して答えをバラしてしまわないとも限らないからだ。椅子にかけて水を飲みながら汗を拭き、みのりさんは私に、で、なんの相談?と気さくに聞いてくる。嘘をつくわけではないけれど、隠し事をしているような居心地の悪さを、これもみのりさんの為だ、と押し殺しながら平静を装って、私は努めて普通に聞こえるようにみのりさんに話し始める。第二段階、開始だ。

「実は、普段からお世話になっている方にお花をプレゼントしたくてやっぱり、お花といえばみのりさんが一番、頼りになりますから」

 お願い、気付かないで!と祈りながら私は、みのりさんの気持ちにじわじわと近付いていく。明日はみのりさんのお誕生日、私はどうしても、みのりさんの好きな花を聞き出したいだけなのだ。そんな私の作戦を知ってか知らずか、満面の笑みで頷きながら、みのりさんは快諾してくれる。

「うん、お花の事なら任せてくれていいよ!どんな花でもきっと、プロデューサーから貰えるなら喜んでもらえると思うけどね!」
「よかった!」
「で、相手の人はどんな人?」

 どきり、と鼓動が一瞬跳ねる。みのりさんです、と言うわけにもいかないし、みのりさんと同い年くらいの、と言うのもバレバレだ。でも、きっとそうくるだろうと身構えていた私は、予め用意しておいた答えを引きずり出して、すらすらと淀みなく伝える。

「私より少し年上なんですけど、とても明るくて素敵な男性なんです。周りの人を笑顔にしてくれる明るさと、頼りになる力強さと懐の深さが魅力的で、一緒にいてとても気持ちが安らぐというか、元気になれるそんな人、ですね」

 へー、と少し驚いたような表情で、みのりさんは一瞬考え込む。うん、それなら、と何かを閃いたようにポン、と手を打って、紙とペンある?と差し出したみのりさんの手に、私はポケットからメモを取り出して手渡した。

「プロデューサーは、その人の事好きなの?」
「えっ?!」

 さらさらとペンを走らせて、花の名前を書きながらみのりさんはこちらも見ずに何気なく聞いてくる。好き、の種類までは聞かれてないから大丈夫、と自分の中に言い訳を見つけて、そうですね、と適当に答える。ふーん、とブーケのイラストまで描かれたメモが戻ってきて、これならきっと喜んでもらえると思うよ!と笑顔のみのりさんに感謝の言葉を述べて、第二段階も無事クリア。みのりさんに伝えたイメージに合わせてみのりさんが選んだこの花束は、きっとみのりさんも好きな花に違いない。あとは明日の誕生日までにこれを用意してもらって、みのりさんに渡せば私のミッションは無事完了だ。大事なメモを失くさないようにしまい込んで、私は仕事に戻った。全ては明日、みのりさんのお誕生日にかかっている。

 いつもより少し早めに事務所についた私は、小さなブーケをデスクに置いてそれを眺める。みのりさんの教えてくれた可愛らしい花達は、朝一番の瑞々しさでキラキラしていて、殺風景ではないはずの事務所の空気が、パッと華やいだような明るい雰囲気になる。まるでみのりさんみたいだな、と笑いのこぼれた私の後ろで、ドアの開く音がした。

「おはようございます、みのりさん!」
「おはよう、プロデューサー」

 振り返った私に手を振りながら、本日の主役が登場する。デスクのブーケを後ろ手に手繰り寄せてそっと背中に隠した私は、近付いてきたみのりさんにそれを差し出す。

「みのりさん、お誕生日、おめでとうございます!」
「うわ、えっ、これ、俺に?」

 いつもお世話になってますから、お誕生日くらい祝わせてくださいね、と言う私の手からブーケを受け取ると、みのりさんはとても嬉しそうに、色んな角度からそれを眺める。喜んでもらえたみたい、かな?ほっと胸をなでおろした私に、みのりさんは荷物の中から何かを取り出して、ニコニコしながらはい、と私に向かって差し出してくる。

「ふふ、ありがとうプロデューサー。じゃあ、俺からも!ね?」
「え、あの……

 状況がうまく飲み込めていない私の手に握らされたそれは、小さなブーケ。今、この事務所には、全く同じブーケが二つ、あるという状態になっている。ますます混乱する私の頭に、ぽん、と優しい手が置かれて、ありがとう、とみのりさんがブーケを抱えて言う。

「最初から、気付いてたんだ。俺の誕生日にプレゼントしてくれるんだな、って。俺はね、この花も大好きだけど、プロデューサーが喜んでくれるのが一番嬉しいから。だから、この花達は最初から、プロデューサーの為に選んだんだよ」

 完璧なはずだった。うまく隠していたつもりだった。薄いピンクのトルコキキョウ、白いフリージア、黄色いチューリップは一本だけ真ん中に。スノーフレークの白と緑がそれらをきれいにまとめたブーケを抱えて、みのりさんはにっこりと、花がほころぶように微笑んだ。私の浅はかな作戦は最初から失敗していたみたいだけど、でも。こんな風に笑うみのりさんに、一番最初におめでとう、と言えたのだから、ある意味では、結果オーライなのかもしれない。しおれる前に花瓶に活けてしまおうか、と花束をまとめたみのりさんにもう一度、おめでとうと声をかけてから、私達は給湯室に向かった。
 どうか、素敵な一日を。願いを込めて花瓶に活けた二つのブーケが一つになって、事務所の中は一際明るく華やかになっていた。


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