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[想楽P♀]プリン 究極

全体公開 2089文字
2018-04-11 17:24:17

「どうせなら、頭だけじゃなくて心にも、栄養が欲しいなーってねー」

レポート片手にプリンを食べる想楽君の、全然さり気なくない要求のお話です。

Posted by @toasdm

 外回りついでにコンビニに寄って、この時期限定のコンビニスイーツをぶら下げてうきうきと事務所に戻った私を出迎えてくれたのは、お疲れ様でーすとレポートを書いている想楽さんだ。山村君は?と声をかけながらデスクに戻る私を振り向きもせず、うーん、と頭を抱えた想楽さんは、さっきどっかに行っちゃったみたいだよー、と相変わらずののんびりとした口調のままさらさらとペンを走らせている。
 邪魔しちゃ悪いかな、とそのままデスクについて私は、一口サイズのロールケーキを一切れつまんで口に放り込む。このクリームの口どけがたまらないのだよ、と至福のひと時が広がる幸せを味わって、さて仕事仕事、と私はパソコンに向かう。
 しんと静まり返った午後の事務所の中、キーボードのカタカタという音と想楽さんがペンを走らせる音だけが響いている。時折トントン、とペン先でテーブルを叩いて何かを考え込んでいる様子が背中越しにも伝わってくる。学生とアイドルを両立させている想楽さんは、たまにこうやって空いた時間でレポートや課題をやっつけているようで、その姿は見慣れているというほどではないけれど、決して珍しいものではない。頑張ってください、と背中の方にそっとエールを送りながら、私も企画書を仕上げてまたロールケーキを一口。ふふ、と思わず溢れた笑いに、想楽さんはふぅ、とため息をついて、僕も休憩しよっかなー、と立ち上がり、給湯室の冷蔵庫を開けて、嬉しそうに戻ってくる。
 「今日はプリンだよー」
 語尾に音符でもついていそうなその言い方が、年相応の可愛らしさを振りまいているようで、私も思わず振り返って、お疲れ様です、と声をかけた。コンビニで売っているプライベートブランドのプリンにはご丁寧に、パステルグリーンの付箋紙に【北村】と名前まで書いて貼ってあり、それがまたなんとも言えない愛らしさを醸し出していて頬が緩むのを抑え切れない。お付けしますか?で付けられる個包装のプラスチックスプーンを取り出して、想楽さんは本当に、心底嬉しそうにプリンの蓋をぺりぺりと剥がして手を合わせた。
 「いただきまーす」
 掬ったプリンをぱくりと口に運んで、んー!と高い声で満足げにプリンを味わう想楽さんの様子から伝わってくるのはプリンの美味しさと、想楽さんはプリンが結構好きだということ。幸せー、とにんまり笑った想楽さんは、プラスチックスプーンを咥えたまま再びレポートに向かう。甘いものを食べたから、もしかしたら何か閃いたのかもしれない。その微笑ましい一連の動作にほっこりした気持ちを抱えた私も、負けじと再びパソコンに向かって仕事を続けた。
 「僕ねー」
 スプーンを咥えたままの、少しいつもと違う発音の想楽さんの声が後ろから私に呼びかける。はい、と返事をしながら私はロールケーキを口に放り込んで作業を続けて、想楽さんの話を待つ。
 「プリン好きなんだよねー」
 「ふふそうだろうな、とは、思いました」
 頭の栄養にもなるでしょー?と発した声はいつもの感じだったから、きっと今、想楽さんの手にはペンではなくてスプーンが握られているんだろう。その証拠に、また、んー!と幸せのプリンを味わう声が聞こえてくる。それからまた、しばらくはずっと、さらさら、とペンを走らせる音。確かに、頭の栄養はなっているみたい。くすぐったくなるような想楽さんの言葉に、私もなんだかプリンが食べたくなってくる。心がふわりと甘くなるような素敵な午後のため息と、ペンを走らせる音をBGMに、気分を後押しされた私は最後のロールケーキを食べてパソコンとにらめっこを再開。はー、ごちそうさま、と想楽さんは容器を片付けているようだ。レポートももう少しで終わるのかもしれない。ペンの音も軽快に、想楽さんは鼻歌混じりにやっている。
 ふ、とその鼻歌が止んで、そういえばー、と想楽さんの声がこちらへ向けられる。なんですか?と書類を確認しながら応えた私の背中に向かって、想楽さんは言った。
 「プロデューサーさんって、プリン作れたりするー?」
 質問の意味が、わかるようでわからない。作れるか作れないかで言えば、作れるけれども。さっきの話の流れでそんな風に聞かれると、私は妙な事を勘ぐってしまう。他意はないのかもしれない、でも、とぐるぐる回る思考の渦に飲み込まれた私の背中にさらに、想楽さんの追撃。
 「どうせなら、頭だけじゃなくて心にも、栄養が欲しいなーってねー」
 究極の手作りプリン、いいよねー。そう呟いた想楽さんは、よし、終わったーとレポート用紙をファイルにまとめているようで、がさがさと荷物をまとめる音の向こうで、くすくすと笑うような声がする。
 「それじゃあ、レッスン行ってきまーす」
 笑い声と一緒にドアを出た想楽さんの気配が、私の返事も待たずに遠ざかる。あれは、どういう意味だったんだろう。ロールケーキのごみを片付けて、私はパソコンに向き直って考える。どういう、意味、なんだろう?気がつけば私の指は勝手にレシピサイトを開いて、その検索窓にカタカタと、文字を入力していた。


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