@toasdm
はじまりは、ほんの些細な悪戯心。油断していたわけじゃないとは思うけど、珍しく気の抜けた想楽さんの横顔に、私の心に吹いてきた小さな悪戯心の風が押した私の手が、無防備な首筋に伸びて指先でくすぐる。
「へぁっ!?」
普段聞きなれた声とは全然違う、ああ、これは完全に油断してたんだなっていうのがわかってしまうような素っ頓狂な想楽さんの声と反応に、私は思わずおなかを抱えて笑ってしまう。むっ、とした様子の想楽さんが、その表情のまま隣に座った私の脇腹をくすぐり返してくる。
「お返しー!」
「ひゃ、やめっちょ、あはははは!やめて想楽さんそこだめ!!」
「ふふー、あんまり聞かない声ー」
おんなじことを思っているのもおかしくて、私は余計に笑ってしまう。もうこうなったら後には退けない、お返しのお返しに、私も想楽さんの脇腹めがけてくすぐる手を伸ばす。わーわー叫びながら身を捩って想楽さんも、どんどん私の体のあちこちをくまなくくすぐり始める。
「背中だめあはははははははは!」
「ちょっとおなかばっか狙わないでよーやめてーうわ、あーーー」
ソファの上で大乱闘、笑いすぎておなかもほっぺたも痛くなってきた。くすぐったさで笑う想楽さんの珍しい声もいとおしい、楽しい、おかしくて次から次へを笑いが弾けて拡散していく。もー、と爆笑しながら想楽さんが、封印しますーと私をぎゅっと抱きしめた。これでは身動きが取れないので、くすぐることはできないぞ、とその腕をなんとか抜け出そうと努力はするけれども、びくりともしない。
「暴れたってだめでーす、封印ですー」
「うぅぅー……」
「……僕も男の子だからねー、ちゃんと力はあるんだよー?」
耳元に響くいつもよりも低い声、どきりと一瞬体と鼓動が跳ねた私を、想楽さんがえい、とソファに押し倒す。
「!?」
「油断してたの、どっちだろーねー…?」
力ずくは好きじゃないんだけど、と呟いて、想楽さんの顔が近づいてきて、私の手首はソファにしっかりと縫いとめられる。私の足を想楽さんの膝が割って、舌なめずりをした想楽さんに見下ろされて、私は思考が停止する。少し幼いその顔に意地悪な笑みを浮かべた想楽さんが、全身で、男っぽく私に言う。
「そろそろ、聞きなれた声も聞かせてよー……」
降ってきたキスが、子供みたいなじゃれあいの終わりを告げた。待っているのは大人の時間。私は大人しくそれを受け入れて、想楽さんを求めるように舌先をそっと想楽さんの唇から侵入させた。