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[想楽P]改札前の一部になって

全体公開 1 1344文字
2018-04-14 20:59:46

「帰したくないなー」

デートの終わりはいつだって、少し寂しい。そんな想楽君とPさんのお話です。

Posted by @toasdm

 帰りたくないくらいがちょうどいいデート、なんて、誰が言い出したんだろう。少なくとも僕はそんな風に思った事なんてない。いつだって、デートの終わりは寂しくて、名残惜しくて、つまんない。プロデューサーさんだってそうでしょー?だってさっきからちらちら時計見てるし、ため息ついてるし、僕のシャツの袖掴んでるし。困ったみたいなお顔とおててが、さっきからずっと言ってるもんね。まだ、帰りたくないよー、って。
 別れ際の駅の改札前には、きっとそんな気持ちの人達があちこちにいて、それぞれがみんな、僕達みたいな寂しさを抱えてるんだと思う。僕達はその一部。駅に溢れる寂しさの一部なんだろうね。はあ、とため息をついた僕の方を見上げて、プロデューサーさんはくすっと笑って手を離した。
 「もう、帰りますね」
 「えー、もう帰っちゃうのー?」
 このままじゃ、いつまで経っても帰れそうにないです、って言ってるけど、僕だっておんなじだからね。いつまで待ってても、プロデューサーさんを帰したくなんてならないし、なんならずっと、帰したくないまま朝になればいいのに、とか思ってるからね。知らないだろうけど。既に電車を七本見送った改札前、僕の袖から離れた小さいおててを可愛く振って、またね、って笑うプロデューサーさんが改札に向かう。
 「あー、待って」
 え?って振り向いたプロデューサーさんの肩をぐっと掴んで、僕は最後のワガママを始める。
 「そ、っ想楽さんここ、人目」
 「大丈夫だよー、きっとみんな、おんなじだからねー」
 そうだよね、きっとみんな、帰したくない人と帰りたくない人ばっかりなんだ。そうじゃない人だけがすんなりと通れる改札の前、残っているのはみんな、どっちかだ。帰りたくない人か、帰したくない人。だったら、この気持ちはわかってくれると、思うんだ。帰したくない人達には、わかってもらえると思うんだ。
 「帰したくないなー」
 抱きしめられて耳元で囁かれるのに、弱いんだったよねー?合ってたみたい、プロデューサーさんは黙って大人しく、僕の腕の中に収納されてる。流石の僕でも、ここでこれ以上はちょっとね。だから、僕のワガママはこれが、精一杯。帰りたくないです、って僕の胸に押しつけたおでこを指でつん、って突っついて、僕はプロデューサーさんの顔をじっと見つめる。可愛いなぁ、って毎秒思ってるよー、なんて言っても、きっと信じてはくれないだろうけど、ほんとにそう思ってるんだよねー。
 「でも、帰らないとだよねー」
 「ふふ、そうですね」
 お別れ前の抱っこの最後、もしも僕達が改札前の一部なら――
 「今日も、楽しかったねー」
 「はい
 「おやすみなさい」
 おでこにキスするくらいなら、きっとみんな、目を瞑っててくれるよね。

 不意打ちのキスに驚いたプロデューサーさんだけが、目を瞑ってない改札前。僕は腕を離して、またねー、って手を振って駅を出た。帰したくない人と帰りたくない人が、改札前から一人ずつ減って、夜の駅はゆっくりと、朝に向かって時間を進めていく。見上げた空にはぽかん、とまあるいお月様。月明かりが地面に落とした自分の影を踏みながら、僕はおうちに向かう道をにまにましながら歩いてた。


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