@toasdm
触れ合った唇、微かに漂うお酒の余韻と熱を移されて、んん、と小さく喘ぐ彼女の右手はクリスのシャツの胸元を掴んでいる。薄眼を開けてそれを見とめると、クリスはそのか細い手首を掴み、唇だけでなく体までもぴたりと合わせて笑う。
「酔っているから、と、思っていませんか?」
いつもと同じ穏やかな優しい言葉遣いが、酒と雄とに彩られて彼女の耳元に注ぎ込まれる。びくりと跳ねた彼女の体を抱きしめたクリスのミルクティー色の長い髪の毛が、一筋彼女の頬にかかる。くすぐったさにまた跳ねる体を押さえ込むようにして、クリスは彼女を組み敷いたまま、酒の香りを混ぜた吐息を吐き出す。
「酔って、ないんですか…?」
「ふふふ……さあ、どうだと思いますか?」
言ってクリスはまた唇を、彼女の唇と触れさせる。軽く一度触れさせて離れ、今度は角度を変えて口の端に優しく押し当て、また離れる。反対の端にも同じように触れ、ぷるりと肉厚な彼女の下唇を味わうように食みながら吸い付き、舌先でくすぐる。そのまま顔の角度を変えて、上唇の内側に舌先を侵入させたクリスは、ちら、と目を開けて彼女の反応を見る。ぎゅ、っと目を閉じてクリスの口付けを必死で受け入れる彼女の一生懸命な表情にクリスは胸を締め付けられた。柔らかな唇の感触と熱が、クリスに熱を灯していく。その熱に誘われてより深く彼女の唇をクリスが求め、彼女は口を少し開いて舌を出してそれを迎えた。
クリスの舌先が、彼女の歯列をするりとなぞる。んんん、と漏れた甘い声をクリスの唇が塞いで吸い込む。そのままさらに舌を進めて、上顎をくすぐり、彼女の舌を絡めてくるくると、口の中で弄ぶ。ただ受け入れるだけの彼女の舌が、クリスの舌の愛撫に応えて、今度は私が、とクリスの口の中へと伸ばされる。クリスもそれを受け入れて、彼女の好きにさせてやる。先ほどクリスがしたように、舌を絡めて側面をなぞり、そのままクリスの上顎を舐めて歯列に沿って舌を這わせる。んっ、と思わず漏れたクリスの声に、彼女は目を開けて、自分を見下ろすクリスの顔に視線もすっかり奪われる。
「ん…ふふ、ぁ……はあ…」
「んっ、あ、ふぁ…………クリスさん、ずるい…」
「ずるい、ですか…?」
やっと呼吸ができる、と息を乱した彼女はクリスの首に手を回して縋るように抱きついてずるい、と繰り返す。なぜです?と額を合わせて微笑むクリスに、上気した頬を膨らませた彼女が恥ずかしそうに言う。
「私、クリスさんみたいに、長時間素潜りなんて、できませんよ…」
「ああ…そういうことですか」
なるほど、とくすくす笑い、クリスは再び軽く唇を合わせて、でしたら、と妖艶に微笑む。
「でしたら、慣れるまで、何度でも」
私に溺れてください、とクリスはもう一度彼女の呼吸を奪うキスを始める。人工呼吸はできますから、とキスの合間に意味のない事を言うクリスは、彼女を組み敷いたまま抱きしめて笑う。ちゅ、と唇が立てる音だけが響く夜、酔いが醒めるまではまだまだ、時間がかかりそうだ。彼女を攫うクリスの海は、穏やかなまま夜の嵐を巻き起こしていた。