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[硲P♀]等価交換

全体公開 1 1564文字
2018-04-18 12:54:42

「君は、マッスルフェチだっただろうか?」

硲さんの二の腕をもにもにするPさんと、等価交換を要求する硲さんのお話です。

Posted by @toasdm

 一日の疲れが少しずつ抜けていく。夕飯で少し抜け、お風呂で少し抜け、そして今、道夫さんの腕枕で全部抜けていく。ほぁ、とリラックスした私の体から出てくる情けないため息に苦笑しながら、道夫さんはゆったりと仰向けのまま、腕に私の頭を乗せてくれている。
 頭の下に感じる道夫さんの腕は、程よい弾力と引き締まった筋肉を感じるようで、とても男性らしいのに、どこか道夫さんらしい。ふふふ、と笑った私の方を向いて、道夫さんはおでこにそっとキスをしてくれた。
 「何を笑っているのだろうか」
 「え、ふふふんーん、なんでも」
 「なるほど君は、なんでもないときに急に笑い出すような、おかしい人だったか」
 その言い方はひどいですよ、と言いながらも、抱きしめられた腕の道夫さんらしさに私は嬉しさと、多分これは興奮?のような気持ちを隠しきれずにまた笑ってしまう。
 「まだ笑っているということは、余程楽しいことがあったのだろう――教えてはもらえないのだろうか?」
 「ええと……
 道夫さんの腕の中で私も道夫さんの方を向き直り、向かい合わせになって抱きついたまま、私は言葉を選び始める。頭の下でその存在を主張するしっかりとした道夫さんの腕、そこにそっと手を添えながら。
 「道夫さんの腕枕、気持ちいいな、って思ったんです」
 「腕枕……?」
 「はい。うまく言えないんですけど、ガッチガチに硬いわけではなくて、しっかり引き締まっているのにどこか柔らかくて、弾力と男性らしい筋肉の絶妙なバランスが最高だな、って」
 「……ふむ、君はマッスルソムリエにでもなったらどうだろうか」
 「ま、マッスルソムリエ!?そんな素敵な職業あるんですか?!」
 「フッ、あるわけがないだろう、冗談だ」
 素敵とはなんだろうか、と相変わらず道夫さんの二の腕をもにもにと触り続ける私のおでこを人差し指で小突きながら、道夫さんは笑って言う。
 「君は、マッスルフェチだっただろうか?」
 「え、うーんそういえば、意識したことなかったですねでも、男の人の筋肉質な二の腕って、ある種のセックスアピールというか……こう、男性らしさの象徴、って気がしませんか?」
 「ふむ、確かに。君の言うとおりだろう」
 なるほどなるほど、といった様子で考え込む道夫さんの二の腕を、私はここぞとばかりにもにもにし続ける。くすぐったいからやめなさい、と言われたところで、この絶妙なバランスを保った奇跡の二の腕を堪能するのはやめられそうにもないのだよ、とにまにまする私の耳元で、道夫さんは小さく呟いた。
 「つまり、私の二の腕を差し出す代わりに、君の女性らしさを感じる部分を差し出してもらえる、ということだな?」
 「んぇっ!?」
 等価交換だ。耳に滑り込んできた道夫さんの低い声に、どきっ、と鼓動が跳ねる。道夫さんの手が私の腰にまわされて、その手がゆっくりと背中を通ってわき腹を抜け、胸の手前でぴたりと止まる。思わずぱっ、と道夫さんの二の腕から手を離した慌てる私の様子がそんなにおかしかったのか、道夫さんの手はそのまま私の背中に戻ってとんとんと優しくあやすように叩いている。
 「君は本当に可愛い反応をするのだな」
 「う、あ、えっ、あ!?からかったんですか!?」
 「さあ、どうだろうか」
 低く男性らしい落ち着いた声で笑いながら、道夫さんは私を抱きしめて頭を撫でてくれる。からかわれた気恥ずかしさと一緒に徐々に眠気が襲ってきて、私はそのままあくびをもらす。
 「もう遅いそろそろ寝てしまいなさい」
 からかいや冗談で済んでいるうちに、とその後小さく聞こえた気がしたけれども、眠りの淵からふわりと落ちた私の意識は、その言葉のしっぽをつかんだまま、ゆっくりと夢の中に落ちていくだけだった。


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