@acbh_dmc4
BH、半ヴァンピーロとなって目覚める。R、ホッとした表情でBHの頬を撫でる。
「やっと、目覚めたか…エツィオ…ずっと君が目覚めるのを待っていた」
「……領…主…」
「苦しかっただろう?済まなかった…だが、君が完全なヴァンピーロとなるにはまだもう少し掛かる。今は、まだ体が安定していないから、もう少し休みなさい」
「…はい」
「ああ、だが眠る前に、血を飲みなさい…きっと楽になるから」
「…ち、を…」
血のオーダーをして受け取りBHの元に戻るR
「さぁ、エツィオ。飲みなさい」
BHの体を抱え起こしてグラスに注いだ血を飲ませる。
血の味に咽るBH。Rは慌ててグラスを脇に置き、BHの背を撫でる。
「大丈夫か?苦しいのか?」心配そうな顔をするR
「……ゲホッ…すみません、…あまりに…血に…エグみがあって…」
「…そうなのか?一応、一番新鮮で上質なものを持って来てもらったのだが…」
「……味に慣れるまで、少し…時間が掛かりそうです」
「そうか。だが、このグラス1杯は頑張って飲むのだ。血と言うものはヴァンピーロにとって力となる。君の体に流し込んだ私の血が、君に馴染む手助けになる筈だ」
「はい」
***
R、手紙を読みながら困った顔になる。
それを見たBHがどうしたのかと訊ねる。
「…いや、私の旧知の友からの便りなのだが…どこで聞きつけたのか、私が君をヴァンピーロにした事で顔見せをと、催促されていてな…新しくヴァンピーロが生まれると、登録をすることになっているのだが」
「登録、ですか…」
「…だが君は今、身重だ…いつ子が産まれてもおかしくない。そんな状態での長旅は避けたい」
BHお腹を見下ろす。
「子を作るのは俺が目覚めてからにする約束だったのに…勝手に作るから…」
「…ヴァンピーロは子を生しにくい筈なのだが…確かに我慢が出来ず、君が死している間中ずっと求めてしまったが…まさか体が安定していないのに孕むとは思わず…私と君は相当相性が良かったらしい」
赤くなるBH。
「一先ず、子を産んで君の体調が整った後の訪問となるだろう。正直に現状を話してみるよ」
****
数日後、マキャベリが訪ねてくる。
「導師、お久しぶりです」
「マキャベリ!まさか君自らこちらに来るとは…忙しいだろうに…」
「ええ、おかげさまで調整に苦心いたしました」刺々しい
「……すまない」
「で、新しいヴァンピーロとなった方はどちらに?」
「ああ、こっちだ。今、部屋で休んでいる」
マキャベリを寝室に通すR。
「これは…本当に孕んでいるのですね」
「ああ。いつ生まれてもおかしくない」
「……あの、こちらは…?」訝しげにマキャベリをみやるBH。
「申し遅れました。私はマキャベリです。ベルナルド・ディ・ニッコロ・マキャベリ。よろしく」
「俺はエツィオと言います」
「私の妻となる。今後姓はアウディトーレを名乗る事になる」
「そうですか。では子が産まれてからの儀式となるでしょうから、準備期間がありますね。今回は特例ですよ。そもそも、ヴァンピーロとするには必ず私に相談するようにと言っているのに、それすら決まりを破っているのです。導師たる貴方が掟を破るなど、他に示しがつかないでしょう!」
「ああ、わかっている。マキャベリ、身重の妻の前だ…申し訳ないが説教なら私だけで聞くから。エツィオ、そんなに心配するな」
不安そうにRを見上げるBHに気付いて咳払いをするマキャベリ。
部屋を出て歩きながらマキャベリと話すR。
「人をヴァンピーロにするのに厳格な審査をする重要性はわかっている。我々が増えすぎても良くない」
「導師の選んだ方ですから、おかしな人間ではないと承知していますが、一言でも相談が欲しいところでした」
「ああ…私も、焦っていたのだ…あの子が奪われやしないかと。アレは、テンプル騎士団が作った組織に居た。彼自身、詳しい内情は知らなかったようだが、常にマークしていた人間の組織だ」
「まさか、ロムルスですか?」
「ああ。彼を得る為に、その組織を私が壊滅させた」
「それは聞いておりましたが…導師、少し勝手が過ぎます」
「ああ、分かっている。だが彼に出会ってから、私の全てが変わった。今までは自分の心を律し、組織や国に奉仕してきたが、彼を前にすると押さえが利かなくなる。彼は、私の欲望そのものなのだ…」
「ですが、そうすると彼はテンプル騎士団に狙われますよ。早急に完全なヴァンピーロとしなければ…」
「ああ、だが彼の体は不安定だ。私の血の護りで、命を落とす事はないと思うが…正直、子供が無事に生まれるかも分からん」
「………」
「あの子を完全なヴァンピーロとするのも、様子を見ねばなるまい」
「子が出来たのは隠さねばなりませんね…噂として流れてきたのは、貴方が何者かをヴァンピーロにした、とその事だけです」
「その噂が流れたのは…あの子に誓いを立てさせたのが、ロムルス教団のアジトの近くだ……見られていても不思議ではない。…軽率だった」
「……貴方が築いてきた功績は、アサシン教団の誇りです。その貴方に、掛け替えのない者が出来たのは良い事です。ですが、こんな事はこれっきりにしてください」
「ああ、分かっている」
***
会議中、アサシンに呼ばれて退出するR。
誰も居ない部屋に警戒して入り、報告を聞く。
子を産み落としてからまた、深い眠りについてしまったBHの目覚めを報告されて、喜ぶR。
「奥様の目が覚めました。導師を探しておいでです」
「…!!…そうか、では直ぐに戻る」
暫く休みを取ると宣言し、急いで屋敷へ帰るR。
BHの眠る寝室へ直行する。
「エツィオ!!」
「…りょ、う…しゅ…」
「ああ、エツィオ!」
「おれは、ねむって、いたのですか…」
「ああ。ああ、そうだ…大丈夫か?体は辛くないか?」
「……体が、だるくて…」
「そうだろう、そうだろうな。相当な無理をさせてしまった…、君の体が安定してから子を生すべきだった…済まない、エツィオ…」
ぼんやりとして天井を眺めるBH。
RはBHの手を握って心配そうに見つめる。
「子……供…」ポツリと呟く。
RはBHを見つめる。
「赤ん坊の…泣き声が…聞こえる……」
BHがそう言うのと同時に部屋に2を抱えた子守が入ってくる。
不思議そうに眺めるBH。Rが子守から赤子を受け取って戻ってくる。
BHに良く見えるように子を抱きなおし、ベッドに腰掛けるR。
「私達の子供だ。君が、産んでくれた子だ」
「おれ、が…?」
きょとんとした顔になる。次いで、BHがお腹に手を這わせて、ぺたんこになっているのに気付く。
「ええと、乳の時間だったかな?」子守りに聞く
「はい」
「エツィオ、この子に乳を上げてくれ」
「……?ち、乳?ど、どうやって…?」
「君の胸から乳が出るから、この子に飲ませてやるのだ」
「……は?」
固まるBH。にこやかなR。
固まったままのBHを見つめて、はてなを飛ばすR。
「…エツィオ?」
「……俺から、乳が…出る…?」
「ああ、そうだ、ほら、抱いてみなさい」
2を渡され、少々慌てるBH。BHに抱かれると泣き止み、きょとんと見上げる2。
(……か、可愛い)
「ボタンを外すぞ」
「えっ」
BHの前を肌蹴させるR。BHの腕をRが支えてBHの乳首に2の口を近づける。
ちゅうちゅう吸い付く2と、また完全に固まるBH。
「この子が吸いきれない場合は、乳を絞ると良いらしい。ちゃんと手伝ってやるから安心しろ」
「……め、めまいが…」狼狽するBH。
「だ、大丈夫か?!気分が悪いのか?!」慌てるR。
「……いいえ、この状況についていけないのです…俺は、男なのに…母乳まで出るなんて…」
「…まぁ、お前に膣もつけたしな…意識がある時に、早く君のそこに包まれたいものだ…」
「りょ、領主!」真っ赤になって怒るBH。
笑って口付けるR。
「君に似てとても可愛い子だ…」
改めて2を見下ろす。
夢中で乳を飲む2に、思わず笑むBH。
「ああ、貴方との…子…」
優しく撫でる。
BHの頭を片腕で抱くようにRの肩に引き寄せて、一緒に2を見下ろす。
「エツィオ、私は…とても幸せだよ」
幸せそうに微笑むRを見上げて、照れくさそうに笑むBH。
「俺も、幸せです」
***
マキャベリが屋敷に訪ねてくる。
「久しぶりだな。マキャベリ」
「ええ。導師、エツィオ殿。おや、その子がご子息ですかな?」
「そうだ。可愛いだろう」
「ええとても。エツィオ殿にそっくりですな。この子のお名前は?」
「エツィオだ」めっちゃ良い笑顔R。あーあといった顔で下向くBH。
「……導師…」
ん?という顔のR。
「貴方も、エツィオ殿も、この子も全員エツィオという名になってしまっているかと思うのですが…」
「そうだ。愛しいものの名前を呼びたいと思ってな。妻の名前をつけたのだ」
「エツィオ殿は説得しなかったのですか」
「しようとしましたが、どうにも言葉が出てこず…」
「ああ、思考がままならないのですね。半ヴァンピーロでしたら仕方のないことです。ですが、本日で完全なヴァンピーロとなれます。お体も頑丈になるでしょう」
「その事なのだがマキャベリ…この子の完全な変化は今回は見送ろうと思う」
「なんですって?!」
「この子は、血を吐き戻してしまうのだ。完全なヴァンピーロになってしまえば、暫くの間、日を空けずに血液を摂取せねばならないし、半ヴァンピーロなら月に数度、それも少量の摂取で済む」
「ですが!もしかしたらテンプル騎士団に、狙われているかもしれないのですよ?!自分の身位護れる力を持たないと…!」
「それについては、私が一緒でない限り屋敷から出ないようにする。もし私が居ない時に襲われたのならば、彼の心が恐怖や混乱し荒れた時は、この子の体に私が憑依する。この子の体に流れる血は私のものだ。魔力は使える」
「あまり良い考えに思えません。貴方の血を引くならば、きっと強力なヴァンピーロとなるはずです。テンプル騎士団の脅威に立ち向かえる強力なヴァンピーロが一人でも増えた方が、教団にも、彼自身にとっても良い筈です」
「だが、彼はそれを望まない。私は彼の意思を尊重したい。それに、遅かれ早かれ私の血が、彼の体をヴァンピーロに変えていく。じっくり馴染ませていったほうが、より強力なヴァンピーロとなれるだろう」
「エツィオ、貴方は導師の足手まといになりたいのですか?」キッとBHを睨み付ける。BHがたじろぐ。
「マキャベリ。私の妻を脅すな。彼をヴァンピーロとしたのは、強制的にしたのだ。彼の意思を尊重したものではなかった。せめて、その償いを…今度こそは彼の意思を酌んでやりたい」
「俺は、無理やりヴァンピーロになったわけでは…貴方と一緒に居たいと、俺が望んだ事です」
「だが私は君が望まなくとも、君をヴァンピーロにした。私にとって、無理強いしたのと変わらん」
「…ですが、貴方の…足手まといになるというのなら…」
「君が心からヴァンピーロになりたいと望むのなら叶えよう。だが、私に対する負い目でヴァンピーロになるというのなら、止めておきなさい。良く考えて、自分で納得出来る答えを出すのだ。それに、私は君を護れるくらいの力はあるつもりだよ」
マキャベリ額に手を当て、何を言っても無駄だと絶句する。
「では、行くかな?」
「ええ…」
****
「ユスフ」
「導師!お待ちしておりました!おお、そちらがお噂の、導師のハートを射止めた美しきフィアンセ殿!」
「エツィオだ。エツィオ、こちらがユスフ」
「初めまして…」
「初めまして!案外見た目は男らしいのですな!前の奥方とは別のタイp…」
Rに睨まれて口に手を当てるユスフ。
「はぁ、相変わらずですね」
「マキャベリ殿もお元気そうで」
「ええ。準備は出来ているのでしょう?早速、宝物庫へ」
「ええ、構いませんよ!登録の儀はさっさと終えていただけると、皆を待たせずにすみますからな」
「皆?」訝しげに聞くマキャベリ
「ええ!なんと言っても導師の婚姻の儀がメインで企画しているのです!それはもう、アサシン教団総出でお祝いしなければ!」
「何を考えているのですか!今回あまり目立つような事はしたくないと、手紙にも書いたでしょう!」
「ですが、あの導師のご結婚を地味に終わらせるのはなしでしょう!漸く心を癒してくれる存在に出会えたのです。式自体はアサシンのみでお祝いしますから、そんなに派手でもありませんよ」
「式自体やる必要がない事なのです!貴方はテンプル騎士団と戦争がしたいのですか!?」
「ですが、導師ともあろうお方の祝いが無しだなんて。アサシン達にとっても導師が妻を娶って、しかも子まで生したのです!士気を高める為にも、こういう祝い事はやらねば」
「有難う。マキャベリ。慎ましくやるといっているのだし。それに、万が一エツィオの居所がテンプル騎士団に知られても、ローマに入る事すら容易には出来まい。屋敷にも護りを敷いているし。警戒は怠らないよ」
「仕方ありませんね…」
「では今日は夜通し宴会ですな!」
「派手にやるわけではないのですよね?!」
宝物庫へと降りる5人。
「エツィオ、こちらへ。この秘宝に触れれば、君の過去や心をこの秘宝が記憶する」
「一部は我々にも見えるようになります。本来ならばヴァンピーロになる前に、この秘宝で人物を精査するのです」
「まぁ建前はな。実際、グール上がりのヴァンピーロや、テンプル騎士達に無理やりヴァンピーロにされて逃げ延びた者達も居る」
「ですが、責任ある導師たる者は本来ならば独断でヴァンピーロを作るべきではないのです」
「ふふふ…導師は昔から変わりませんな。そうした方が良いと判断したら、一々精査したりしないですから」
「ああ、そういえば貴方も導師にヴァンピーロにしてもらったのでしたか…」
「え…」BHがユスフを振り向く。
「さぁ、エツィオ殿、秘宝に触れてください」
BH、ユスフが気になりつつ、りんごへと触れる。
周りにこれまでのBHの人生が断片的に映し出される。
裏切りで親を目の前で殺され、自らも追われる身となって、なんとか追っ手から逃れる日々を過ごすうちにロムルスに拾われる。
元々教団とはそりが合わずに好き勝手していたが、実力が確かで幹部からも気に入られた為、組織では自由にしていた。
手汚い事をやる教団にBHは軽蔑していたが、ある時幹部の男がBHを近々ヴァンピーロとすると話しているのを聞き、慌てて教団から逃げる。
その際追っ手を掛けられ負傷する。
そして倒れたところでRに拾われる。
その過去の映像を見せられ、動揺するBH。
「もともと貴方は貴族の出だったのですね…お辛かったでしょう」
マキャベリが声をかけ、ハッとするBH。
ゆっくりと振り返り、Rを見上げる。
Rは優しく微笑みを返して、BHの手を取り、肩を抱く。
「頑張ったな。これで秘宝に君の事が記された」
「次は婚姻の儀を執り行いましょう!宴の用意はできておりますから!さあさあ!しんみりした空気を吹き飛ばしましょう!」
豪快に笑うユスフに、BHがまた気になりあからさまに見つめる。RはそんなBHを見て少々ムッとする。
一度身支度をするために城の個室へ移動するRBH。
R、大きめの箱を取り出してBHに渡す。
「エツィオ、君に着て欲しい服がある…ヴァンピーロの装束なのだが」BHにアサシンローブを渡す。
BH、装束の美しさに驚く。
どう見ても高価そうなその装束に申し訳ないような顔でRを見つめる。
「君にはこの純白の衣が良く似合う。私達の生命の源である血のような赤も」BHの右の髪を撫で梳く。
「貴方も見たでしょう?俺は、そんなに綺麗なものじゃない。汚い事に平気で手を染めてきた…」
「そんな過酷な生の中で、君の輝きは失われなかった。十分、いいや…他の誰より、何よりも君は美しい」
暗い顔をしているBHの顔を上げさせ、あやすように口付ける。
「私の妻になってくれるか」
「……貴方がそう、望んでくださるなら…」
アサシンローブで庭園に出てくるRとBH。
アサシンたちが総出でお祝いする。
Rがアサシンの儀式の「真実はなく、許されぬ事等無い」の合言葉で結婚式は〆
****
婚姻の儀式後、皆でワイワイとお祭り騒ぎの中、BHがユスフの元へと近づく。
「…あの、ユスフ殿…」
「おお!奥方!楽しんでおられますかな?」
「ああ、とても。………その、聞きたい事があるのだが」
「ええ、私でよろしければ何なりと」
「……その、貴方はどうして…ヴァンピーロになったのですか…」
「……うーん、これを話して良いものかどうか…貴方にとっては面白くない話だと思いますよ?」
「…貴方は領主にヴァンピーロにしてもらったのでしょう?知りたいのです」必死な顔でどうしてもと言い募るBH。
「うーん、導師には私から聞いたと言わないで下さいよ?導師がもう少し若い頃です…」
導師は昔から強力でとてもお優しいヴァンパイアでした。
不遇な扱いを受けるヴァンパイアを助け出し、教団に加え、そして人との間の架け橋となるべく、当時から人の世でも活動をしておりました。
導師がコンスタンティノープルへいらっしゃり、現地でアサシン教団の体制を整え始めた当初は、私もまだ人間でした。
ですが王室の警備の為、王に仕えていた私は、導師と話をする機会が多々ありました。
コンスタンティノープルではヴァンパイアの被害も多く、民は苦しめられていたのです。
そこに導師が色々と手を尽くし、徐々に平和になっていったのです。
暴れるヴァンパイアやグールたちを説き伏せ、教団に引き入れて教育を施し、国の特別傭兵部隊としました。
今ここに集まっている者達ですがね。その時、結成されたものたちです。
精力的に働く導師に、王や民達も皆彼を慕いました。
そしてその合間に、彼の妻と成るソフィア・サルトルと出逢い、心を寄せ合い、穏やかに交流を取っておりました。
皆、二人を応援したものです。
導師にとってもコンスタンティノープルの民にとっても、穏やかな時は長くは続きませんでした。
ある時、ビザンツのヴァンパイア…テンプル騎士のヴァンパイアと大きな抗争になりました。
導師はその時の指揮を執っており、圧倒的にアサシン教団の優位でした。
私自身も当時は人間でしたが、戦いに参加しました。
何度かの奇襲を受け、退けていた時でした。ソフィア嬢が狙われたのです。
私は必死でソフィア嬢を護ろうとしました。
今の私には軽く捻れる程度のヴァンパイアではあったのですが、当時の私は非力な人間。
力敵わず、ヴァンパイアの手に掛かり、瀕死の状態でした。
そして悪い事に、ヴァンパイアは人間の勢力を抑えるべく、私にヴァンパイアの血を流していったのです。
きっと私に仲間を襲わせようとしたのでしょう。
貴方もご存知でしょうが、ヴァンパイアの血は猛毒です。
そして少量だけ投与されると、酷く苦しみ、その果てに血に餓えたグールとなります。
私は酷く苦しみました。その最中、導師がソフィア嬢を匿っていた隠れ家に飛び込み、私を見つけてくださいました。
導師は、私を見て全てを察してくださったのでしょう。
私にヴァンパイアとなる覚悟はあるかと、このままではグールになってしまう、ヴァンパイアとなって導師の元で働くか、ここで生を終わらせるかと問いました。
正直、激しい痛みでいっその事死んでしまいたいと思いました。
ですが、導師に信頼し、任されたソフィア嬢を護りきれず、私は無念で一杯だったのです。
私は導師に願いました。ヴァンパイアになりたいと。
導師は私の言葉に頷き、私をその場でヴァンパイアとすべく、彼の血を分けてくださいました。
数時間ほどで目覚め、私の近くに居たアサシン教団のヴァンパイアに、現在はどうなっているのか聞きました。
周りの者達からは止められましたが、ヴァンパイアになり立てで、思うように動かない体で指揮を執り、私もテンプル騎士と戦ったのです。
戦いの最中に、導師が無事ソフィア嬢を取り戻したと一報が届きました。
その一報に鼓舞され、私達アサシンの勢いは増しました。
テンプル騎士団を完全に追い返すと、あとは導師とソフィア嬢の帰りを待ち、彼らが結ばれるのを国総出で祝ったのです。
「……何故、領主は彼女をヴァンピーロとしなかったのだろう…」
「…それは我々としても疑問でしたが…きっと、ヴァンピーロに変わる際の苦しみと、永遠の生に彼女をつき合わせるのを躊躇したのでしょう」
「………」
ユスフが顔を上げるとRと目が合い、苦笑する。
「導師は、貴方に随分と執着なさっているようだ…あんなに睨まなくとも、導師の奥方に手を出したりしないのに」
ん?とユスフを見てからユスフの視線の先に居るRを振り返る。
若干険しい顔で、こちらへと向かってくるRに?顔をするBH。
「エツィオ、随分ユスフと親しそうだな」
「?貴方の事を聞いていたのです。昔の貴方はどんな方だったのか…今と同じでとても有能な指導者だったのですね」
「……い、いや…そうか…」ユスフをチラッと見る。
ユスフ、悪戯っぽい笑顔で一礼し、下がる。
「……ソフィアと言う方は、どのような女性だったのですか?」
「…ソフィアの事も、聞いたのか?」
「少しだけ…」
静かにRを見上げるBH。
困ったように眉尻を下げるRに、答えるまで無言で見つめるBH。
「素晴らしい…女性だった。とても利発で、好奇心が強く、人の為にどこまでも尽くせる、とても芯の強い女性だった」
「……俺とは正反対ですね」
「そうかな。芯の強さは君も折り紙つきだ」
「しかし何故、彼女をヴァンピーロにしなかったのですか?」
「………そうだな、ヴァンピーロの生は長く辛い。それにお前も分かっていると思うが、ヴァンピーロになること自体苦痛を伴うし、失敗する事もある。ただでさえ彼女を危険な目にあわせてしまった…彼女さえ幸せであればそれでよかった」
「では、何故俺は、ヴァンピーロにしたのですか?」
「……隠し立てしても、仕方がないだろうな………君は、私の欲望そのものなのだ。どうしても欲しかった。もし血が合わず、ヴァンピーロになるのが失敗していても、お前の体が残るのなら構わなかった。勿論、愛しいと言う思いもある。だが、君に最初に感じるものは愛情と言う温かなものではない…酷く身勝手で汚い…私の、奥底に潜んでいる本能だ」
無言で見つめあう二人。
「失望したか?」
「いいえ。とても嬉しいです」
目を伏せ微笑むBH。
「同じ想いでは嫌だ…」
真顔で真っ直ぐRを見つめ返す。
この子には敵わないという風に笑うR。