@toasdm
瞼越しの光の強さに揺さぶられた意識、音と匂いを知覚して一気に覚醒した体を慌てて起こすとみしり、と軋んで鈍く痛む。んぁ、と思わず漏れた声も掠れていて、起こしたつもりの上半身もどちらかといえば、すこし持ち上げた程度にしか動かせない。辛うじて擦りながら開いた瞼と傾けた顔を横に向けると、くつくつと喉の奥を鳴らして笑う雨彦さんの気怠げな顔がこっちを見ている。
「おはようさん」
汗で張り付いて乱れた前髪をかきあげながら雨彦さんは、まだ寝てな、と私の頭を無理やり抱えて腕枕に閉じ込めてから、この世の全ての優しさを集めたような大きな手で、私を包んで撫でてくれた。カラカラの喉、怠さと甘い痺れの余韻が残った私の体は抵抗する力もないまま、雨彦さんに抱き寄せられる。頬に張り付く逞しくてがっちりとした、バランス良く筋肉のついた雨彦さんの胸板の感触と鼓動に、昨夜の記憶が呼び起こされた。かぁぁ、と急速に顔が熱くなる。素肌と素肌、体温と体温が混ざり合う朝のベッドの中で愛おしげに私を掻き抱いた雨彦さんが、私と同じく掠れた声で、悪かったな、と耳元で囁いた。
「悪かったな、昨日は…手加減ができなかった」
「な、うっ、そんな……んっ」
そんな恥ずかしい事をわざわざ言わないでほしい、と言いかけた私の唇を人差し指で制止して、雨彦さんはニッ、と笑っておでこをおでこにくっつけてから目を閉じて、はぁ、とため息を吐いた。
「そんな声になるまで、お前さんを鳴かせちまったなぁ……」
途中記憶がとびとびになってはいるけれども、いや、記憶がとびとびになっているから?とにかく、声も体も頭も耳も、雨彦さんのその一言で嫌でも夜を思い出す。恥ずかし過ぎて勘弁してほしい、とやり場のない羞恥にくらくらする私の目の前で、雨彦さんの切れ長の目がゆっくりと開かれる。妖しい光と艶を湛えた瞳にじっと見つめられたまま、上手く息もできない私に雨彦さんが、この上なく甘い声でトドメを刺しにくる。
「よかったぜ……お前さん」
可愛かった、とさらに追撃。この色気は法律かなんかで規制しないとダメなんじゃないだろうか、とくだらない事を考えていなければ、とてもじゃないけどやりきれない。葛之葉雨彦色気規制法について詳細をまとめなければ……。お前さん、またくだらないこと考えてないか?と笑う雨彦さんの頬をむにゅ、とつまんで、ついでに壁掛け時計をちらりと確認する。時刻は、休日の午前十一時半を過ぎたところだ。