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[雨P♀]一盗二婢三妾(いっとうにひさんしょう)

全体公開 1 2171文字
2018-05-09 08:27:37

……生きててよかった!」

雨彦さんが突然メイド服を着せてくる素っ頓狂なお話です。ほんのりR15風味。

Posted by @toasdm

 これを着てみてくれないか、とニヤつく雨彦さんに手渡された紙袋。開けてみると中には所謂その
 「メっ、メイド服、ですか……?!」
 「ただのメイド服じゃないぜ」
 さっと袋から取り出して、雨彦さんはそれを広げて私に見せつける。
 「ロング丈のメイド服さ」
 どうやらこの間想楽さんと訪れたメイドカフェでよさに気付いたらしい雨彦さんは、満面の笑みで着てみてくれないか、と再度微笑んで私にそれを差し出している。私は知っている、こうなった雨彦さんは何が何でもこれを着せるつもりなのだ、ということを。変な事しないでくださいね、とため息混じりに観念した私に、当然だろう、これは仕事着さとウィンクをする雨彦さんに背を向けて、私は寝室に籠る。着替えの最中は覗くつもりもないのか、雨彦さんは大人しくリビングで待っている。可愛いからいいけど、と、一抹の不安を胸に抱きながらも、いつもと違う服装に私は少しだけドキドキしている。
 姿見の中にはまあ、それなりにうまく着こなした自分が映っていて、フリルのついたカチューシャに合わせてすっきりとまとめた髪の毛と丈の長い真っ白のエプロン、控えめにふんわりとしたパフスリーブとアンクルまであるロングの黒いワンピース姿の私は、どこからどうみてもメイドさんだ。メイドカフェの店員さんのような可愛らしさよりも、落ち着いた、お屋敷勤めのクラシカルなスタイルのこれは恐らく、雨彦さんの趣味だろう。着替えました、と声をかけてからリビングに戻ってみると、眼鏡をかけてソファで本を読んでいた雨彦さんは顔を上げて、思わず前のめりになるみたいにして立ち上がりかけている。
 「ど、どう、ですか?」
 「……ああ、いい」
 人にこんなものを着せておいて、他に言う事ないんですか!!と叫ぶ私にやおら立ち上がり近づいてきた雨彦さんは、私の頬に手を添えて、ほぅ、とため息をついて目を伏せている。
 「…………
 「あの……雨彦さん」
 「いやそこはご主人様だろう」
 「はあ?!」
 大真面目な顔をしてきっぱりと言い放つ雨彦さんに、私は思わず声を上げる。ニヤリと笑って眼鏡のブリッジに指を添え、俺も着替えるか、と雨彦さんも寝室に消えていく。着替える、って何に?とまるで事情の飲み込めない私の目の前に現れたのは、スリーピースのダークスーツに身を包んだ、きりっとした雨彦さんだった。
 「これで少しは、ご主人様らしくなったかい?」
 相変わらず眼鏡はかけたまま、同系色のシャドウストライプのスーツを格好良く着こなした雨彦さんは、呆然と立ち尽くす私にもう一度近付いてきて、今度は私の体をふわりと優しく、包むように抱きしめて耳元で囁いた。
 「ほら、どうした?ご主人様のご帰宅だぜ?」
 「んへぁ?!」
 つまりこれは、そういうことなんだろうか?身なりはお屋敷勤めのクラシカルメイドだけれども、言うべきセリフはいわゆる、メイドカフェのそういう……。抱きしめたまま至近距離で私を見下ろす雨彦さんは、眼鏡の奥の目に期待の色を浮かべて細め、私の言葉を待っている。……こ、これも観念するしか、ないんですか……
 「うぅ……お、お帰りなさいませ、ご主人様……?」
 「……生きててよかった!」
 馬鹿じゃないの!?と口走らなかっただけ私はまだ冷静だ。人にこんなもの着せてこんなこと言わせておいて、言うに事欠いてそれですか?!と色々な感情が入り混じった私をぎゅ、と抱きしめた雨彦さんは、本当に、心底嬉しそうにさらに呟く。生きててよかった、と。なんだかどっと疲れた気がして脱力する私のスカートの裾に手を掛けた雨彦さんは、ごくごく自然にその手を内側へと滑り込ませてくる。あまりにも自然すぎて一瞬何が起きたのか理解できなかった私がその悪行に気がついた時には、雨彦さんの手はガーターベルトのストラップに掛けられていた。
 「ほぅ……ちゃんとこっちまで正装とは、うちのメイドはなかなかわかっているじゃないか」
 「ちょ、ちょっと雨彦さん」
 「ご主人様、だろう?」
 「もうやだこの人ー!」
 指を掛けたストラップをぱちん、と弾いて、雨彦さんは艶のある低い声を耳に注いでくる。
 「一盗二婢三妾、って知ってるかい?」
 「い、いっとう……?」
 「男からすりゃあ、一番は人のもんに手を出すこと、二番は目下のメイドさん、三番目は妾を囲うのが、興奮するんだぜ?」
 「興奮!?」
 「……つまり今のお前さんは、そそるってことさ」
 慌てて顔を上げた私の目には、ギラついた眼差しの雨彦さんしか映っていない。重なる唇は荒々しく、ガーターベルトをなぞる指先はほんの少しだけ熱くて強引だ。
 「さて、うちのメイドさんはどんなご奉仕をしてくれるんだろうな?」
 待って、の言葉をリビングに置き去りにしたまま、私の体は軽々と抱え上げられて寝室へと運ばれる。ベッドに優しく投げ出された私の上に覆いかぶさった雨彦さんは、ネクタイを緩めてニッと口角をあげる。
 「たっぷり楽しませてもらうぜ?」
 ……まあ、なんとなく、こうなることは予想がついてはいたけれど。たまにはいいかな、と思う自分にため息をついて、シュル、とネクタイを外す音と眼鏡をコトリと置く音を聞きながら私は雨彦さんに抱きついた。


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