「ねえ、僕かっこよかったでしょー?」
Legenders単独公演の後、バックステージでPさんに抱きついた想楽さんのピンチを大人二人がさっと助けてくれるような、そんなお話です。
@toasdm
鳴り止まないアンコールの歓声とステージの熱狂に押し出されるようにして、汗できらめく顔を上げた想楽さんが私に向かって両腕を広げて、全速力で駆け寄ってくる。Legenders初の単独公演は大盛況の内に幕を下ろした。バックステージで見守る私も息を呑むような圧巻のパフォーマンスの熱気をそのまま纏った想楽さんは、瞳にもまだ熱と輝きを宿したままに思いっきり私を抱きしめる。
「ねえ、僕かっこよかったでしょー?」
声もあげられないほどに飲み込まれた私は何度も頷いて、バックステージで私達は互いの頭を抱え込むようにしてその感動を分かち合っていた。抱えられた後頭部を引き寄せられて、想楽さんの唇が私にそっと重なろうとした瞬間――…。
ふ、と足音に視線を上げると珍しく慌てた表情の葛之葉さんが駆け寄ってきて、北村!と声をかけている。
「最高だったぜ、北村」
表情とは裏腹にその声音は充実感に満たされていて、でも目は鋭く、指はインカムに添えてトントンとそこを指している。遅れて駆け寄るクリスさんは耳に手を当ててステージを指差している。振り返った想楽さんもそれに気付いて、は、とベルトケースのトランスミッターを確認する。インカムはONのままだった。
しまった、という表情をしたのは一瞬のことで、お膳立ては済んでるぜ、と意味深な笑みを浮かべた葛之葉さんと、フォローは任せてください、と胸を軽く拳で叩いたクリスさんを確認した想楽さんは、はぁ、と深く深呼吸をしてからインカムに指を添えて目を閉じる。
「ねー、僕達最高だったでしょー?」
今度は意図的に、会場に向かって。バックステージにまで響いてくるような歓声を受けて想楽さんは、不敵に笑っている。
「今度会うときは、もーっと最高な僕達を魅せてあげるからねー」
見えないのに、ステージに手を振って。私を片腕に抱いたまま想楽さんは、最後の最後までファンサービスをしている。トランスミッターのスイッチをOFFにすると、緊張感が一気に抜けたのか、想楽さんはその場にへたり込みそうになる。後ろから近付いてきた葛之葉さんとクリスさんが、それを両脇から支えてなんとか、立たせてくれた。
「全く、ひやひやしたぜ?」
「フォローが間に合ってよかったです」
「わ、私も気付きませんでした、すみません」
いいんだよー、と笑顔を作った想楽さんは私を離して、二人の肩をばんばんと叩いてもたれかかってありがとうー、助かったよーと心底安堵の声を上げている。
「あのままだったら、とんでもないスキャンダルをご提供するところだったよー」
「はは、違いないな」
「そうですね、では、お邪魔虫は退散しましょうか」
再び意味深な笑みを浮かべて葛之葉さんとクリスさんは廊下へと去っていく。熱気のこもったバックステージに取り残された私達は呆然とそこに立ち尽くし、くすくすと笑い出した想楽さんはインカムを外してトランスミッターとの接続を念入りに切っている。
「うまく切り抜けられたからよかったけどさー…ほんと、うっかりしてたなー…」
そのままそこに崩れるようにしゃがみこんだ想楽さんの隣で、私も同じように膝を床につく。抱き寄せられた肩、目と鼻の先にある想楽さんの顔は疲れよりも充実した感情が色濃く出ていて、私は思わずどきりとする。
「……もう、インカムは拾わないから……」
目、閉じててねー。優しい声色に男らしさを少しだけ混ぜたようなその声に従って、私は大人しく目を閉じる。ん、と重なる唇からは、熱と乱れた吐息とが移されるようで、心拍数はますます上がっていく。全身の力が抜けるまで私達は、そこでずっと、何度もキスを繰り返していた。ステージの熱がいくら冷めても、二人の間にあった熱はいつまでも、そこにあり続けるような情熱的なキスを、何度も、何度も。