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[硲P♀]餅

全体公開 3 1924文字
2018-05-18 12:49:48

「君は、君はいったい何を急に」

太ももがおいしそうなのでついかぶりついちゃったPさんとかぶりつかれちゃった硲先生のお話です。

Posted by @toasdm

 疲れた、のたった一言で全てを理解してくれる道夫さんは聡い。ソファに腰掛けて次のスケジュールと台本を読み込みながら、左手でぽんぽん、と膝を叩いて膝枕を貸してくれる道夫さんは優しい。聡くて優しくて、居心地がいいこの場所が、私の疲れを癒してくれる唯一の場所なのかもしれない。視線は相変わらず手元に資料に向けたままでいてくれる気遣いと、言葉のないお言葉に甘えて膝に預けた私の頭を優しく撫でてくれる気遣いが、今はただただありがたい。
 疲れた。何がというわけではないけれども、全体的に疲れた。体はくたくただし、心はみしみしと、軋むような音を立てている気がする。そういえば骨も軋んでいる気がする。同じ姿勢を続けていたからかもしれない、最近はデスクワークが続いていたから。
 「マッサージ」
 「うん?」
 「マッサージとか、行ったらいいかな」
 「うむ、君の体は疲れている。私でよければいくらか、素人の手習いになるが」
 言ってすぐに伸びてきた左手が、私の首元に触れる。んっ、と漏れた吐息にくすりと笑った道夫さんは、妙な声を出すなと私の頭を軽く小突いた。
 「だ、だっていきなりだから」
 「首が凝っている、パソコンに向かって仕事をしているからだろう」
 うつ伏せになれるか、と資料をテーブルに置いた道夫さんは促して、私は大人しくそれに従う。お風呂上がりの道夫さんはいつものようにスウェットのハーフパンツ姿で、うつ伏せになった私は太ももと太ももの間に顔を埋めるような形でうつ伏せになった。触れるぞ、と今度は声をかけてから、道夫さんの男らしい手が私の首筋に触れてきた。ぐ、ぐ、と押される度に疲れは確かに取れるけれども、私の顔はどうしても、道夫さんの太ももに押し付けられる形になってしまう。っていうか……道夫さんの太もも、もしかして、お餅みたい?
 男の人にしては体毛も薄くて、じょりじょりする感じはしなくてすべすべしている。特に私の顔がぐいぐい押し付けられている内もものところはすべすべ度がかなり高い。筋肉はしっかりと感じられるけれども、外側は本当に、お餅みたいに柔らかくて、ぷにぷに?ぷりぷり?している。
 「……ふふ」
 「む、くすぐったかっただろうか?」
 「あ、いえ……
 内側はしっかりしているのに外側は優しくて、でもハリがあって力強くて。道夫さんの太ももは、まるで道夫さんそのものだな、っていうなんだかよくわからないことを考えていたら自然と笑いがこぼれてしまった。そんなことを口にしたらまた頭を小突かれかねないから言わないけれども。大人しくしていなさい、と優しい声が上から降ってきて、首筋から背中へと手は移動する。相変わらず道夫さんの太ももの間にあるけれど少し自由の利くようになった顔を、私は何の気なしに傾けて内ももに、かぷりと軽く噛み付いてみる。
 「な、何を」
 「あふぇ!」
 突然の出来事に驚いた道夫さんが、私の後頭部を思いっきり、遠慮なく、ぺちん、と叩いた。あ、うん、突然過ぎてびっくりしたのは私も一緒なんだけど。なんで今私、道夫さん食べたんだろう。
 「君は、君はいったい何を急に」
 「すみませんお餅じゃなかったです」
 「餅……餅、か……?」
 驚いて起き上がった私の歯形とよだれがついた内ももをつまんで、道夫さんが多少ショックを受けたような顔でまじまじとそこを見つめている。だらしないとかそういうわけじゃないんです、と慌てる私をちらっと見てから、道夫さんは眼鏡をぐいっとあげてから、なるほど、と呟いた。
 「なるほど、餅は確かに食べるものだからな」
 「え、や、やだちょっと道夫さ、うわっ!」
 私の手首を掴むと、道夫さんはそのままソファに私を押し付けて、手首を頭の上にまとめあげる。露わになった私の二の腕を、道夫さんはまじまじと見つめてニヤリと笑う。
 「餅ならば、君の方がたくさんつけているのではないのか?」
 「え、ひにゃ、あぇ!?」
 そしておもむろに、ぱくり、と私の二の腕に噛み付いている。やめてちょっと恥ずかしいちょっとじゃなくて大分恥ずかしい!!暴れる私の体に馬乗りになって、道夫さんは危ないな、と眼鏡を外してテーブルの上に乱暴に置いた。いつもなら、テンプルをきちんと畳んで丁寧に置く、はずなのに
 「うむ、これで君が多少暴れても問題ないだろう」
 「暴れさせるようなことをするつもりなんですか?!」
 「さあ……
 見下ろすように近付いてきた表情に、私は息をのむ。
 「どうだろうな」
 暴れても無駄だとは思うが、の声は、耳元で聞こえた。その声には、聡い道夫さんも優しい道夫さんも、いないような気がした。


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