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[想P♀]おいしいお仕置き

全体公開 1915文字
2018-05-25 12:41:25

「意地悪したくなるくらい、可愛いのがいけないと思うなー……?」

Pさんによる盛大なる自爆及び想楽君による壮大な意地悪のお話です。

Posted by @toasdm

 我ながら何をやっているんだろう、と鏡の前で私は頭を抱えた。似合うか似合わないかでいったら、まあ、ちょっと似合ってると思う。変身願望は誰にでもあるっていうし、たまにはこういうのも面白いかな、とノリと勢いだけで買ってみたメイド服に身を包んだ私は、多分それっぽくは、見えると思う。ちらっと時計を確認すると、もうそろそろ、来客の時間。……きっと、この姿の私を見て、指をさして大爆笑するんだろう。もしくは呆れた顔で、何してるのさー、と脱力するか。とにかく、可愛いだとか萌えるだとか、そういう反応にはならない気がする。それなりに見えるように、ぺらっとした安物ではなくて、エプロンを外せば普通にシックなワンピースとして使えなくもないような、普段使いできるようなメイド服は、結構いいお値段はしたけれど、後悔はそんなにしていない。ええいままよ、とキッチンに移動して、私はお茶の用意を始めた。
 「こんにちはー」
 時間ぴったりに部屋を尋ねてきた想楽さんの声に、私は覚悟を決める。玄関のドアを開ける音にきゅっと拳を握り締め、よし、がんばれ、私はできる!と自己暗示をかけてから玄関へと向かう。
 「お、おかえりなさいませごしゅじゅ……っ!」
 うわ恥ずかしい噛んだ!言えてない!大体ご主人様なんて言い慣れてないし、私は早口言葉はそんなに得意じゃないんだ!練習しとけばよかった、と赤面する私を見て、想楽さんは一瞬固まってから、普通に靴を脱いで部屋に上がりこんでくる。……まさかのノーリアクションだ。これはちょっと、予想外だ。
 「あー、クッキーだー」
 金網の上で冷ましていた焼き立てのクッキーを見つけた想楽さんは、それをひょい、っと口に放り込んで、おいしー、と満面の笑みでソファに座る。ここまで、私の格好及び噛み噛みセリフにはノーリアクションだ。……手強い。
 「やっぱり、プロデューサーさんはお料理上手だよねー」
 もぐもぐとクッキーを頬張ってご満悦の想楽さんは、ニヤニヤとしながら私を見ている。セリフ噛んだとかそういうあれよりも、ノーリアクションっていうのが一番堪える。けど、こうなったら持久戦だ。私は気を取り直して想楽さんに離しかけた。
 「すぐお茶にいたしますので」
 「わーい、ありがとうー」
 お茶の用意をしながら、私は一人脳内作戦会議。傾向と対策。想楽さんが何を考えているかわからないけれども、でも、少なくとも顔を顰めていたりはしなかったから、悪からず思っているのは確かだろう。だったらだったら、絶対引き出してやるんだから!可愛い、の一言を!!
 「お待たせいたしました、こちらのクッキーは、ご主人様が先日おいしいとほめてくださったココア味のクッキーです」
 「覚えててくれたのー? ふふ、嬉しいなー」
 いただきまーす、と平然とした顔でクッキーをつまみながら紅茶を飲んでいる想楽さんの横に腰掛けて、私もクッキーを一口かじる。……あ、おいしい。結構上手にできてる。自然と綻ぶ口元と緩む頬、気がつけば私はもう一枚、と手を伸ばしていた。
 「……別にそんな格好しなくたって、プロデューサーさんは十分可愛いよー?」
 「ん、ぐっ!?」
 こちらをちらっと見もせずに、想楽さんは急に爆弾を投下してきた。むせそうになる私の背中をとんとん優しく叩きながら、想楽さんはそこでようやくくすくすと、笑って私をじっと見る。
 「可愛いって、言ってほしかったんじゃなかったのー?」
 「う……そ、そう、ですけど」
 「可愛いー」
 横から私を抱きしめて、想楽さんは私の肩におでこをくっつけて、すりすりと甘えるように、可愛い、可愛いと繰り返している。
 「可愛いって言ってほしそうだったから、言うのずっと我慢してたんだー」
 「うぅぅ……どうしてそういう意地悪をするんですか……滅茶苦茶恥ずかしかったんですよ、セリフ噛むし」
 「あー、あれが一番きつかったなー……顔に出てなかったよねー?」
 全く出てませんでした、とややふてくされていう私のほっぺたに、想楽さんはそっとキスをして耳元で囁くように言った。
 「意地悪したくなるくらい、可愛いのがいけないと思うなー……?」
 似合ってるよー、とスカートの裾をぺろんとめくろうとする手をぺちん、と軽く叩いて、私はクッキーを想楽さんの口に押し込んだ。意地悪さんにはおしおきです、とやけくそ気味に笑う私を抱きしめたまま、こんなおいしいお仕置きだったら大歓迎だよー、と笑う想楽さんは、紅茶とクッキーのおもてなしを味わいながら、私を抱き寄せてくれていた。その間、可愛い、と何回言われたのかなんて、私は全然、覚えていない。


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