イリス小話:家族(by凌牙)
@fu_re_re_ra
『渇き』を、自覚した覚えは、無いはずだった。
確かに、両親を亡くした直後はそうだったかもしれない。けれど、そういう痛みは、もうずっと前に置いてきてしまった。金目当ての親戚連中の間を転々としている内に、社会を知らずにはいられなかったし、璃緒だけが俺の家族で、死守しなければならない最終防衛線。それだけが絶対で、だから、それが壊れた時には、もう、俺の先なんてどうなったってよかった。俺はずっと窒息していた。
そうして、もう二度と見れないとも覚悟した妹の紅い双眼が、もう一度俺を映した時
俺は、もう一度セカイに生まれ直して
だから、もう、この手を繋いでいられるなら、それだけで良いと思った。
自分がバリアンと知り仲間と共に戦い抜く決意を砕かれ、そうして四度目の死を抱いても
それでも、今、共に居られる〝 先 〟を、奴らがくれたから。
だから、もう、璃緒さえいれば、俺は、俺の家族は
満たされていると、本気で、そう思っていた。その気持ちに、ずっと、偽りはなくて、だからそれは永遠に変わらないと、そう固く信じていたのに。
4回も死んで、何年どころの騒ぎじゃない、何世紀と超えてきた全部で、
その全部で、俺の人生はいつだって璃緒だけが、たった一人の残された家族だったのに。
まさか、生まれ直した5回目で、新しい家族が出来るなんて誰が思う。
これも、なあ。お前らが書き換えた運命のいたずらなのか。
なあ、遊馬、アストラル。それとも、
ーーーそれとも、てめえか。
俺に渇きを与え続けているのは。
気付いたら。
璃緒と共にいても、癒えない渇きに気付いてしまった。あと二つ。繋がる両手が足りないと
あれがないと、俺はもう渇いてしまう様になってしまった。
ずっと、てめえは俺に
安寧とは程遠い感情ばかり与えやがる
気付けば、お前に出会った瞬間から、俺はずっとてめえのせいで渇いてばかりだった。
璃緒を奪われ、決闘を奪われ、そうして。
人間を捨てる最後のチャンスを、てめえに奪われた。
てめえは、俺から、『コレ』まで奪うのか。
てめえがいなければ、きっと、死ぬまで気付かずにいられた。
渇きを与え続けられている
水を求め続けるように、決して消えない渇きを、ずっと
『あーあー。こーら凌牙、ねぼすけもいい加減にしろっての。しっかたねえなぁ』
『りょーがおにいちゃぁん、あっさですよー!』
永遠であれと
現在の幸福を願う
どうしようもないこの切望を
きっと俺は、死ぬまで抱いて生きていく
【かつての不死者に終止符】
(冀望は、〝 望みを冀い願い求める 〟こと)
永遠など無いことを 四度も知っているはずの俺にも
どうか、ずっと
◇ ◇ ◇
家族の狭い箱の中で安堵する凌牙の話。
もういない不死者のお話し。ここにいるのは、ただの。
おまけ↓
凌牙「オイIII…てめえがまだ他人だった頃は、実の兄貴に甲斐甲斐し過ぎてぶっちゃけ気持ち悪りぃなと思ってたが今は180度意見が変わった。何だあいつは!?上着一枚剥いたらガリッガリ!目を離すとぶっ倒れてやがるし今週は3徹目!飯食わねえと思ったら鞄から栄養剤がザラザラ出てきやがった!寝ねえ食わねえ休まねえ挙句熱出してまだ仕事しやがる!言うこと聞きゃしねえ!イリスの方がよっぽど手がかからねえ!IIIてめえよくあんな奴の世話してられたな!?」
III「お褒めに預かっても全然嬉しくないねそれ…ちなみに3徹ならまだまだ序の口だね…うち父さまもクリス兄さまも時々平気な顔して6徹までするから…」
凌牙「あ い つ ら の せ い か !」
III「ちょっと、いやあのその…だいぶ…ワーカホリックな家系なんだよね…」
III(……トーマス兄さまの場合は、それだけが原因じゃ、ないけど)