@yga262yf
こんにちは、初めまして。
1ヶ月ほどの記憶を失って驚いているだろうあなたのために、私が何をしていたのか記しておきます。
この1ヶ月、沢山の方と方々に出かけていました。知らない名前も出てくるでしょうが、最後まで読んで下さいね。
そのためにあなたがたくさん貯めていた休暇も使ってしまいました。年末までまとめて取りましたから、どうぞゆっくりしてください。
まずは私が何者なのか明かしておきます。私は並行世界で1年前に死んだ枯戸静流です。あなたが巻き込まれた集団記憶喪失事件は、とある実験の失敗結果でした。私のいた世界で何が行われていたかは改めて記しません。もう終わったことですから。
しかし私はこちらの世界の集団記憶喪失事件と時期を同じくして拉致され、結果的に命を落としました。ここで目を覚ました時も、ちょっとした夢でも見ているんだろうと思っていました。
けれど、夢にしては不思議な、恐ろしい、怪奇的で心躍る出来事が私の周りで立て続けに起こり始めました。
12月1日 九頭龍流さんの葬儀に出席。
この時からあなたも記憶が曖昧になっているのではないでしょうか。あなたと私はこの日から10日間ほどかけて入れ替わったようですから。この日は流さんの妹の止さんに初めて会いました。
12月10日 流さんからの手紙を受け取りに、九頭龍家を訪問。
様々なことが動き始めた1日でした。同じく流さんからの手紙を受け取りに来た方がもう二人いて、1ヶ月の間ずっと仲良くさせてもらいました。きっとあなたの携帯に記録が残っています。九々狸朔一さんと、瑞紅淡雪さんという方です。
この日からはっきり私は自分が死んだことを覚えていました。状況を知るために、鏡也と遮と、彼此坂さん、三島さんに連絡を取りました。私には集団記憶喪失に巻き込まれた記憶はないですから、皆さん心配していました。今度連絡を入れてあげてください。
(この日から知り合った九々狸・瑞紅と様々な場所に訪れ、複数の人に出会い、生活を共にした記録が記されている。最後の日付は走り書きの筆跡に変わっている。)
12月24日 眠い目を擦って、今これを書いています。
今日眠ると私と瑞紅さんは元の世界に戻って再び眠りにつくというので、ついつい夜更かししてしまいました。けれど、夜更かしして良いこともあるものですね。
私も瑞紅さんも、元の世界で生きていくことができるみたいです。どうしてそんなことになったのかは、流さんに聞いてください。今日は一度に色々なことが起こりすぎて、今から全て書き残すのは難しそうです。尤も流さんはしばらく忙しくしているでしょうから、様々なことが落ち着いた後で。きっとあなたの思うよりずっと壮大な夢物語が聞けますよ。
楽しみは後に取っておけと言いますし、私も早く皆さんに混ざりたいので、余計なことは書かずに日記もここで終わりにします。九々狸さんと瑞紅さんも、きっとこの1ヶ月のことは覚えていないでしょうが、是非また連絡を取って話をしてください。私たちは絶対に、仲良くなれるのですから。
止さんと主水さんは私のことがわかると思います。特に主水さんはお兄さんが亡くなって落ち込んでいるでしょうから、またお話してあげてください。
それから、人との会話を先延ばしにしちゃだめですよ。誰のことを言っているか、あなたにならわかりますね?そこそこ後悔のない人生を送っているつもりでしたが、一度死んでみると未練はやはり尽きないものですね。
私にとってはたった1ヶ月の世界でしたが、その間に随分愛着が湧いてしまいました。私に再び生きるきっかけをくれたこの世界で、他でもないあなたが、家族や友人と楽しく送るこの先の人生を私は望みます。
それでは、この辺で。
メリークリスマス!
もう一人の私へ 枯戸静流