「どっからどう見たってプロデューサーさんは、僕の女の子だよねー?」
小悪魔想楽君に女の子扱いされたらえらいことになりそうなPさんのお話です。
@toasdm
サバサバしているって言葉はあんまり好きじゃないけれど、僕の彼女さんはサバサバしている。社会人だし、プロデューサーっていう仕事だし、僕より年上で仕事人間だから、普通といえば普通なのかもしれないけど、言葉を選ばずあえて言うなら、女っ気がない。皆無ってわけじゃないけど、ちょっと人より少ない。不満はないけど、でもたまに、こうやって、街を歩く可愛らしい女の子を目だけでちらっと追ってこっそりため息をついてる様子は、見ていて少し悲しくなる。僕は知ってるんだけどなー。プロデューサーさんが誰よりも、女の子らしい女の人だっていうこと。
「北村さん、次の現場まで少し休みますか?」
信号が赤から青になって、プロデューサーさんの運転する車が動き出す。視線は横から前へ、キリッとしてて仕事できる人って感じで、格好いいけど――…。ちら、っと時計を確認して、三十分くらいですが、って言う声までキリっとしてて格好いい。僕は知ってるんだけどなー、そうじゃない方のプロデューサーさんも。別にいいよー、って答えながら、僕はシフトレバーを握るプロデューサーさんの手にそっと自分の手を重ねる。
「っひ?!」
「ちゃんと前見て運転しててよー」
今一瞬だけちらっと見えたのが、僕の知ってる方のプロデューサーさん。すごく可愛いんだよねー。普段とのギャップがある分、落差で余計に可愛いんだー。くすくす笑う僕を横目でちらっと見ながら、プロデューサーさんは耳を真っ赤にして文句を言う。
「そ、想楽君、今私仕事中、運転中」
「えー? それ、仕事中の声ー?」
「っっ!」
声がいつもより高くて柔らかくて可愛くなって、僕を呼ぶ時に苗字じゃなくて下の名前になって、すごく照れ屋さんで恥ずかしがり屋さんで。
「……北村さん、運転中なんでご遠慮ください」
「慌てて言ってももう遅いと思うなー」
「や、やだっ、も、ちょっ……!?」
信号が赤になって、サイドブレーキを引いたプロデューサーさんの手をそのまま取って、僕はその指先を甘くかじる。ひぇ、って情けない声を上げてこっちをじっと見てるプロデューサーさんにわざと、見せ付けるようにして、舌先で指のお腹をくすぐってあげたら、ふふ、やっぱりいつもの顔になっちゃうんだよねー。
「ねー……気持ちいいー……?」
「やめ、やっ……は、ぅ……想楽、君…………んんっ!」
「どっからどう見たってプロデューサーさんは、僕の女の子だよねー?」
可愛い、って言ってからちゅっと指先にキスをして離すと、僕は信号を指差す。慌てた顔をしたプロデューサーさんが、可愛い方の声のままで、想楽君の馬鹿、って言いながらサイドブレーキを戻して車を走らせた。
「あのねー」
「な、なんですか……」
ああ、本当に可愛い。ダメこういうのほんと僕弱いから。抱きしめたい気持ちを抑えて僕は、目を閉じてシートに沈んで言った。
「僕にとってプロデューサーさんって、世界一可愛い女の子なんだよねー」
閉じた瞼の向こう側で、びくっ、としたプロデューサーさんの気配が動くのも含めて、全部可愛い。
「ゆーっくり時間をかけて、プロデューサーさんがどれだけ可愛い女の子なのか、僕の扱いで教えてあげるからねー」
覚悟しててー、の言葉に無言で答えたプロデューサーさんの左手が、僕の右腕にちょん、と触れた。僕しか知らないプロデューサーさんの声で、そういうのずるい、と聞こえて満足した僕は、あくびをひとつ。
「少しだけ、おやすみするねー」
車はひたすら静かに、次の現場へと向かっていた。