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殺人鬼ドヨンシリーズ、第10章、かわいいひと

全体公開 NCT 3 5 4192文字
2018-06-06 21:32:02

よっばらった主人公が翌日の夜ドヨンにお仕置きされて、その翌朝の話です(殴)

名前変換

ドヨン視点

父は優しく、とても厳しかった。俺は虫や動物を殺していることを父に知られた時、終わりだと思って怯えたが、父は「これは父さんと2人だけの秘密だぞ」と言ってくれた
最初父は狩りに連れていってくれた。だがそんなものでは俺の衝動が収まらなくなった時、父は独自の掟を作った。痕跡を残さず、誰にも衝動を知られることのないように、そして何より死に値する悪人以外を手にかけないように、父は俺に徹底した教育を施した


「いいか、儀式を行なう時は余裕を持って準備をするんだ。生贄を選んだらそいつの生活や人格、癖や人間関係をよく観察して、本当に死ぬべき悪人かどうか確かめるんだ。その後は場の準備をしろ。痕跡を残さないために徹底した前準備が必要だ」


何度も練習させられた。尾行の撒き方、監視カメラの避け方、ナイフの研ぎ方、血を一滴も残さないために部屋中をビニールで包む方法、そしてマーシャルアーツを仕込んでくれた
最初の儀式をしたとき、父はしばらく気付かなかった。気付いたのはひと月経ってからだ。いつも衝動を発散させるために動物などに手をかけていたのが、ぱったり止んだことに気付いたのだ


「上出来だ。完璧に準備をしたみたいだな」


父が儀式の生贄に選ばれたのが誰か、俺に聞くことはなかった
父は苦しんだと思う。とても善良な人だったが、正義感が強く、殺人を決して許さなかった。誰よりも母を愛していたからだ。だからこそ、息子が殺人鬼になったことで板挟みになっていたような気がする。父は死ぬ間際病床で俺に言った
「父さんが母さんを守れなかったせいでお前に呪いがかかった……地獄へは父さんが行く。お前は何も心配するな」
冗談じゃない。地獄へは自分で行く。だけどそのことを言う前に父は死んでしまった



儀式はずっと完璧にこなしてきた。油断はせず、痕跡のかけらも残さず、生贄をよく観察して失敗することがないように気を抜かなかった。そのスキルは警官としての職務にも反映され、周囲には優秀な警官だと思われていたようだ。仲間にも信頼され、ぼろを出すことは決してなかった
だが一度、ぼろを出した。ある事件で犯人を逮捕しきれなかった時、衝動を刺激されていた俺はそいつを生贄にすると決めていた。怒りと悔しさをあらわにする同僚たちの中で一人冷静な俺は目立ったらしい。ジェヒョンは俺を疑い始めた
「お前を調べてるやつがいる。気をつけた方がいいよ」
クンがわざわざ連絡してきて言った。彼は普段おっとりした優しい性格だが、家柄にふさわしい凄味も身に付けている
「疑われるようなものは何もないし、俺を疑ったやつを孤立させられるくらいには俺人気者だから」
「怖いね。ぜひうちに欲しい」
「遠慮する」




そんな会話を交わした矢先、初めて儀式を失敗させた。一晩帰って来ないはずの生贄の娘が遺体を解体しようとする俺を目撃したのだ。その日俺は生贄の首を極めて気絶させていたので薬は残っていた。それを使って眠らせ、俺は自宅に彼女を監禁した
彼女は当初怯え、部屋を荒らし回った。申し訳ない気もしていたので好きにさせておいた。すると彼女は俺を観察し始めた。殺そうとしているわけじゃない。ただ興味を持ったようだ。だがその時俺は実は大パニックを起こしていて、目撃者を消すべきか、無辜の女性を解放するべきかで悩んでいた。父の掟はあくまで俺を守るためのものだったので、俺以外の人間には優しくなかった
*

「ご飯食べて。適当に作っちゃったけど、アレルギーとかないよね?」
アレルギーがないことは事前に知っていた。その一家のことは徹底して調べるからだ。そして彼女が義父の死をまったく悲しんでいないことも知っていた
おいしそう」
普通監禁されたら少しは食事に警戒するものだが、彼女はあっさり口にした。その辺の感覚が麻痺していたのか、あるいは死んでもいいという気持ちだったのか。彼女は空腹だったのか美味しい美味しいとよく食べた。小柄で痩せっぽちで、まるで子供みたいだ。それまでどれだけ荒んだ生活を送っていたのかよくわかる
しばらくして次の衝動がやって来た時、俺は彼女を解放することにした。儀式のことを詳しく話し、彼女にも参加させる。共犯者にしてしまえば通報はしづらくなるし、彼女は犯罪者の命を救うために自らを刑務所に送るようには見えなかった。なんとなく、命というものに無頓着に見えた


生贄の胸にナイフを突き立てた時、彼女は俺をじっと見ていた。子供みたいに澄んだ目を大きく開き、まるで何かとても綺麗なものを見るような目で俺を見つめていた。俺は彼女をすっかり気に入ってしまった
「私、ドヨンの弟子になりたい」
願ってもない話だった。本格的に共犯だ。その時俺は彼女に抱いていた感情が興味とは全く別のものだとわかっていなかった。わかっていたら、もしかしたらその申し出を受けなかったかもしれない


「ドヨン、ジェヒョンがあなたを疑ってる」


彼女が俺を庇うためにジェヒョンに嘘をついたことを知って、俺は泣きたくなるほど彼女を愛おしく思った。そして不憫に思った。こんな残忍な殺人鬼にさえ縋るほど、彼女は孤独で、幼かったのだ
今更手放すわけにはいかない。俺はせめて彼女を守ろうと、父のそれとは違う“俺の掟”を作った
―――何があっても名前を守る
―――何があっても名前に人を殺させない
―――何があっても名前を警察には渡さない
地獄まで一緒に来るかと聞くと、彼女は今まで見た中で一番可愛いとびっきりの笑顔で頷いた


体の右側に熱を感じて目を開けた。そちらを見ると、ふわふわした髪の毛だけがタオルケットから覗いている。名前はまだ眠っているようだ
彼女は眠るときいつも背を向ける。それを俺が抱っこして寝るのだが、気が付くと彼女は寝返りを打ち、猫のように俺の体にすり寄ってくる。だから朝になると彼女は俺の方を向き俺の体に自分の体をくっつけて眠っている。それがすごくかわいらしい
ぁ、あ~、んぇ~」
ニナのベッドは夫婦の部屋に置いてある。俺は名前を起こさないようベッドを出て、寝起きで泣いているニナを抱き上げた
「よしよし、大丈夫……ご飯用意しような」
お湯を沸かしている間にニナを着替えさせ、簡単な朝食の準備をする。ニナを抱っこしたまま寝室に戻ると、名前は体を丸めて眠っている。俺の仕事のことを気遣ってか、家事はマークがバイト中に一人で済ませることが多く、再開した仕事も忙しいようだ。その上いろいろと濃い連中と関わることになったせいか、疲れがたまっているらしい
ま、ぁー」
ニナが腕の中から手を伸ばした。ベッドに乗せてやると、名前の頬を小さな手でぺちぺちと叩く
お前、今“ママ”って言ったの?」
「まーぁ」
ニナが産まれた時、俺は本当にほっとした。それと同時に、それまで感じたことのない恐怖が脳裏をよぎった。何がきっかけで、娘に俺の衝動が遺伝するかわからない。覚えていないはずなのに、母の血の匂いをはっきり感じる時がある。父に母の死の真相を聞いた時、写真でしか知らない母が死ぬのを夢で見た。はっきり覚えている。おそらく、それが衝動のきっかけだ
名前に何かあればニナは俺と同じになってしまう
ニナ、お前はパパみたいになるなよ。ママだけ見てろ」
俺に執着されたばっかりに、平穏で普通の世界から遠ざかってしまった。彼女が俺を選んだのは孤独ゆえではないのかと、ずっと不安だった。だが今なら、そう思うことすら裏切りなのだとわかる
もし一人になりたくないだけだったら、ヨンホ兄なりジェヒョンなり、頼れる人は他にもいた。ジェヒョンやテヨン兄なら、名前が俺に脅されていただけだと信じて司法取引なり免責なりで守ってくれるはずだし、ヨンホ兄は彼女を一人路頭に迷わすようなことは絶対にしない。彼らは明るい世界で善良に生きてきた人間なのだから
チャンスはいくらでもあった。彼女は俺が彼女を殺せないとわかっていたはずだ。それでも逃げようとすることは一度もなかった。指輪を見せた時とろけそうなほど可愛い顔で笑ったし、ニナが産まれた時は嬉しそうに俺達の子だと言って笑った。俺が“死んだ”時、ユタさんによれば目も当てられないほど苦しんでいた
……ん」
「名前起きろ。ニナがお腹空かせてる」
あーごめん、朝ご飯」
「用意してあるよ。今日は休日だから俺が家事をやる。たまには休んでいいよ」
「ドヨン昨日も仕事だったでしょー
「昨夜疲れさせちゃったから」
名前が赤くなった顔を手で覆って「ばかー」と言った。お腹の上でニナがきゃっきゃと笑っている
「さっきニナが喋ったんだよ」
「嘘!?」
ばっちり目が覚めたらしい。飛び起きた
「ママって言ってた」
「ほんと?えー聞きたかった……ニナもう一回ママって言って?」
「ぁー」
娘から何とか“ママ”を引き出そうとしている。それらしい声が出ると嬉しそうにはしゃいだ。その顔は母子そっくりだ。本当に可愛い


―――その衝動がある限り、家族を持つのは大変だぞ
―――もし持ってしまったら、自分の命も人生も衝動も、全てを犠牲にしてでも家族を守れ
―――決して衝動を影響させるな


わかってるよ、父さん。だから俺は家族を絶対に守る
ドアがノックされてマークが顔をのぞかせた
MK「ヒョン、今日の朝ご飯ヌナが作れなかったのはヒョンのせい?」
「マーク、ニナがママって言ったのよ。喋ったの」
MK「ほんと!?ニナ、オッパって言って!!」
マークは嬉しそうに飛びついた。いや待て、普通オッパよりパパが先じゃないのか。マークと初めて会った時は肝が冷えたし、初めて善人を殺すことになるかもしれないと覚悟を決めたが、家族に加わってくれてよかったと心の底から思う。この情景を父さんが見たらどう言うだろう。上出来だと言ってくれるだろうか
ほら、2人とも下行くぞ。朝ご飯食べさせないとニナが泣く」
「えー待って、もう一回ママって聞きたい」
MK「ねぇニナお兄ちゃんって言ってみて?ねー」


俺の家族は皆可愛い


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