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殺人鬼ドヨンシリーズ、第11章、探偵と警官の話、その3

全体公開 NCT 5 7 5306文字
2018-06-10 18:45:50

テユ話のオチはいちゃテユベッターと心の中で勝手に決めています(殴)

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ユタ視点

名前さんとドヨンに助けられた次の日、テヨンは仕事を休んだ。一日中俺のそばにいて世話を焼き、いろんな話をした。警官になったばかりの頃した大失敗の話や子供の頃の馬鹿みたいな話。テヨンも昔はいじめられっ子だったらしい
俺も話をした。主に先生のことだ。テヨンは初めて俺の過去の恋愛話を聞きたがった。俺も一度話すと思いのほか軽くなって、全部ぶちまけた。今思うと当時の俺は本当に馬鹿な子供で、何故あんなのに引っ掛かったんだろうと思う


TY「孤独だったんじゃない?ユタは優しいから家族に心配かけないようにしたかったんでしょ。ユタは馬鹿だったんじゃない。優しすぎて、寂しかっただけだ。冷たい人の中で怯えてたユタに付け込んだ奴が卑怯だっただけだ」


俺が泣いてもテヨンはからかったりしない。優しく抱き締めてくれた。その後泣き顔が可愛いとかほざいて色々されたんだけど、黙っていたことを許してくれたので俺も許した
これで一件落着だと思っていた。今度○○さんにお詫びとお礼を兼ねてご飯でもご馳走しようかと考えていたところへ、それはやって来た


ドンドンドンッ
家は事務所の二階にある。古い家を安く借りているのでインターホンは鳴ったり鳴らなかったりする。修理しても無駄なので放置し、事務所のドアには「強めにノックを」と書いてある
俺は非常に疲れているうえに節々が痛かったので(昨夜ちょっと狼に襲われたので)、二階の窓から声をかけた
「悪いけど今日は休業や!!依頼なら明日以降来てくれ!!」
すると事務所のドアを叩いていた男がこちらを見た。思わず凍り付く。彼はドスの効いた声で怒鳴った
「今すぐ下りて来い!!開けろ!!蹴破るぞ!!」
慌てて事務所に駆け下りて、少し考えてから椅子をドアノブの下に引っ掻けた。ソファを動かす時間はないが、中に入れたら終わりだ
「話すことはない!!帰ってくれ!!」
「ふざけるな!!お前のせいで俺は全てを失ったんだぞ!!財産も子供も全て奪われた……ッ女房が学校に連絡したせいで仕事も失った!!言いふらしやがって、当時交際を隠したいと言ったのはお前だろ!!」
「俺は何もしてへんしあの時俺は高校生で友達もおらんかった!!ゲイやってこと隠すのは当然やろ、そこに付け込んだくせに偉そうなこと言うな!!全部自業自得や!!」
ドヨンが弁護士を脅して判事に証言させたことは知っている。未成年男子に手を出した挙句学校中に都合よく言いふらし、離婚調停を有利に進めるためだけに写真を使って脅迫し誘拐した。これだけで判事は十分判断出来る。本来なら全て逮捕事由になるが、俺は証言なんてまっぴらなので親告するつもりはない
「写真をネットにあげるぞ!!」
「はったりは効かん、無駄や。俺はこう見えてプロの探偵やで。家は全部調べさせてもらったし、PCも携帯も全部死んどるはずや。現像したもんは弁護士から確かに受け取った」
ッまだある」
「嘘やな。ここにわざわざ来たのは新たな脅迫材料手に入れるためや。もう諦めて新しい人生歩んだらどうだよ」

ドンッ

ドアを思いきり蹴ったらしい。今にも壊れそうで、血の気が引いた。売人やマフィアにもひるまずに来れた俺が、この人にはどうしても委縮してしまう。自分が10代の子供のように思えて、怖くて足がすくむ
「一人でいるお前を学校で守ってやったのは誰だと思ってんだ!!」
「自分の性癖隠して金持ちの奥さんと結婚すんのに都合よかっただけやろ!!俺は日本人でゲイで友達もおらん……適当に遊んで捨てても誰にも相談せえへん!!」
言いふらすつもりなどなかった。信じてくれそうな友達はいなかったし、家族は俺のために日本に帰ることまで考えていたので、そんな迷惑はかけられない。先生にそれまでの関係を踏みにじるような酷い振り方をされても、一人でひっそり傷付いているつもりだった
「写真まで撮ってたくせに保険のためだけに人生めちゃくちゃにしよったんや……あとから俺が何言うても自分を守れるように」
「そんなに辛かったなら日本に逃げかえればよかっただろう」
心臓が握り潰されるみたいに思えた。俺が日本でも性癖が理由でうまく馴染めなかったと話した時、先生は同情してくれた


テヨンに会いたい。テヨンなら同情なんてしないし、馬鹿にしたりもしない。ただ抱き締めて、涙を堪えながら、過去まで遡って俺を救おうとしてくれる
―――もし俺がその場にいたら、一番の親友になる
―――いつか絶対に恋に落ちると思う。そのくらいユタは素敵だ
―――傷付いていい存在じゃない。誰よりも愛されるべき存在だ


俺は音を立てずにその場を離れ、裏口から事務所を出た。溢れてくる涙をフードで隠しながら、タクシーに飛び乗った


「へぇ警部補って個室もらえるんやな。デスクの写真、家族の?」
DY「まぁね。名前が写真嫌いでなかなか撮られてくれなくて、不意打ちで撮ると怒るんだよ。何とか家族写真を一枚ヨンホさんに撮ってもらうことに了承してもらった」
「ええ写真やな」
何も考えずに分署まで来てしまったが、よく考えたら俺は元薬物依存者でおまけにイリーガルな探偵だ。警察に乗り込むのは勇気がいる。分署の前で途方に暮れていたところへ、ドヨンが来てくれたのだ。彼の部屋に通してくれた
DY「テヨン兄は資料室にいるから、すぐに戻ると思うよ。俺は仕事に戻るけど、ヒョンには俺の部屋に来るよう言っておくから」
「ほんとごめん……仕事は邪魔しないから」
DY「警部にはこれも仕事って言っとくよ。一般人からの相談だろ?」
話のわかる警部補だ。こういう人こそ出世してほしい。ドヨンは部屋を出る時ブラインドを全て下げていってくれた
しばらく椅子に座ってぼんやりしていると、テヨンが入ってきた。資料とやらをデスクにほうって俺の前に回り込み、目を覗き込む。テヨンはとても綺麗な目をしている
TY「どうしたの?」


何か言おうと口を開いた途端、喉が締め付けられて声が出なくなった。タクシーを降りる頃には止まっていた涙が再びあふれ出す。情けない。俺は男なのに、もう子供じゃないのに。だがテヨンは俺を抱き締めると、俺の心を読んだようなことを言った

TY「ユタはいつも男らしくて大人だよ。僕よりずっと強い。それでも泣きたくなるのはしょうがない。泣きたい時に会いに来てくれて嬉しいよ」

落ち着かせるように背中をぽんぽんと叩いてくれる。ようやく声を絞り出せた
「怖い……すごく怖い」
TY「何があったの?」
「先生がうちまで来てん、全て失ったのは俺のせいや言うて……たぶん今頃ドア蹴破って俺がいないことに気付いてる。帰ってもまだいたらどうしよう
テヨンにもっと早く出会いたかった。あんな男のせいで傷付く前に。周りは皆俺をカラッとした明るい性格だと思っているが、本当はもっと暗くて弱い。そのことをわかったうえで強いと言ってくれるテヨンと、10代を過ごしたかった
「自分がいやになる何であんな人好きになったんやろ……もう嫌や、全部なかったことにしたい。この世に人種も性別もなかったらええのに
もしそうなっても、俺はテヨンが好きになっていたはずだ。仮に俺がゲイじゃなくたって、テヨン以上の人はいない
TY「……今日早退する」
ッあかんて!!ごめん、仕事邪魔するつもりやないねん。お前んちの鍵借りて帰ろう思ってて……お前の顔見たら落ち着いたわ。もう帰る」
TY「ダメ。ドヨンにも“どうせ心配しすぎて仕事になんないから帰っていいよ”って言われてる。今日は僕の家に泊まってもらうけど、まずユタの家まで行くよ」
それまで天使みたいに優しげだった目に殺気がこもった


テヨンは分署を出るまで俺の手を離さなかった。彼の同僚は皆怪訝な顔をしていたが、すれ違ったジェヒョンは笑顔で手を振ってくれた
事務所のドアは壊れていたが、先生の姿はなかった。中に入ると酷い荒れ様だ。俺がいないことにキレた先生が荒らしたのだろう。いっそ笑えてきた。何が探偵だ。このていたらくじゃ失格もいいとこではないか
テヨンは黙って警察手帳と拳銃をテーブルに置き、ジャケットを脱いだ。着やせして見えるが、警官だけあってかなり鍛えている。物音に気付いたのか、二階にいたらしい先生が降りてきた
「なんだ、今度は別の警官か?そんなに俺が怖いのか。それでも男かッ」
「テヨン!!」
光の速さで距離を詰めたテヨンが先生を殴り飛ばした。白いかけらが飛んだが、あれは歯か。人の歯が飛ぶのを見るのは初めてだ
ッ警官が一般人を殴るのは犯罪だぞ!!お前ユタの何だ
TY「黙れ、口を閉じろ下衆野郎」
テヨンの声にビリッと電気が走ったように先生が凍り付いた
TY「ここはボロボロになったユタが必死に努力して築き上げた大事な事務所だ。それをお前が汚すな」
……ッ」
TY「お前のせいでユタはどん底まで落ちた。本当なら明るくて友達にも恵まれて、皆に愛されて当然なのに、家族とも離れる羽目になった。お前がユタから全てを奪ったんだ」
テヨンは先生に馬乗りになって胸ぐらを掴んだ
TY「ほんの数年前のユタがどれだけ酷いもんだったか想像つくか?そこら中に酒瓶が転がってて、部屋中にマリファナの匂いがした。足の踏み場もないくらい捜査資料や新聞記事や……知識を集めようと本が散乱してた。どんなに薬でらりってても酒で馬鹿になってても、それでもユタは這い上がろうとしたんだ」
当時テヨンは俺の部屋を見て呆れかえっていた。掃除や整理整頓が苦手で散らかし放題だったし、ただでさえ素面の時がほとんどなかったのでそれはそれは酷いものだった。それでもテヨンは俺を評価してくれた。這い上がるために手を貸してくれた
TY「お前は自分の欲求のためにユタを弄んで、金持ち女と結婚するために孤立させた。そんな薄汚い野郎にユタを侮辱する権利はない」
テヨンがパッと手を離すと、先生は後頭部を床に打ち付けた。呻く先生の首にテヨンが手をかける。目が本気だ
「テヨン、それはあかん」
……ッく」
TY「ユタは僕の最愛の人だ……何よりも大事で尊い存在なんだ
「テヨン手を離せ」
TY「ユタを傷付けさせはしない。怖がらせるようなやつは
「テヨン!!」
テヨンがはっとしたように手を離し、先生の上から飛び退いた。先生は激しく咳き込みながら恐怖を表情を浮かべている。いくらか冷静になったらしいテヨンが吐き捨てた
TY「二度とユタに近付くな。思い出すことも許さない。ソウルからも出て行け」
ッぅう」
TY「もしユタの視界に移ったり耳に入ったりするようなことがあればその時は容赦しない。俺は警官だ。お前のことなんてすぐに探し出せる。お前から仕事も人間関係も全て奪って死んだほうがましだと思うまで追い詰めてやる。わかったか」
先生はこくこくと頷くと、事務所をふらつく足で飛び出して行った


……テヨン」
TY「ごめん。止めてくれなかったら本当に殺してた」
「ごめんなテヨンのことも傷付けちゃったな」
TY「ユタが一人で傷付くくらいなら、一緒に傷付いた方がましだ」
テヨンがはらはらと泣きだした。殺気はもうない。子供みたいな顔で泣いている
TY「ユタと同じ高校に通いたかった……そしたらずっとそばにいられたし、あんな野郎に触れさせたりしないのに」
「お前もいじめられるぞ」
TY「そんなの全然かまわない。いじめられっ子の耐性があるもん」
俺が吹き出すと、テヨンも少し笑った
TY「どうする?この様子じゃたぶん上の部屋もめちゃくちゃだよ」
「あーあー窓も割られてしもて……どんだけ暴れはったんやろ。住めへんなこりゃ。修理費嵩むし」
テヨンが拗ねたような顔をするので、俺は笑いながら言ってやった
「ここもいい加減ガタが来てるから、そろそろ新しい部屋で事務所構えようかと思っててん。せやけどソウルは色々高いし、事務所はある程度広いとこ欲しいから切り詰めるとこ切り詰めたいねん」
TY「……ふん」
「せやから、テヨンとこ転がり込んでもええかな」
テヨンの顔がぱっと明るくなった。わかりやすい。尻尾がぶんぶんしてるのが見える
TY「やっと同棲してくれるの!?」
「同棲ちゃう。俺は居候。家賃は折半。それと俺家事は出来ないからな」
TY「家賃なんてどうだっていい!!家事も全部僕がやる!!ユタがうちに来てくれればそれでいい!!やったー!!」
大喜びで俺に抱き付いて来た。そのままぴょんぴょん跳ねている。可愛い喜び方だが、こんなに喜んでくれるなら何でさっさとこうしなかったのかと思う。俺はたぶん、高校の時のことが引っ掛かってつい交際を隠したかったのだろう
でもテヨンはさっき分署で、当然のように手を繋いでくれた。テヨンはこの関係に自信を持っている。不安に思うのは失礼だ
……ありがと、テヨン。俺テヨンといられて幸せや」


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