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[みのP♀]傘のカルミア

全体公開 1 1547文字
2018-06-12 15:47:41

「大丈夫? 濡れてない?」

みのりさんとピンクの傘で相合傘キスするお話です。

Posted by @toasdm

 ピンクの傘を探してね、と言われて私はキョロキョロと辺りを見渡した。色とりどりの傘の花に紛れて一際鮮やかなピンクが目について、駆け寄る私にみのりさんもこちらに気付いて歩いてくる。
 「お待たせしました!」
 「ううん、大丈夫、待ってないよ」
 濡れちゃうから、と自然に抱き寄せられた肩に触れたみのりさんの手の温もりと大きさに、雨の冷たさと憂鬱な気持ちはふわりと軽くなってどこかへ消えていく。止みそうにないね、と傘を傾げて空をちらりと見上げると、みのりさんは傘の柄を短く持ち直して行こっか、と歩き出す。
 男がピンクなんて珍しいよね、と苦笑しながら、雨の街並みを歩くみのりさんはどこか嬉しそうで、私の気持ちもつられて明るくなる気がする。
 「カルミア、って、知ってる?」
 「カルミア……花、ですか?」
 そうだよ、と頷いて、みのりさんはウキウキしながら話を続ける。
 「石楠花の仲間でね、ちょうど、この傘みたいにピンク色で、形も似てるんだ。花言葉は優美な女性、大きな希望。蕾がコンペイトウみたいで可愛いんだよ」
 花の話をしている時のみのりさんは、とても生き生きとしていて、楽しそうで、私はそんな時にみのりさんの事を愛しく思う気持ちが強くなる。すごいな、という気持ちが顔に出てしまっていたのか、笑うみのりさんは照れくさそうに謙遜している。
 「頭使うよりも体使う方が慣れてるんだけどね。好きなものに対してはみんな、誰だってこうなっちゃうだろ?」
 「ふふふ、そういえば、そうかもしれませんね」
 人波を抜けて、道はみのりさんの家へと続く。水たまりを避けて車道側に自然に立つみのりさんの傘にエスコートされながら、二人で雨の中を歩く時間は花の話で盛り上がる。
 「この傘見つけた時、カルミアに似てるなって思って」
 「好きなんですね、カルミア」
 「うん、雨は好きじゃないけど、大好きな花の中に入って歩けるなら、少しは楽しいかな、って思って」
 花の中に入って歩く、のフレーズに、私はふと傘を見上げる。確かに、どことなく花のような雰囲気のある柔らかなピンク色は、みのりさんの言う通り、少し楽しい気持ちにさせてくれる気がした。
 「大丈夫? 濡れてない?」
 「大丈夫です」
 よかった、と笑うみのりさんのシャツは、ほんの少し色が変わっていて、濡れている。みのりさんこそ、と慌てる私の肩をさらに強く抱き寄せて、みのりさんはにっこりと私の微笑みかけてくれた。
 「俺は別に濡れても着替えがあるからいいけど、ふふっ、こうしたら、少しは濡れにくくなるだろ?」
 触れ合う肌の面積と強さに比例して、私の顔は赤くなる。照れてる?と聞き返してきたみのりさんのいたずらめいた声に、そんな事ないです、と立ち止まって見上げた瞬間。傘は道路側に傾げられて、埋まる視界のピンクの中で、目を閉じたみのりさんの柔らかくて甘いキスが、私の、唇に。
 「ん、っ……?!」
 「…………くっついてたから、したくなっちゃった」
 目隠し代わりに傾げた傘からはみ出たみのりさんの髪の毛を、柔く降る雨がしっとりと濡らして雫がぽたりと前髪を伝う。傘の花に紛れて、いいだろ?ともう一度、うっとりと私を見つめてみのりさんの顔が近付いてくる。
 傘のカルミアの花影に隠れて、再び触れた唇は、雨の中でやけに温かかい。
 「そういえばね」
 頬にさした朱を少し残して、みのりさんは歩き出しながらぽつりと漏らした。
 「カルミアには別な花言葉もあるんだ」
 なんだろう、と首を傾げた私の耳元で、みのりさんが囁く。

 「野心――ふふ、俺も案外、野心家だったりするのかな?」

 雨音と冷えた空気の中、野心の花の中で寄せ合った身は、熱を帯び始めていた。


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