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SS『夕暮れすらも消えた日に』(※BL風味)

@mad_hatter_we
魔法少女つき惨
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2018-06-15 15:34:36

『Sweet rain,Sweet pain.』夜月×京介のBL風SS/死ネタ/病み(notヤンデレ)表現があります

※Sr,Sp/夜月×京介/BLだといいなあ/死ネタ注意(京介が架空の病気に罹患して死亡します)

最後に視界に焼きついたのは自分が吐いた赤い血で、
それがぽたぽたと、指のあいだから溢れていくのをじっと眺めていた気がする。
それから、昼が夕暮れになるように、夕闇が夜に変わるように、俺の視力は失われていった。
進行はずいぶんと早く、何も視えなくなる恐怖よりは、諦めのほうが勝っていた。
解放感さえ、あったかもしれない。
もう物語を紡ぐ使命も、痛みのある世界で生きる必要もないのだから。

ーーだから、もう、苦しくない。

何も見えなくなって、足が動かなくなる。
ひとりでは生活も難しくなってしまったので、愛着はあったが、アパートの一室は引き払った。
私物はすべて処分するように頼んだ。
『あいつ』はきっと苦い顔をしていたが、
それが当たっているかは、俺にはもうわからないーー永遠に。
着の身着のまま、病院の個室に入る。
ベッドで眠った最初の夜に、俺はここで死ぬんだなと、何となく、考えた。

ーー眠りから、覚める。
時計の針の音が聞こえる。眼はもはや光すら感じられず、今がいつごろなのかもわからない。
病室のベッドから少し離れた所に、気配だけを感じた。
「やつき」
名前を呼ぶ。この病室に訪れるただひとりの男。
かつて『もうひとりの自分』だった男。
そして今はこの世界に存在する唯一の、俺ではない誰か。
気配が動いて、足音が近づく。俺と夜月の、冷たい手が重なる。
夜月の手は、少しだけ震えている。泣いている、のかもしれない。情けねえな、と軽く笑ってやる。
「……どうして、きみは、こんなときになってから」
不器用だと、蔑んでいるのだろうか。
あるいは、もっと笑ってほしかった、なんて言うつもりだろうか。
あいにく、俺はこんな時になってからしか、笑えない人間だった。

もうすぐ、俺の手のほうが、ずっと冷たくなってしまうのだろう。
俺がこの世界に残したものは、きっともう、なにひとつない。
そうやって生きてきたし、最後は、俺が夜月にそうするように言った。
残酷だと言われるかもしれない。でも俺が残したかったものは、遺品でも、物語でもない。

「ーー好きだよ、夜月」

恋は泡と消え、言葉はいつか風になる。
かつて奇跡だった水晶の、その成れ果てを。
ずたずたに傷つけて、壊してしまいたかった。

残したかったものは、きずあと。
永遠に消えない、海の底より深いような。


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