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[想P♀]残照

全体公開 1414文字
2018-06-19 20:53:54

「そよ風にー……愛しき人の、香りみるー……

暑さで縁側にぺたーんとなる想楽君と湯上がり浴衣姿Pさんの、夕涼みなお話です。

Posted by @toasdm

 沈んだ後もその名残をそこかしこにばら撒いて、初夏の太陽は暑さを置き去りにしたまま『これにて失礼』と夜にバトンタッチをする。暑いなー、と半袖のTシャツをさらに捲り上げて、想楽は程よく引き締まった二の腕を晒した。ぱたぱたと扇ぐ団扇には墨絵の金魚が描かれていて、チリリン、と鳴る風鈴の音がせめて音だけでも涼しげに、と、宵闇の迫る縁側でハーフパンツの足を投げ出す想楽はそれを見上げた。
 「お疲れ様です、想楽さん」
 風鈴を見上げた勢いで、ぱたんと背中を板の間につけるように寝転がった想楽の視界に、浴衣姿のプロデューサーがすっと入ってくる。お疲れ様ー、と団扇で彼女の素足を扇ぎ、想楽は隣に座るようにと促した。大人しく腰掛けた彼女から、ふわりと立ち上る湯上りの香り。どきり、と高鳴る胸の息苦しさに、はぁ、とため息をひとつ漏らして、想楽は大人しく身を起こした。
 「似合うねー」
 浴衣を身につけた湯上りの彼女は髪をかんざしでまとめあげて、襟足から散った後れ毛の合間からちらりと見えるうなじの白さに、想楽は思わず生唾を飲み込む。
 「あと、色っぽいねー」
 「も、もう、変なこと言わないでください」
 恥ずかしがって慌てる彼女の肩を抱き寄せて、想楽はその頬に唇を寄せる。ほんとのことだよー、と笑って言いながら、想楽はすぐに彼女を解放して、あー、とゆるく声をあげてまた、板の間にぺたりと背中をつけた。
 「暑いなー……
 「ふふ、本当ですね」
 穏やかにたおやかに、ゆるやかに笑う彼女は想楽の手から団扇をそっと受け取ると、転がったままうだる暑さに融けかけた想楽を優しく扇ぐ。んー、涼しいー、と目を閉じて、想楽はその風を甘受した。

 「そよ風にー……愛しき人の、香りみるー……

 ととのってるかなぁー、と間延びした声は彼女の方へと向けられる。わからないですよ、とくすくすと笑い、彼女は想楽を扇ぎながら額に浮いた想楽の汗をそっと、浴衣の袖で拭ってやる。
 「汗で汚れちゃうよー」
 「いいんですよ、どうせ自分の汗でも汚れますし」
 吸水性もいいからさっぱりしますよ、と袖を避けた彼女がまた、団扇で想楽を扇ぐ。心地よい風が汗を引かせて、すっと想楽の気分が軽くなった。
 「気持ちいー…………
 「……想楽さんだって」
 団扇を扇ぐ手がゆるやかに止まり、あれ?と想楽は目を開ける。顔をそらした彼女の手が、想楽のTシャツの裾をぎゅ、と掴んでいる。
 「想楽さんだって、二の腕が……せっ、セクシーだと、思います……
 「……わー」
 夕映えの置き土産、赤くなった耳は四つ。絞り出すようにそう告げた彼女が、裾を掴む手を離して想楽の腕を隠すように、捲り上げられていた袖口を元に戻す。
 「目の毒、ですから……
 しまっといてください、と本当に、心底恥ずかしそうにして彼女はようやく、想楽を見る。むくりと上半身を起こした想楽は、反対の袖も同じように戻して、うん、と小さく呟いた。
 「……恥ずかしいと、結構あっついんだねー……
 「…………余計に、ですかね……
 照れ笑いの残照が二人を照らす。再び彼女の肩を抱き寄せた想楽がもう一度、今度は彼女の唇にそっと自分の唇を重ねる。もっとあつくなるかもー、とあどけなさの残る瞳が悪戯そうに笑う縁側で、団扇がぱたりと地面に落ちる。

 チリン、と一度、風鈴は鳴る。夏の夜は、もうすぐそこまで来ていた。


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