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[雨P♀]SEE-THROUGH-BLACK

全体公開 1923文字
2018-06-19 23:54:26

「お前さん……無駄に元気だなぁ」

暑さ耐性ゼロの雨彦さんをなんとか冷やそうと頑張ったPさんと雨彦さんが水遊びするお話です。

Posted by @toasdm

 うだるような暑さは夏本番を目前にしてやる気と本気を出して、雨彦に襲い掛かっている。勘弁しろや、と畳みに伏せて、ぐったりしながら扇風機の風を受ける雨彦は、容赦ない夏の気温にのびていた。なめくじみたいに融けてないで、とくすくす笑う彼女の声に、のろのろと頭をあげようとはするものの、どうやらそんな気力すらも奪われてしまっているらしく、畳から顎すら離せずに、雨彦は呻きながら文句を垂れるばかりだ。
 「お前さん……無駄に元気だなぁ」
 「雨彦さんが暑さ耐性ゼロ過ぎるだけです、もう、ほら、こっちきて涼みましょうよ」
 こっち、とは。彼女が言うこっちとはすなわち、今彼女がいる小さな庭の事だろう。小さな家庭菜園で夏野菜を育てているとかどうとか言っていた気がするが、まめな彼女らしいと思うし実際収穫したばかりのトマトの旨みと甘みには舌を巻いた夕飯は、雨彦の記憶にまだ新しい。しかし、彼女の立つ庭には直射日光が降り注いでいて、畑の世話を終えたばかりの彼女から漂ってくる汗のすえた香りから察するに、そこは相当に暑いのだろう。そんなところに行ったら俺は融けちまうぜ、と再び文句とため息を漏らした雨彦の足首に、彼女の手が伸びる。
 「ん、お前さん手が冷たいな」
 「ふふ、雨彦さんもひんやりしましょう?」
 足首を少し冷やされてなんとか気力を振り絞り、雨彦はゆっくりと頭を庭の方へと、彼女の方へと向けてみる。
 「……ん?」
 「じゃーん、葛之葉公園簡易プールへようこそー!」
 なんだそれは、と膝からがくりと力が抜けるような感覚に、雨彦は思わずふきだした。自慢げに庭で腕を広げる彼女の足元には、直径二メートルほどの子供用ビニールプールに、水がたっぷりと張ってある。お前さんこんなもんどうしたんだ、と、涼感に誘われて立ち上がった雨彦の手を引いて、彼女は自慢げに胸を張る。
 「この間、お野菜の苗を買う時ホームセンターで、ついでに」
 雨彦さん暑いの苦手でしょう?と微笑む彼女の優しさにつられて笑った雨彦は、穿いているハーフパンツ手をかけて脱ごうとする。全裸になる気ですか?!と慌てて彼女に止められて、さすがにそれもまずいか、と思い直した雨彦は彼女の手を取ると、そのままざぶ、と小さなプールに足をつけた。
 「お前さんも入るだろう?」
 「っひゃ!?」
 冷たさに悲鳴を上げた彼女をくつくつと笑い、雨彦は水の冷たさに目を細めた。なるほど、こいつは確かに多少涼しくなる、と彼女を抱えたまま雨彦は、思い切ってプールの真ん中に座り込む。
 「うわ雨彦さ、にゃああああ冷たい!」
 「っふ、あーーー……冷える、な……はは」
 濡れてぴたりと張り付く下着の気持ち悪さに眉尻を下げて、雨彦の胡坐の中で見上げる彼女の額に浮いた汗を、ゆっくりと味わうように雨彦は唇で拭う。触れた唇の柔らかな感触に、んっ、と閉じた彼女のまぶたにも同様に、そこから伝い落ちる汗を追いかけて、雨彦はキスでそれらを拭った。
 「……せっかくひんやりしたのに、熱くなったらどうするんですか!」
 パシャ、と手のひらで水を救い上げ、彼女は雨彦に水をかける。少量とはいえ頭から浴びせられた水は雨彦の髪を濡らして垂らし、お前さんやったな?と口角を上げた雨彦は、腕の中に閉じ込めた彼女ごと、浅いプールに倒れこむ。
 「ほら、こうすりゃ熱くはならねぇだろうさ」
 「うわ、っちょ雨彦さん、待って待って!!」
 慌てる彼女はバシャバシャと水をあたりに撒き散らしながらもがいて、なんとか雨彦の腕から脱出する。その様子にけらけらと笑う雨彦は、恥ずかしそうにしている彼女が恥ずかしがった理由を目の当たりにして、おっと、と目を丸くする。
 「わ、私、白Tシャツなんです、けど……
 「その……すまなかった」
 濡れて肌に張り付いたTシャツから下着が透けて見えて、彼女は恥ずかしさと濡れた体を抱えてプールから飛び出す。すぐ脇においてあったタオルを肩から羽織ると、雨彦さんのえっち、と恥ずかしそうに言った彼女が散水栓をひねってホースから直接、雨彦に容赦なく水を浴びせた。
 「待て待て待て待て待て、お前さんそいつはちょいとずるくないかい!?」
 「えっち! 雨彦さんのえっち! すけべ! どすけべ自重知らず!」
 喚き叫ぶ彼女が水を浴びせてくれたおかげで幾分熱さはしのげたが、いやはや――。水遊びを終えて部屋に戻り、タオルで濡れた髪を拭きながら雨彦は独りごちた。

 「……今日は、黒かい」

 随分刺激的じゃないか、お前さん。じりつく太陽の反射のように、瞼に焼きついた透けた黒は、なかなか雨彦の記憶からは消えてはくれなかった。


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