敬愛なるときみず先生原作の「命短し恋せよアイドル」の番外編を書くことになりました。テヨンに恋する悠太と、可愛い子孫の恋を応援しつつ自分に向く想いにはまるっきり気付かない守護霊のお話です。てんてー、本当にごめんなさい。なんか無駄に長くなっちゃった…
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@risa_natsuko
『日本語』「韓国語」
悠太視点
子供の頃から、寂しいという感覚を抱いたことがあまりない。日本にいた時は家族がいたし、自分で言うのも何だが友達は多かったし、練習生になってからも周りには常に仲間がいた
だがそれだけじゃない。俺はいつだって“一人じゃなかった”
『悠太ったらまたベッド散らかして……片付けなきゃ駄目よ』
はいからさんのような恰好をした女の子が呆れたように溜息をつく。大昔の女学生のような袴姿にブーツ、髪には大きなリボン、少し垂れた大きな目は俺とよく似ている。彼女の最大の特徴は、地に足がついていないという点だ―――物理的に
『さっきまで練習してて疲れてるんやって…大目に見て』
『もう…テヨンさんに言いつけますよ』
彼女はいろはさんといって、俺のご先祖様だ。直系ではないのだが、家系図を遡るとちょうど大正時代に彼女の名前があるそうだ。もちろん故人だ。つまりここにいる彼女は幽霊ということになり、そこだけ聞くとかなりホラーな絵面になる
『私は悠太を守るために守護霊になったんですよ。子供3人育てるお母様が大変だろうとせめて悠太だけでもしっかり躾けたつもりだったのに、昔から散らかし癖と食事作法だけは治らなくて…』
『俺そんなにひどい…?』
いろはさんは俺が生まれた瞬間からそばにいた。いろんなことを教えてくれて、あらゆる危険から守ってくれた。おかげで家族からは「悠太は妙に敏い」と言われたりもしたし、古めかしい言葉や風習を知っていて不思議がられた。家族にはいろはさんが見えないのだ
『…ふふ』
『…何』
『踊っている悠太はすごくかっこいいよ。私のナンバーワンアイドルだもの。いっぱい練習して疲れたのよね』
彼女は昔から俺のファン第一号を名乗っていて、今でも誰よりも応援してくれている。韓国語の練習にも付き合ってくれたので今では彼女も話せるし、ダンスの自主練をするときだってついてきてくれる。彼女は絶対に俺を一人にはしない。海を隔てた異国に一人渡って来てやって来られたのは、常にご先祖様がいたからだ
『…眠い』
『お風呂はいいの?ご飯は?』
『ちょっと寝てから』
『じゃぁ子守唄を歌ってあげます。何がいい?Whiplash?』
『あの歌で寝られるかい』
冗談だと笑いながら、心地のいい声で歌いだした。彼女の時代の歌らしい。うとうとしていると、ドアがノックされた
TY「ユタ、寝てるの?」
テヨンだ、と思ったとたん体が固まった。返事が遅れ、仕方なく寝たふりを続ける
TY「名前さん、ユタ寝ちゃったの?もーベッド散らかったままだし…」
「ふふふ、そうみたいです。ふふ…」
笑うな!!テヨンが不審がるから笑うな!!っていうか面白がるな!!
ずっといろはさんを認知出来るのは俺だけだったのに、ある時からメンバー達にも見えるようになった。最初は一人で喋っているところを見られて不審がられたし、ホラーが苦手なメンバーがいろはさんを見て騒いだりもした。マークは真っ青になっていたし、ドヨンはめちゃくちゃうるさかった
「テヨンさん、練習お疲れ様です」
TY「ありがと。今日ユタすごく調子よかったんだ。先生にも褒められてて…」
テヨンが俺を褒めるのを聞いて、いろはさんが嬉しそうにしているのがわかる。テヨンに褒められるのはうれしいが、やはり照れる。テヨン、聞こえてるで全部
TY「何か食べた方がいいと思ったんだけど……しょうがないなぁ、もう」
ふわ
「!!」
ふわふわ
テヨンが優しく髪を撫でてくれている。その感覚に全身が心臓になってしまったみたいで、どくどくと脈打つ音が聞こえてしまうんじゃないかと不安になる
TY「朝食べられるように何か用意しておこうかな」
「手伝いましょうか、テヨンさん」
TY「うーん、おにぎりと…せっかくだから日本のお味噌汁作ろうかな。朝食の定番でしょ?教えてくれる?」
「もちろん!!悠太の好きな具、教えてあげます」
TY「じゃぁユタはこのまま寝かせておこう」
最後に頭をぽんぽんとして、テヨンは部屋を出て行った。いろはさんが笑いをこらえながら言う
『ふふふ…朝まで待たなくてもいいのよ。お腹が空いたらいらっしゃい』
『…ッ~~~~~!!』
くすくす笑って彼女は部屋を出て行く。俺はテヨンが気を使って灯りを消して行ってくれた暗い部屋の中、枕をぼふぼふと叩いた。首元まで熱い。部屋が暗くてよかった
俺はテヨンが好きだ。男とか女とか関係なく、ただ好きになってしまった。そのことに気付いた時はパニックになって、同時に悲しくなった。男同士で、同じグループのメンバーだ。敵うはずがなく、胸にしまわなくてはならない想いだから
『私はいつだって悠太の味方よ。悠太がどんな選択をしたとしても、私は悠太を応援するからね』
そう言っていろはさんは俺を励ましてくれた。すごく嬉しかったし心強かったが、彼女の応援の仕方(というか動機)はちょっとずれたところにあった
眠気などとっくに吹き飛んでいたが、しばらく寝ていたふりをしてリビングに行った。味噌汁のいい匂いがしている
DY「あ、シャワーなら今ヨンホ兄が浴びてます」
「ん、じゃぁその後浴びるわ」
テヨンはうちのご先祖に教わりながら味噌汁につきっきりで、テーブルではジェヒョンがおにぎりをもちもちと食べている
JH「ご先祖様監修、テヨン兄作成の“ユタスペシャル”だそうです。美味しいですよ」
「…崩れてるけど」
JH「力入れ過ぎちゃったんだって。ユタ兄にはうまく握れたやつを食べさせてあげたいからって、失敗したのよこされました。何この差別」
HC「あーうまそう!!俺も食べたい!!」
WW「テヨン兄、僕らも食べたいです~」
テヨンが振り返って目が合うと、ちょいちょいと手招きされた
「ん?」
TY「起きたんだね。味見してくれる?ユタ好みっていうの、いろはさんに教わって作ってみたんだけど」
テヨンは昔から結構俺に甘い。面倒見のいいやつなので俺だけじゃなく弟達や、海外から来たメンバーを気にかけてはいるが、こうしてたまに日本食を作ったりしてくれる。たぶんそれは同い年の親友というのがあるのだろう
それが嬉しく誇らしい半面、少し切なく思える。どんなに優しくしてくれても、その理由をテヨンに問うたとして返ってくる答えはただひとつ
―――ユタは俺の親友だから
TY「…まずかった?」
「えっ」
TY「煮詰めすぎたかな。しょっぱい?」
正直味などわからなかったので、もう一口飲んでみる。じんわりと染み入る味は確かに俺好みだ
「うまい」
TY「ほんと?」
「ほんとほんと。めっちゃうまい、さすがうちのご先祖様監修や」
わざとそう言ってやるとテヨンがわかりやすくむくれた顔をする。と、背後から声がかかった
TL「素直じゃない男はモテないぞ」
つるっと味見用の小皿を落とし、テヨンが慌ててキャッチした。ぎぎぎ、と振り返るとテイル兄がしれっと水を飲んでいる
何この人、こわい!!
「……うまいよ、テヨン。腹減って来たからよそってくれへん?」
TY「…ッすぐ出す」
ぱあぁ、とテヨンが顔を明るくする。なんだか負けた気がしてげっそりしていると、頭上からぶつぶつと日本語が降ってきた
『はぁッ……悠太に褒められたくて美味しいお味噌汁を作ってあげるテヨンさんに、素直に褒めてあげられない悠太…褒められただけであんな笑顔になるなんて……ッテユ、至高』
『いろはさん全部口に出てる。本人が聞いてるんやで』
『日本語だからわからないでしょ。これは独り言です』
『俺は当事者ちゃうんかい』
何を隠そう、うちのご先祖様はほんのりと腐っている。俺の恋を全面的に応援してくれてはいるが、応援の仕方も腐っている。俺以外に日本語がそこまでわかるメンバーがいないのをいいことに、ぶつぶつとテユがなんだと呟いている
この仕事をしているとそういう需要はどうしたってついて回るし、シズニーたちが楽しいなら好きに妄想してくれて構わない。だが本人の前で、それも血のつながった子孫で妄想されるのは非常に困る。どう反応すりゃええねん
テヨンの握ったおにぎりを食べながら味噌汁を飲んでいると、ご先祖様が耳元で囁いた
『悠太、早く食べちゃいなさい』
『…何で?』
『テヨンさんを一人働かせておくつもり?メンバー分のおにぎり握るので忙しそうよ』
見ると、お腹が空いたと雛鳥のように鳴くメンバーのためにテヨンがせっせとおにぎりを作っていた。俺は最後のひと口を口に放り込み、味噌汁を流し込んでから台所に行った
TY「あ、足りなかった?もっと食べる?」
「いや、手伝おう思て。おにぎりくらいなら作れるし」
TY「ほんと?助かるよ。それじゃぁ俺卵焼き作ろうかな……この間ご先祖様に教わった味付けで試したいんだ」
「お前…働く“オカン”みたいやね。頭が下がるわ」
TY「オカン…?」
「何でもない」
テヨンはリーダーとしてメンバーを引っ張るだけでなく、楽曲制作などにも取り組んでいてその負担は計り知れない。その上宿舎でも皆の世話を焼き料理をしたりする。ちょっとでも力になれたらと思ったのだが…
MK「……」
「マーク、何不思議そうな顔してんねん」
MK「ユタ兄の作ったおにぎり、大きさバラバラですねー…」
HA「っていうかいびつ」
WW「僕大きいのがいい~」
JH「あー俺もそっちがよかったのに」
DY「お前つい今まで食べてただろ」
いろはさんとテヨンが肩を寄せ合い笑いをこらえている。人がせっかく殊勝になって真面目に握ったのに
「……」
TY「く…や、美味しそうだよユタ……ふはっ」
「むかつく。もうやらん」
TY「そんなこと言うなよ。小さいやつ食べさせて、俺今手が塞がってるから」
テヨンがちゃっちゃと卵焼きを焼きながら、口を開けている。いろはさんが皆の死角になっていると思ってテンションをあげている
―――食わせろと
―――俺が、お前に
TY「ユタ、はやくー」
―――手でか!!?
「悠太、ほら早く食べさせてあげなきゃ。テヨンさんだって練習で疲れてるのに“悠太のために”美味しいご飯作ってくれたのよ?」
「……今日のいろはさん嫌いや」
「まぁひどい。ちゃんと一口サイズにしてあげてね……“手で”」
にやにやしながら、わざと韓国語で言っている。テヨンは律儀に口を開けたまま待っていて……どうにでもなれという気になって俺はおにぎりをつまみ上げた
TY「んむっ!?」
「ふん」
TY「んー!!ん!!」
おにぎりをひとつそのまま押し込んでやったので、テヨンがじたばたしている。卵が焦げるのが気になるのか、ジェヒョンがやって来てフライパンを取り上げる。ちゃっかりテヨンに任せてはいたが、ジェヒョンもジェヒョンで料理上手なのだ
JH「テヨン兄、狭いキッチンでじたばたしないでくださいよ」
TY「んみゅぅ」
なんちゅー声だしてんねん。まぁ俺のせいやけど
テヨンは口いっぱいのおにぎりを何とか咀嚼しながら、抗議の意をこめて無言で俺の肩をぽこぽこ叩いてくる
『んふふ…照れちゃって可愛いんだから~』
『ご先祖様そろそろ俺怒るで』
『何よぅ、食べさせてって言ったのは私じゃなくてテヨンさんですよ』
ころころ笑う憎たらしい先祖を睨んでいると、てきぱきと次の卵焼きを焼いていたジェヒョンが顔を上げた
JH「いろはさんはおにぎりの具、何が好きなんですか」
「んーそうですねぇ……やっぱり定番のシャケかしら。でも梅干しも好きです」
JH「ふぅん……今度作ってください。いろはさんが作ったやつ食べたい」
ジェヒョンの言葉に反応したのはドヨンだった
DY「お前自分で作れるだろ」
JH「日本の味は再現出来ませんし?それに俺はいろはさんが作ったやつを食べたいんです。ねぇいいでしょう?」
ドヨンが不満そうな顔で黙っている。作れるだろ、と言ってしまった手前、同じように料理が出来る自分も食べたいとは言えなくなったらしい
「いいですよ?具はジェヒョン君の好きなお肉を甘辛く煮たのにしましょうか」
そう言って彼女は俺ににっこり微笑みかける
い や な 予 感
「体貸してね、悠太」
「やっぱりか。あれ俺にもいろはさんにも負担かかる言うてたやろー…」
「たまになら大丈夫よ。大事な悠太の体に負担なんてかけるものですか」
MK「ぼ、僕も食べたい…」
マークがおずおずと口を挟んだ。おぉ、お花が飛んでいる。素直だなー可愛いなー
JH「…へぇ、マークも食べたいんだ?」
MK「……ッ」
ジェヒョンがマークを見て黒い笑みを浮かべる。一瞬隣のヘチャンの後ろに隠れかけたマークだが、自らを奮い起こすように前へ出た
MK「僕、手伝います!!いろはさんひとりじゃ大変でしょ?」
「あら、ありがとうマーク君。じゃぁ一緒に皆の分も作ろうか」
DY「いろはさん甘やかしすぎだよ」
不機嫌面のドヨンに言われていろはさんがしょんぼりしてしまった。俺が赤ん坊の頃から面倒を見てくれていたせいか、それとも元々の性格か、彼女は結構面倒見がよく、面倒を見ることを楽しんでいる節もある
「ごめんなさい、楽しくなっちゃって…」
DY「…あ、いや、別に怒ってるわけじゃ…」
ドヨンがしどろもどろになる。NCTのメンバーは基本的にいろはさんの味方なので、誰も助け船を出さない。ドヨンが溜息をついていった
DY「俺も手伝うよ……どうせUやDreamのメンバーも食べたがるだろうから、手伝いがマークだけじゃ心もとない」
MK「…そんなことないよ」
DY「味見以外で自信のある料理スキルを言ってみろ、今、ここで」
マークが撃沈し、ヘチャンが苦笑いで背中をさすっている
いろはさんは今の俺よりも若い時に亡くなっている。俺の守護霊となってからはずっと俺にしか認知されず、俺と2人で生きてきたようなものだ。だからだろうか、俺に関することには敏くテヨンに対する気持ちも理解してくれるのに、彼女は自分自身に向く好意に関してもどかしいほど鈍感だった。というより、天然と言った方が合っている
「中本家のおにぎりを気に入ってもらえてうれしいです!!ねー悠太」
彼女の言葉にマークは項垂れ、ドヨンは頭を抱え、ジェヒョンは死んだような目で卵焼きをひっくり返した。報われない男達だ
「?…どうかしましたか?」
「ええんよ、ご先祖様はそのままで」
JH「よくないんですけど。もうちょっと自覚してくれないと困りますよ」
俺の方のところまで降りて来ていたいろはさんに顔を寄せ、ジェヒョンは微笑む
JH「おにぎりももちろん美味しいですけどね、俺が食べたいのはいろはさんが俺のためだけに作るおにぎりであって痛い痛い痛い痛い痛い」
顔に「?」を浮かべつつも至近距離で綺麗な顔に見つめられていろはさんが顔を赤らめて困っている。彼女の生前と言えば大正時代。「男女七歳にして席を同じうせず」と言われた時代である。若くして嫁入り前に亡くなった彼女は当然家族以外の男に免疫などない。おまけにこの鈍感天然娘(腐女子オプション付き)だ
―――俺が守ったらなあかん!!
JH「え、ちょっと待ってマジ痛い肩もげそう」
「顔近すぎやねんジェヒョナ、これ以上接近したら……わかるな?」
JH「嘘でしょここに来てセコム発動」
「わ・か・る・な?」
JH「わかりましたわかりましたよ何なのこの過激派子孫」
俺がジェヒョンを離してからギッと睨みを利かせると、マークとドヨンがサッと目を逸らせた。すると風呂上がりのヨンホが俺の肩越しに卵焼きをひとつ摘まんで言う
JN「ユタ、顔が怖いぞ。いろはさんが怯えている」
「悠太、どうしたの?そんなメンバーを睨みつけたりして…」
誰のせいや、誰の!!
溜息をつくと、突然口が甘じょっぱい何かで塞がった。唇に指が当たると同時に卵焼きが喉に当たって、ダブルパンチで変な声が出る
「んぐふッ」
TY「さっきの仕返し。甘めの卵焼きが好きだって聞いたんだけど、どう?」
にやにや笑いながら聞いて来るテヨンが、ペロッと指を舐める。味なんてわからない。頭が真っ白だ。それまでの会話の内容が一瞬で頭から吹っ飛んだ
『テユ…ッ』
ご先祖様に反駁する気力もない。うまく噛めなくて苦しいわ、俺に触れたその指を何事もなかったように舐めていたテヨンに口から心臓が出そうだわ、でも卵焼きで口塞がってるわで
TY「…―――えっ」
泣けてきた
TY「ど、どうしよう、ごめんそんなに苦しかった?出しちゃっていいよ」
テヨンが焦ったようにものすごい勢いで俺の背中をさすってくる。熱い。好きな人に触れられてとかじゃなく、物理的に摩擦で熱い。ジェヒョンが呆れたようにコップの水をくれた
JH「何やってんですか、まったくもう」
水を受け取り、何とか咀嚼して飲み込んだところで、いろはさんが小声で言った
『ごめんね?からかい過ぎちゃった…』
『……ええよ、いろはさんのせいやない』
『テヨンさん、料理しながら今日悠太が先生に褒められたこと話してくれた。親友としてもメンバーとしても、すごく誇らしいんだと思う』
ちらっと見ると、テヨンが俺を見ておろおろしていた。元はと言えば動揺した俺がしたことの仕返しでしかないのに、すまなそうな顔だ。俺は水を一気に飲み干して言った
「うまかったよ、卵焼き」
TY「ほんと?もう苦しくない?」
「大丈夫。食べ物で遊ぶなとはよう言うたもんやな、苦しくってしょうがない。反省したわ」
TL「素直でよろしい」
つるっ
TY「おっと。もう、ユタ二度目だよ」
俺が落としたコップをキャッチして、テヨンが呆れたように言った。テイル兄はもぐもぐとおにぎりを食べながら、相変わらずしれっと読めない表情だ
TL「使った食器は洗っておくんだよ。ユタ、お前も風呂入っちゃいなさい」
JN「あー食器くらいは俺が洗うよ。テヨン、ありがとう。ご馳走様」
お腹を満たしたメンバー達がヨンホの言葉で動き出す。俺は急いで台所を出て自室に戻り、ドアを閉めて額をドアに打ち付けた
『ゆ、悠太……おでこ大丈夫?』
『大丈夫…』
大丈夫だが、心理的にヒットポイント的な何かががくんと減った気がする。ものすごく疲れた。主に俺の気持ちなど知る由もないテヨンと、神出鬼没で表情の読めないテイル兄と、
『悠太、テヨンさんにあーんしてもらってドキドキしちゃったのはわかるけど、早くお風呂入ったほうがいいよ』
自分に思いを寄せる男3人衆の気持ちなど一切気付かずに、俺を全面的に応援してくれているこのご先祖様のせいだ
あかん、ドッと疲れが―――
『悠太、ここで寝ちゃ駄目よ。悠太ってば』
目が覚めると既に朝になってしまっていた。時間を見ると宿舎を出るまでだいぶ時間がある。昨夜入りそびれてしまったので、シャワーを浴びることにした
シャワーを浴びながら、起きた瞬間の違和感について考えた。何かおかしい。でも何がおかしいかわからない
JN「あ、ユタ、GoodMorning」
「おはよ。朝から爽やかないい発音。俺にも珈琲淹れて」
ヨンホが俺のコップに珈琲を注ぎながら、思い出したように言った
JN「お前テヨンに甘えすぎだぞ。あいつだって疲れてるんだから」
「昨日のこと?わかってるよ……あんまり無理させないようにする」
JN「そうじゃなくて、お前昨夜は床で寝落ちしてたんだぞ。いろはさんが困り果てて俺を呼びに来たんだ。俺が一番力強そうって理由だったそうなんだけど、テヨンが」
―――俺が運ぶ
JN「姫抱っこで」
バァン!!
JN「うわぁ何やってる!!大丈夫か顔割れてないか?」
「割りたい!!いっそ割って!!」
俺テヨンに何させてんねん!!!
今朝の違和感それか!!ベッドで寝てたからか!!
JN「まぁあいつもそこまでやわじゃないから大丈夫だろうけどさ」
「……謝らんと」
JN「あ、昨日の卵焼きとおにぎりまだ残ってるけど食べるか?」
「この流れで食うと思うか…?」
TL「食べないの?じゃぁ俺がもらおうかな」
再び頭を打ち付けそうになって、ヨンホが慌てて額を押さえた。これではテヨンに対して挙動不審なのがバレバレだ。隠し通さなければならないのに
JN「テイル兄、ユタが変だ」
TL「それじゃないか?その小袋」
JN「え?いや、昨日疲れてるみたいだったから珈琲甘くしてやろうと…」
ヨンホが砂糖の袋を見て言った
JN「あ、ごめんユタ、これシナモンだった」
TL「シナモンって興奮作用があるっていうから、寝起きで摂取しておかしくなったんじゃないか。猫がマタタビ食ったみたいに」
JN「それにしてもユタ早く言えよ。味でわからなかったの?」
俺はふらふらと立ち上がってソファに倒れ込んだ
JN「大丈夫か?具合悪い?」
「いや、眠いだけやから……出る時間なったら起こして…」
寮生活というのは寂しくない分苦労も多い。好きなやつと同居だし、チアの格好してポンポン振りながら応援しそうな勢いの守護霊いるし、その守護霊に振り向いてもらいたくて必死に秋波送る男が3人もいるし
―――いろはさん、俺たまに心折れそうになるよ
それでもなんだかんだめげずにやっていけるのは、子供の頃からご先祖様に褒めてもらいたくて頑張ってきた記憶があるからだろう。ご先祖離れは当分出来そうにない
~その頃のご先祖様~
「ジェヒョン君、起きてくださ~い」
JH「……」←狸寝入り
「もー…昨夜モーニングコールしてほしいっていうから起こしに来たのに」←気付かない
JH「…ん~」
「ジェヒョン君、朝ですよっ」
JH「……おはよう、いろはさん」←寝起きスィートボイス(演出)
「おはようございます。早くしないと洗面所混んじゃいますよ」←効かない
JH「起きてほしかったら~……オッパって呼んでみてください」←めげない
「えっ…」
JH「ほら、オッパ起きて…って」
DY「言・わ・せ・な・い・よ?」←怒
「あ、ドヨンさん、おはようございます」←キラキラ笑顔
DY「…おはよういろはさん」←効いてる
JH「……ち」
DY「おい、舌打ちしたか今。とっとと起きろ」
JH「あーぁ、邪魔入っちゃった」
「ほらほら、早く支度してください」
JH「(キラン)…シャツ着替えたいんだけど、いろはさん見たいの?着替え」
「!!!」
DY「ジェヒョン!!」←怒
バーンッ←ドア(開)
MK「いろはさん!!ウィニ兄とドンヒョクが起きないんです助けて!!」←涙目
「…ッい、今行きます。涙目になるほど起きないの?」
MK「ッ…う、うん、起きる気配ないんです」
DY,JH((こいつ会話聞いてたな…))
朝から恋の矢印は渋滞していた