@hackn_pyar
「敵勢力の沈黙を確認。野兎小隊と銀狐小隊は周囲に残存勢力が隠れていないかの確認を。火鼠小隊は予定通り、倉庫に向かい運び込まれた物資の確認をお願いします」
口元の通信機に向けて厳かに言い放つと、少女は胸に手を据えて一息吐く。
斧を纏う紫電を保ったまま静かに周囲を睥睨し、改めてこの地帯に蔓延っていた魔獣が全滅した事を目と耳と魔力とでしっかり確かめると、
「……もうこの一帯は心配いらないですね。みなさんお疲れ様でした」
鋭い瞳を和らげ、自身に付き従う隊員たちへ向け柔和に微笑んだ。
「ああ、お疲れ。数が多いのは面食らったが練度は思ったほどじゃあなかったな」
「その代わり人は一人もいませんでしたから……カモフラージュ、あるいは囮だったのかも。それともすでに放逐された区域か……」
顎に指を当てて考え込む少女の背中を、彼女よりいくらか年上であろう金髪の女性が勢いよくばしんと叩く。
「わわ!? きょ、キョーコさん!?」
「ヘイ神楽! 戦勝なんだからもっと景気良く喜びなさい! 隊長代理、お見事な手腕だったわ!」
よろめきながら目を白黒する少女に、キョーコと呼ばれた隊員はからっとした笑顔でサムズアップを見せる。
「まぁ最初は不安だったけど思ってたよりは悪くなかったんじゃない?」
「そうだな。昇進も案外遠い話じゃないんじゃあないか?」
他の隊員たちも口々に、隊長の不在を任された彼女の実力を称賛した。一方本人はといえば少し恥ずかしげにしながらも、遠慮がちに苦笑をしてみせる。
「私は……まだまだだよ。今回の作戦も基本戦法は隊長が立てたものだし、状況もあまり手を焼く程の事じゃなかったから」
「謙遜はノーサンキューよ。結果があなたの戦果を物語ってるわ!」
「それに、新人の面倒だってしっかり見ていたじゃあないか」
「あ……」
背後に控えていた新入隊員の、輝くような視線が自分に注がれるのを少女は感じていた。嬉しいような、くすぐったいような、もどかしいような、色々な感情がないまぜになった感覚を覚える。
「……そうですね。成功したのに私ったら」
気恥ずかしそうに頭をかくと、隊員たちはそんな少女を見て笑い合うのだった。
「それじゃあ今日は祝勝会よね? 私やっぱりケーキビュッ……」
「え、ここはやっぱり焼き鳥じゃない? いい居酒屋を知ってるのよ!」
「馬鹿、魔法使いといえ副隊長は14だぞ……」
そのうち新入隊員まで混じり、口々に食事のことで言い合いになる隊員たち。
眼の前の光景が、作戦中に感じていた不安をすっかり溶かしていく。
(私は……まだうまくやれているのかわからないけれど。それでも昇進なんて出来なくてもいい。みんながこうしていられる風景を、これからも守っていけたら……)
「神楽ー、ボーッとしてないであんたも意見出しなさいよ!」
「このままだと副隊長のオゴリになりそうだぞ」
「えっ!? ちょ、ちょっとまって、今行きますっ!?」