@koma_jinro
早朝
常夏サンシャインポートの朝は早い。日も昇る前からフェリーの到着に向けて様々な人が動き出す。
私も負けてはいられぬ、と。船と降りてくる人々が良く見える位置に陣取り、イーゼルを組み立てて、朝の港の様子を書きはじめる。
朝
フェリーが撞着し、大勢の人や、物量の車が港に溢れ、港の人もまた賑やかにそれを歓待する。
『キャンサー』は毎便の度に賑やかで、未だにその喧騒になれることはないけれど。
同時に祭りのような高揚感もまた、慣れることもなく味わえて、私はこの喧騒がとても好きだ。
賑やかな人の歩み、熱気と熱気が入り混じるこの瞬間を切り取ろうと、握る絵筆にも力が入ろうというものだ。
昼
午前中の定期便が一通り港に着くと、折り返しの為の荷物の積み込みが始まる。
この島に来訪した人は港を離れ、黙々と作業をこなす港の人たちの規則的な動きだけがそこにある。
朝の無秩序な、しかし熱気にあふれた港とは違う、整然と整った、それでいて次の祭りへの準備と期待に溢れた空気を味わう。
イーゼルの周りにしいたシートの上に胡坐をかいて座り込み、持ち込んだお弁当を広げる。
午前の熱気を書き写したキャンパスにさて、どう色を付けて行ったものかと思案をしながら、おかずを摘まみ、を頬張る。隊長のご飯は美味しい。
午後
『似顔絵、書きます』の看板をイーゼルに書けて、スケッチブックを開く。
午後の定期便に合わせ、島の外へ出ていく人たちの顔を流し見しながらお客を待つ。
島から外へ帰るひとは祭に後ろ髪を引かれ、どこか寂し気に、仕事で行き来する人は暫しの休息にうれし気に。
そんな人の顔色を写し、記録していく。
夕方
「センパイ、売れてねえなぁ。どら一枚、美丈夫に書いてけろ」
そんなことを言いながら隊の後輩が前に座る。
「売るためにやってないからいいんだよ~、まあ、折角だからとっときの客寄せ看板でも書こうかなぁ。」
軽口を返して似顔絵を描きつつ、情報を交換する。
やれ仕事はどうだの、今日島でどんな事件があっただの、新人の鍛錬はどうだの、明日の行事はどうだの。
そんなくだらない話をしばしすると、後輩は料金としてくしゃくしゃの紙幣を手渡し、去っていった。
やっと一人できた似顔絵を飾り、くしゃくしゃの紙幣を広げてため息をつく。仕事は終わらないようだ。
『白虎隊:流出入人口把握任務交代時間を21:00時とす。
混沌隊:21;30、ポイントXに招集、内容は追って』
そんなことが書かれた紙幣をポケットに突っ込みながら、ともり始めた港の灯りを眺める、これからがいい景色なのだけど。
「ま、この景色を守るために頑張ってると思えば。やる気も沸くってものだよねぇ~。」
そう言って灯りに背を向け、夜の闇へ踏み出した。