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ある隊員の独り言

全体公開 1079文字
2018-06-26 22:35:36
Posted by @koma_jinro

今日の任務はとても面倒だった。
慣れない面子との共同任務だけでも気が滅入るっていうのに、内容がまたひどい。
本土のお偉いさんのご子息の観光旅行の護衛ときたもんだ。
父親は視察と会議、その間父親と遊べなくてゴフマンの子供のお守り、最初任務を聞いたときは仮病でも使おうかと思ったもんだ。
・・・まあ実際仮病を申告しようとしたら副隊長が血吐いて先にぶっ倒れてうやむやになっちまったが。

実際の任務についちゃ、実の所そこまで問題はなかったんだ。
護衛対象の子供も、割合明るい子で、安藤って朱雀隊の新人いつも学ラン来てて熱くないのかね、あれ。
夏でも学ランなあいつが物珍しかったのか、足元に纏わりついたり、肩に上らせてもらったりと、仲良くしてたさ。
安藤の方は、どう扱ったもんかぎこちなかったけどな。新人ってのはそういうもんだろ?


で、まあ暫く観光してたんだけど事件が起こった。
どっからはぐれた魔獣が、いきなり襲い掛かってきたのさ。
ヴァルゴが近かったしそこから湧いてきたのか・・・そう見せかけた事故なのか、ともかくそいつは、俺たちを跳ね飛ばそうと向かってきた。
俺たちも何とか防ごうとはしたんだが、あまりの勢いに間に合わなくてな、ああ、こりゃ不味ったかな、と思ったわけだ。

だが、怯えて立ちすくむ護衛対象のそばには安藤がいた。
あいつは、対象の前に立って、仁王立ちで衝突を受け止めた・・・次の瞬間にはすべてが終わってたよ。


・・・なんだろうな、あれは。
紅い鱗に、緑の傷跡。魔獣を身体で受け止め、カウンターで黒い爪を頭にぶち込んで脳を抉るあれは
学ランで、視線が良く見えない長髪の、すっとぼけた、子供に絡まれて困ってた”安藤”じゃなかった。
化物じみたアイツは、何事もなかったように対象の方を振り返って
「やぁ、怪我はなかったですか?」なんて、血まみれの手を翳して言うもんだからな。

当然、対象は泣くよ、俺だって泣く。

魔獣の襲撃があった以上、緊急事態だ。俺たちは増援を呼んで、対象を引き継いだ。
後はまあ、他の隊の仕事だ。俺の知ったことじゃない。

ただ、安藤は、対象が引き継がれるまでずっと、あの化物みたいな姿で立ち尽くしてた。
対象が車に入れられて、見えなくなってからようやく変身を解いて、へらりとした顔で。
「やぁ、怪我がなくて何よりでしたね」
何て、呟くもんだから。

こいつが何を考えてやがるのか、そんなことを考えるのも面倒になって、頭を一発小突いて帰ったのさ。
全く、あんなのを入れるなんて何を考えてやがるのか
面倒だ、全く。


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