「全て君が教えてくれたことだ。教師である私に、君が教えてくれたことだ」
アンコールの幕間に、Pさんを抱きしめながら硲先生がそっと未来を誓うお話です。
@toasdm
硲道夫、元数学教師だ。私は君に、そう言ったはずだ。忘れてなどいない、私は、アイドルの前は数学教師をしていたのだから。教育とはなにか、先生とはなにか、教師とは。その理想を追い求めてたどり着いたアイドルという現在に、私は満足している。同時に、かつて教師であった自分を忘れたこともない。ただの一度たりとも。仲間と共に、君と共に、歩んできた今までを振り返っても、そこには常に、教師である自分が重なっている。私は教師であり、アイドルだ。教え導き、与え励まし、そうして生きてきた、これまでの人生を。
「み、ちお、さん……?」
君と共に、歩んできたこの道を、こんなにも温かい気持ちで振り返ることができるのは、ひとえに君が、教師である私に教えてくれたおかげだ。
歌声に感情を乗せて届けたいと思うことは素晴らしいことだと。
無限に広がる可能性の中から選択することは楽しいことだと。
誰かの未来と私の未来が重なって、響きあって、大きなうねりとなって全てを飲み込んで、巻き込んで作り上げたステージの熱狂は、興奮と感動で感情がどうにかなってしまうということを。
「全て君が教えてくれたことだ。教師である私に、君が教えてくれたことだ」
君の手を取っただけでは、物足りない。
君を抱きしめて、唇を重ねただけでは伝えきれない。
そんな熱量が私の中にあって、君はそれを必ず、裏切らずに受け止めてくれる。そう信じさせてくれる、そんな君こそが、私の生涯を支えてくれると、思わせてくれるのだ。
バックステージで感涙に瞳を潤ませた君が、君こそが。
「君が、私の教師となって、教え導いてくれたから、今がある。だから――…」
私は誓う。このステージに、熱狂に。口には出さずに心の中で、私は私に決意表明をする。君から貰った沢山の教えを、私は生涯をかけて君に返していこう。強く一度頷いて、わけもわからず抱きしめられるだけの君の耳に、私はその誓いをそっと囁く。
「これからも、よろしく頼む」
今は、ただその一言だけを頼りに。どうか、私についてきてほしい。私も君についていこう。アンコールの歓声、鳴り止まない拍手。最後にもう一度、熱を帯びた唇をあわせて強く抱きしめて、私はステージへと舞い戻る。振り返らずともわかる、君は。
君は、いつだって私を、教え導いてくれているのだから。