FGO人斬り以蔵
@syuu_29
月夜の明かりは淡いのに、それでも不思議とそれははっきりと目に飛び込んできた。ぎらりと細く光ったのは抜き身の刀だった。 ずるりと崩れる人影に雫を払う剣先は、血脂に汚れてさえ磨き研がれたうつくしさが残っていた。
血だまりを広げる足元の誰かを、彼はもう一瞥さえしない。
その人影は三度笠を目深にかぶっていたが、しかし映したものを刺すような鋭い視線が、その編み目を透かしこちらを観ている。
納める鞘のない一振りを左手に、そして右手を腰に下げたもう一振りへ置いて、口元にゆがんだ笑みさえ消して。しかし彼は刀を抜くでもなく、じっとこちらを見つめるだけだ。
長着の袖よりひどく裾の摺り切れた袴にはまだらに暗く血が染み込みざらつき、羽織ったぼろ布は薄汚れていまにも散り散りになりそうで、存在感とは裏腹に、まるで幻影のようにも見えた。ざんばらに伸びた髪が結われながら炎のように輪郭を滲ませているせいだろうか。
言葉もなく、血染めの手も剣も拭わず構わず、ただ眼前しか見えないさまは、まるきり人を捨てたあやかしだった。街灯もない夜道へ似合いの人斬りだ。
きっと生涯より今の方が多くを斬り捨てたことになったのだろう。その座に帰るたび、あの幕末のみならず、その輪廻を巡り続けてきたのだと、それを観れば否応なくわかってしまう。わかってしまった。だからこんな夢を見る。
「――そがぁになるよう喚ばれたか」
夢だというのに、ようやく出た言葉はそれだけで、名前さえ呼べやしない。
そして夢であるから答えは返らず、斬り合うことも起こらない。お竜さんさえ茶化しもしない。
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はいじさんへ
まるでめでたくない内容をお祝いに渡す非礼を許して